「採用学」から見た企業と就活生の理想の関係。構造を理解して納得感のある就職活動をしよう。/服部泰宏さんインタビュー

執筆者: 宮原七奈子
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「採用学」から見た企業と就活生の理想の関係。構造を理解して納得感のある就職活動をしよう。/服部泰宏さんインタビュー

執筆者: 宮原七奈子

みなさんは、就職活動に納得感はありますか?

私、宮原七奈子はThinkAbout編集部でインターンをしている、大学4年生です。

私は大学3年生から4年生にかけて就職活動をする中で、特に面接というプロセスに大きな違和感を持ち、今までずっとモヤモヤしていました。

あの短時間の面接で、私の何が評価されているのだろうか。結局は面接官の主観で判断されているのではないか。内定をとることが目的化し表層的な受け答えをする学生もいる中で、正確に面接ができているのだろうか。

それをある社会人の先輩に相談させていただいたところ、「選考を通過させるのに確からしい理由など存在しない、そこに納得感を求める方がおかしい。」と言われました。

   この時私は「企業側にとって、面接は果たしてどこまで学生のことを理解するのに有益なのだろうか。企業側にとっても、学生側にとっても理想的な採用活動とは何か。」という疑問を持つようになり、それを解消するべく、「採用学」を研究する服部さんにお話を伺いました。

 

企業にとってあるべき採用活動って?

就活生が持つべき視点とは?

企業と就活生の理想の関係は?

 

就職活動中の学生だけでなく、すでに社会に出た社会人や企業の人事の方も、今一度考える思考のタネになればと思っています。

 

hattori_pic1_re服部泰宏

1980年神奈川県生まれ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。採用学の他、日本企業における組織と個人の関わり合い(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事する。主な著書に『日本企業の心理的契約:組織と従業員に見えざる約束』『採用学』がある。

面接が持つ3つの意味

私が違和感を持ったのは、主に面接に対してです。合否にかかわらず、面接での評価に納得感を持てなかったんです。面接は会社と就活生が相互理解する場だと思いますが、納得感がないまま終わる面接って意味があるのでしょうか。また、面接官が一方的に学生を評価する場になっていること、面接官の主観によって結果が左右されることにも違和感があります。

そもそも、企業が面接を行う意味や、服部さんが考える、あるべき面接の姿をお伺いさせてください。



面接には3つの目的があると考えています。1つ目は「評価すること」です。求職者が会社の必要とする能力を持っているか見極めています。2つ目は「知ること」です。求職者がどんな人間なのかを理解しようとしています。3つ目が「好きになってもらうこと」です。企業アピールの場として、学生に好きになってもらうことを目的としています。

3つのどれを重視しているかは企業次第だと思いますが、一般的にアメリカ企業は評価の比重が大きいように思います。人材要件やポジションが決まっていて、それに必要な能力が備わっているかを測ります。必要な能力が具体的であれば、面接の質問も具体的になるので、求職者は何を測られているか理解しやすくなり、合否に納得感を持ちやすいのではないでしょうか。日本の会社でも、ベンチャー企業などは即戦力を求めているので、アメリカ型に近くなる傾向にあります。

一方で、日本の大企業は人材要件が曖昧なことが多いため、2つ目や3つ目の比重が大きくなります。すると、面接を受ける側は何を評価されたのか分かりづらくて、納得感を持ちづらいのではないかと思います。

個人的には、企業側が求める人材要件を具体化したほうがいいというスタンスですが、日本企業が悪いとは思っていません。日本の大企業では、求職者が就職した後にどこの部署に配属されるか決まっていないことがほとんどですし、配属後も同じ仕事を続けるわけではありません。特定の仕事に特化した能力ではなく、長期的・安定的に力を発揮することを求めています。そういった能力は、目には見えづらいので、具体的な採用要件を決めづらいという事実もあります。

企業の構造を理解した上で、学生は自分のキャリアプランにあった就職活動をできるといいですね。入社してすぐに現場に出て、会社や社会に貢献するような働き方をしたいのか。それとも、どういう仕事をするかわからないけど、企業の中で既存の考えや戦略を学んだ上で活躍できるようになりたいか、ということです。

それは良い悪いではなく、個人の好みや特性の問題だと思います。大企業に入る場合、入社して6,7年の下積みを我慢できるかどうかは大事です。逆に、ベンチャー企業などは、丁寧な研修がない大変さがあります。その構造を理解した上で、自分の特徴や、向き不向きを認識しておく必要があると思います。

また、企業の成長フェーズによっても求められる人材像は変わります。自分が歩みたいキャリアと、その環境を提供してくれる会社の見極めが重要です。

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面接の前に考えるべきは選考プロセス

自分の特徴と会社が求めていること、どちらも考えるということですね。ただ、新卒って社会で役立つ具体的な力がほとんどないと思うんです。学生と社会人の間には雲泥の差があって、インターンなどを通じて初めてそれに気づくというか。何もない状態だと、就職活動で見せられるのって、結局はパーソナリティや長期的な能力だけになってしまうような気がします。採用だけではない、社会の構造的な問題もあるように感じます。


その通りで、日本では学生時代に社会に出て使う力を学ぶ機会がほとんどありません。だから、結果として長期的な能力で採用するしかない。最近はメガベンチャーのように短期的な能力と長期的な能力どちらも考慮するような会社も出てきて、インターンシップにも力を入れていますよね。時代の流れに伴い、会社体験できる場は少しずつ増えているようには感じます。

インターンシップは、仕事のサンプルを経験してもらえるので、対象者の能力を見極めるのにとても優れた採用方法でもあります。とはいえ、インターンシップで測れるものは、短期的な能力の場合が多いんです。さらに、長期的な能力を面接で測れるかと言えばそうでもありません。ペーパーテストの方が、信頼のおける結果が出ると言われています。

例えば、外向的がどうかを測ろうとしても、面接の場では大抵の人は外向的に振る舞いまって本当のことは分かりません。逆に、いくら社交性が高くてもお葬式では喋りませんよね。具体的な状況によって人間は変わるので、瞬間を切り取っただけでは事実は分かりません。面接で長期的な力が測れているか疑わしいことも、面接の納得感を削いでいる原因の一つかもしれません。

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さらに、面接に入る主観は、判断の妨げになります。例えば、男性面接官の場合、能力が高い同性の求職者が来た場合は厳しい評価をして、異性だと甘く評価すること研究で分かっています。そこで、複数名で面接をして、できるだけ客観的な判断ができるようにします。

いずれにせよ、面接は完璧ではありませんし、採用ツールのひとつでしかありません。まずは、採用したい人物像や必要な能力を定義して、その能力を測るための選考方法を考える必要があります。

それをせずに、選考プロセスだけが先に決まってしまっている場合も多くあります。「今年はこんな人を採りましょう」という話をして、次には「じゃあ面接では何を聞こう」と話している会社も多いのですが、面接ではない方法が適している場合もあります。面接ありきで採用活動が進むことも、課題の一つだと思います。


採用プロセスや求めている能力の関係上、納得感を持てない人が一定割合出るのは仕方がなような気がしてきました。かといって、何の改善も努力もしないのもおかしいですよね。企業にとっても、学生が納得感を持った状態で入社してもらうことはとても大切なことですし、企業ができることはないのでしょうか。

 

自社で活躍する人が「共通して持つ能力」を定義できるといいかもしれません。新潟にある数百名規模のおせんべい屋さんでは、過去の営業職の成果と能力を調べたところ、地頭よりも「おせんべいをきちんと理解して語れる能力」が重要だとわかりました。それで、選考プロセスの中に、「おせんべいの付加価値を上げる方法をプレゼンする時間」を作りました。

極端な例かもしれませんが、その方法なら自分を偽ることは難しく、求職者の素の力を見れます。どういう能力を求めているかを明示しておけば、合否に納得感があるのではないでしょうか。

企業と個人の理想の関係性を見つけたい

お話を聞いていて、私は主体的に動きたいとか、会社で夢を実現したいというキャリア観を持っているので、言われたことをやるだけの環境には惹かれませんでしたし、長期的な能力を評価する面接で納得感がなかったのかもしれません。学生によってはキャリア観も違うので、一概におかしいとは言えないように思えてきました。

少し話は変わりますが、服部さんはなぜ「採用学」を研究しているのでしょうか。

 

もともと、「人と組織の関係性」に興味があります。組織という強い存在に対して、人はどんな関係性を築くと幸せになれるのか。それがテーマなんです。

関心を持ち始めた原体験は幼少期にあります。ある時、公務員の父に、職場にどれくらいの人がいるのか訪ねると、「正確な数は分からないけど、何十万人かいる」と返ってきました。その時、子どもながらに「怖い」と思ったんです。あまりにも大きい組織の一部でいたときに、人は幸せなんだろうかと。

その時から人と組織の関係に興味を持ち、大学院では人と組織の「心理的契約」について研究しました。大企業であっても、何を求めているかを明示せず「雇われている以上は何でもやってもらう」というのはアンフェア。お互いが期待していることを明示して、それに応じた関係性を結んでいく、という考えです。

その後、人と組織関係がスタートする採用に興味を持ち、採用学を専門としました。ちょうど、社会に直接的にいかせる研究をしたいと思うようになっていたことも影響しています。採用というテーマは、企業と個人の双方にとって重要なものですが、研究としてはあまり進んでいない分野だだたので、この領域の研究が進めば、社会的な価値は大きいと思ったんです。

 

そもそも、人と組織・会社の関係性を研究していたのですね。適切な関係性を結ぶためには、企業側・個人側どちらも歩み寄る必要があると思いますが、個人ができることはあるのでしょうか。

 

日本ではあまりないことですが、個人が組織に対して期待や要望を伝えることが大切です。例えば、アメリカだと、従業員が給料交渉をしっかりとやります。個人の意思を会社に伝える場はとても大切だと思います。

ただ、そうやって個人のスタンスを変えるアプローチもあるかもしれませんが、私はあくまで企業側の問題を扱おうと考えています。

というのも、物事や社会が変わっていくときは「出口」から順番に変わっていくものだと思うんですよね。個人を変えるために教育を変えるアプローチもありますが、教育の現場を変えるのはとても難しい。ただし、大学にとっての「出口」である企業側からの要求があれば、教育も変わらざるを得ないもの。企業は合理的なので、変化すればいい人材をとれるとわかれば、比較的すぐに変われます。

大学偏差値と面接でのコミュニケーション能力だけで判断される新卒採用の現状を変えるためには、学生や大学側にアプローチするよりも、企業を動かすほうが早い。企業が動けば、大学もインターンシップに生徒を送るための仕組みを作ったり、ベンチャー企業にも目を向けるようになるかもしれない。そう考えて、「就職学」ではなく「採用学」にフォーカスしています。
とはいえ、学生には企業の事情や構造は分かった上で就職活動をしてほしいです。やはり、どこの会社でも面接はありますし、面接官の主観で不採用になることもあります。ただ、それは主観でしかないので、あまり落ち込まないでほしい。自分がダメでなわけではないということを伝えたいです。hattori_pic4_re

インタビューを終えて

色々とお話を聞いたことで、企業側が悪いから、学生側が悪いから、ということではなく構造上面接はモヤモヤしやすいことが理解できました。また逆にその企業自体にモヤモヤすることは、ただ企業が求めてる人材と自分の特徴の不一致というだけなので、ポジティブなものなのだということも理解でき、とても大きな学びでした。

なので、これから就活をする人、またまだ就活をしている人は、そのポジティブなモヤモヤを感じるということを、一定自分と向き合って自分がどういう人間かを理解できている、と前向きに捉え、たとえある企業でモヤモヤを感じて焦ったとしても、絶対にマッチする企業が現れると信じて頑張ってほしいです。

また企業の採用担当者の方々も、面接はお互いのマッチングの場であるという前提の元、学生と対等なコミュニケーションを取るような採用の仕方を行っていけば、自社に合わない人間を採用するという互いにとって不幸な出来事を起こさずに済むはずです。

入社する社員がハッピーに働けるように、その社員が出す成果によって企業が利益を享受できるように、そしてその利益が社会に還元されるように、採用活動を見直す余地はあると思います。採用活動を他人事として捉えるのではなく、自分の今置かれている状況下において何ができるのかをこの記事を通して考えていただけたら幸いです。

服部さん、色々お話お聞かせいただいてありがとうございました!!

執筆者:宮原七奈子
マーケティンググループ所属のインターン生

大学時代に情熱を注いでいたゼミ、授業、サークル全てが終わり、情熱を捧ぐにふさわしい新たな活動を探していた時にネットプロテクションズのインターンに出会う。働くうちに、日々の業務を通じて自己実現をしながら、会社に利益を生み出し働く社員の姿に触れ、価値観が劇的に変わる。「人々が幸せに働ける組織とは?」の解を生涯かけて追及すべく、現在業務をしつつ、思考を深め中。
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