スターウォーズから学ぶ「これからの時代に求められるいい会社づくり」とは_企業がダークサイドに落ちないためにできること

執筆者: 中原雄一
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スターウォーズから学ぶ「これからの時代に求められるいい会社づくり」とは_企業がダークサイドに落ちないためにできること

執筆者: 中原雄一

※本記事は映画『スターウォーズ』シリーズの内容のネタバレが含まれています。映画を見ていない方は注意してご覧ください

世界的に大ヒットしている映画『スターウォーズ』シリーズ。SF映画としてCG演出だけでなく、ストーリー展開においても高く評価され、熱狂的なファンが世界中に存在しています。
そんな『スターウォーズ』ですが、実は会社経営でも学べるものが多くあると考えています。

名古屋商科大学でMBAプログラムを教える栗本博行教授も、スターウォーズを切り口に経営のエッセンスを語っています。

今回、ネットプロテクションズ社内で随一のスターウォーズフリークの中原が、そんな栗本教授のもとにお話を伺いにいきました。

栗本 博行 名古屋商科大学教授(経営学部長) 神戸大学経営学部卒業後、大阪大学経済学研究科にて修士(経済学)および博士(経済学)を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし、製品アーキテクチャおよび製品ライフサイクルを中心概念とした規格競争分析に関する論文を多領域に亘って執筆。近年は事業継承、長寿企業に関する研究に取り組む。現在、ビジネススクールではMBAプログラムの立ち上げからカリキュラム運営まで幅広く携わる。
栗本 博行
名古屋商科大学教授(経営学部長)
神戸大学経営学部卒業後、大阪大学経済学研究科にて修士(経済学)および博士(経済学)を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし、製品アーキテクチャおよび製品ライフサイクルを中心概念とした規格競争分析に関する論文を多領域に亘って執筆。近年は事業継承、長寿企業に関する研究に取り組む。現在、ビジネススクールではMBAプログラムの立ち上げからカリキュラム運営まで幅広く携わる。

ジェダイはホラクラシー、シスはヒエラルキー?

栗本教授
ジェダイとシス(帝国軍)は正反対の組織だと思います。シスは、明らかに恐怖によってマネジメントしていますが、一方でジェダイは何によって組織を統率していると思いますか?

NP中原
個人的には、そもそもマネジメントをしていないと感じています。それが、構造的な欠陥を生み、組織運営における問題になっているのかと。

栗本教授
たしかに、「あの人を尊敬しているから言うことを聞こう」みたいなスタイルで、そもそもマネジメントしているかは疑問ですよね。ヨーダがジェダイの最高評議会の議長っぽいことをやっていますが、絶対的な決定権はなさそうです。いわゆるフラットな組織ですね。

NP中原
ジェダイは、自然な状態でも個々人に任せていればうまくやれるという思い込みがありそうですよね。個人的には、フラットであればあるほど、マネジメントの工夫が大切になると思います。

栗本教授
中原さんの言う通りで、シスのように垂直統合的なヒエラルキー組織は、序列や指示系統が明確でマネジメントしやすい一方で、ジェダイのようにフラットな組織では、誰の意志を尊重したら良いかわからず、まとめるのは難しくなります。
現実社会で見ると、以前はほとんどの企業がシス型のヒエラルキー組織でしたが、最近はホラクラシーとよばれる水平的で非中央集権型の組織が増えてきました。どちらかが良いという話ではありませんが、これからの時代、ジェダイスタイルの水平的な組織構造も参考にしないといけないと思います。
特に、社会が大きく変化したり、不確実性が高い環境においては、水平的で構造化されていない組織が強いとされています。一方で、不確実性が低く組織の目標が明確な場合は、中央集権的なヒエラルキー型の方が動きやすい。本来、環境に合わせて使い分けるのが組織戦略ですが、ジェダイもシスも自分たちのやり方にこだわり過ぎてうまくいっていない印象です。

NP中原
弊社はフラットな組織形態にこだわって経営していて、文化の浸透や判断基準のすり合わせに力を入れています。それがしっかりできないと、組織が崩壊してしまいます。

栗本教授
お互いの価値観を共有することが最も大切ですよね。そもそも、フラットな組織にする目的は、ひとつの価値観で統合しようとするヒエラルキー組織とは違って、多様性を担保すること。生まれた環境、宗教、食べてきたもの、スポーツ、趣味など、いろんなカタチで違った人が一緒に働くことで、イノベーションの創出を期待しているわけです。
多様性を担保するという意味においては、ジェダイは中途採用・育成の仕組みをもっと強化した方がいいと思います。ジェダイは通常は生後6ヶ月以内から育てられることが条件となりますが、これはいわば新卒採用です。
たしかに、幼少期から純粋培養すれば、ジェダイとしての価値観を共有できるかもしれません。しかし、途中で見つかったジェダイ候補、アナキンスカイウォーカーやカイロレンのような人材に対する育成方針は、定められていないようです。その結果、ふたりともダークサイドに落ちて(ヘッドハンティングされて)しまいました。
組織の多様性を担保するためには、他の組織でいろいろな経験をした人が入ってくることも必要です。ジェダイが多様な組織を目指すのであれば、中途採用・育成の仕組みを作ることが大切だと思います。

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組織の繁栄に大切なことは、異なるリーダーシップスタイルを認めること

栗本教授
組織として継続的に後継者を育成していく「事業継承」の観点でも、ジェダイには問題があると思います。明確な序列がないから、次に誰がトップになるのかも不明確で、後継者争いなどの問題も生じてしまいます。シスのように早い時期に後継者が決まっているスタイルは、時間をかけて育成するという意味において優れていると思います。

ただ、どちらも師弟関係によってリーダーシップスタイルが引き継がれていますが、それは一番失敗するタイプの事業承継です。社長は自分のリーダーシップスタイルに近い人を後継者に選びたがります。しかし、それが後継者を悩ませる一番のポイントで、前任と自分の違う部分を認められていないことに対してフラストレーションを感じてしまうんです。
アナキンが分かりやすい例ですよね。特に、親子のように距離が近くなるほど、リーダーシップの違いを認めてもらえないストレスが爆発しやすくなります。

親子といっても、生きる時代は30年は違うわけです。この30年見ても、昔はITなんてありませんでしたが、今の世代はITが当たり前ですし、次の世代は生まれたときからITに触れています。それぞれの時代で価値観は全く違うので、リーダーシップスタイルも徐々に変わる必要があるのは明らかです。経営学でも、事業継承においてリーダーシップスタイルの違いを認めることが重要だと言われています。

また、リーダーシップスタイルには大きく分けて指導型、説得型、参加型、委任型がありますが、接する相手によってスタイルは変えるべきです。例えば、業務に対する熟練度が低ければ指導型で接しますが、熟練度が上がれば委任型のケースが増えてきます。つまり「自分は任せるタイプの人間だ」という話ではなく、相手によってリーダーシップスタイルを使い分けなければいけないのです。
相手によっての使い分けも、スタイルの違いを認める素養も、ジェダイには欠けていると感じますよね。

NP中原
そう思います。スターウォーズでは親子の葛藤のようなものが描かれていますが、個人的には上に立つ人のマネジメントの未熟さによって互いが異なるスタイルを認められない結果、大変なことになる物語がずっと描かれていると考えています。

栗本教授
そうそう。相手の状況や立場にかかわらず、自分の経験値が高まるほど「こういうときはこうするもんだ病」みたいなものが蔓延していますよね。

NP中原
後継者の話で言えば、長寿企業で有名なGEの社長の最大の任務は、前任の社長の仕事を捨てさせることだと聞きました。その例が示すように、リーダーシップスタイルを変えることを前提にしないと企業は続かないんですね。

栗本教授
そうですね。ただ、「不易流行」という言葉があるように、さじ加減が重要だと思います。代が変わったからといって全てを変えてもダメですし、ずっと同じままでも時代についていけなくなるので、バランス感覚は持つべきです。

事業承継の観点で言えば、スターウォーズの次作はどんな物語になるのか、とても楽しみです。エピソード8でルークが亡くなり、レイの両親はジェダイとは全く関係ないと分かったということは、スカイウォーカー家の物語が終わり、名も無きジェダイの物語が始まるということです。つまり、企業で言えば、ファミリー企業を創業家以外の出身者が継ぐということなんです。家族内での事業承継は比較的容易ですが、ファミリー企業を家族でない人が継ぐというのは、経営学でも体系化できていない領域。レイがどうマネジメントするか、個人的には楽しみです。

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ダークサイドに落ちないために重要な対話

栗本教授
スターウォーズを見ていると、人間の心には良い面だけでなく悪い裏の面が存在することを痛感します。経営をする上でも、ダークサイドに落ちないことは大切ですよね。

NP中原
会社においてダークサイドに落ちるとは、どう解釈していますか?私の中では、「ダークサイド=利益至上主義に陥ってしまうこと」だと考えています。利益だけを追いかけるのであれば、指示系統も評価基準も一本化できて管理しやすくなります。しかし、本来、企業活動にはいろんな指標があるべきで、その難しさから目を背けて利益追求だけに走ることが、企業活動におけるダークサイドではないかと思います。

栗本教授
その通りですね。例えば、タックスヘイブン(租税回避)のように、株主価値を最大化するためなら、法に触れない限りなんでもしていいみたいになるのは良くないと思います。一方で、「地域社会の方々に喜んでいただければ儲けは一切いらないんです」みたいな雰囲気も、ちょっと行き過ぎた感じがします。

それに、意外と思われるかもしれませんが、ジェダイのように多様性を受け入れる組織ほど、数字・KPIが重要になります。事実、MBAのグローバルマネジメントの授業でも、最後は管理会計を学びます。多様な人が共通の目標に向かうためには、世代や時代を超えても同じ意味を持ち、誰にでも分かりやすい数字に落とし込む必要があるのです。

NP中原
KPIという約束事があるかぎりにおいて、多様性を認めるということですね。ただ、あくまで目標数値は決めるけど、そこにいくまでの道順、リーダーシップスタイルは多様であっていいという考え方でもありますよね。

栗本教授
そういうことです。ジェダイはフラットな組織のわりに、KPIがなかったことが課題だったように思います。シスは「いつまでにデススターを完成させろ」など、数値目標がはっきりしていたので、組織として動きやすかったはずです。
両極端になるのではなく、どこを選ぶかは会社のミッションから照らし合わせて感覚で掴むしかありません。

NP中原
そのバランスを保ちながら、ダークサイドに落ちないようにするために、組織マネジメントにおいては何が大事になると思いますか?

栗本教授
個人がダークサイドに落ちないためには、対話が重要になります。シスも、生まれた時から悪人ではないと思うんです。いろんな場面で心が揺れ動き、倫理観がずれてしまった。アナキンがわかりやすい例です。
だから、ジェダイでは対話をとても大事にしています。対話をすると、知識の奥にある内面的な姿勢が磨かれるんです。姿勢とは、ある条件になったときに、自分だったらどう判断するかの価値観。例えば、危険な山を登っているときに遭難している人を見つけた場合、その人を助けるかどうかなど。答えがないようなことに対しての姿勢を育成できるのが、対話の最も大事な役割です。

アメリカの教育では対話が重視されていますが、日本では学校でも会社でも対話を教えられることがほとんどありません。しかし、日本企業も、これから外国人雇用者など、いろんな人間を採用するわけじゃないですか。すると、これまでとは違ういろんな価値観を抱える人が出てきて、事ある毎にどう判断するべきなのかジレンマを抱える瞬間が多くなる。その時に、お互いを理解し合って適切な判断をするために、対話がとても大事になります。
上下関係で「こうするもんだ」と決まっている状態から脱却しないと、そもそも外資企業と戦えないでしょう。相手の価値観を知る機会はこれまで飲みニケーションに頼りがちでしたが、対話を重視する組織づくりに変えていく局面だと思います。

これからの時代に求められるミッションドリブンマネジメント

NP中原
個人的には、シス型のマネジメントは、合理的だとは思いますが、それによって関わる人が幸せになれるのか疑問があります。

栗本教授
そもそも、幸せという概念を持ってなさそうですよね。ただ、恐怖マネジメントでもあれだけの人が集まる状況を見れば、組織としてはうまくできていると思います。シスの中において、本当に不満はあるのかなと。
一方で、マスクで顔を見えなくしたり、名前ではなく番号で呼ばれたり、少なくとも個性は見えませんよね。管理はしやすいかもしれませんが、個人のモチベーションは生まれず、自ら考える人は育ちづらいように感じます。結局、恐怖マネジメントでは短期間は有効かもしれませんが長続きしないと思います。

NP中原
続くかどうかの視点が大事ですよね。不確実性の少ないこれまでの社会だったら、シスのような組織でもよかったかもしれません。ですが、向かうべき明確な社会課題があるわけではなく、多様で答えのない問題に立ち向かっていく時代では違ったマネジメントが必要になると思います。栗本教授は、これからどのような会社づくりが求められると考えていますか。

栗本教授
今まで見たことがないことに取り組んでいく時代においては、個人の「危機意識」が重要になります。言葉で言うのは簡単ですが、それまで成功してきた組織の中で危機意識を持つことはとても難しい。シスなんていい例です。結局、何度も同じ「◯◯スター」を作っていますよね。あれぞ危機意識のなさの表れです。

NP中原
先程の話のようにトップダウンでやれと言われているだけだから、内発動機づけがなく、危機意識も湧かないのでしょうね。個々人が危機意識を持つために、組織は何をするべきでしょうか。

栗本教授
どこの会社も悩んでいることですが、まずはトップが変わることでしょうね。部下から危機意識を突き上げることはまずありません。優れたトップは常に危機意識を持ち、10やばいと思ったら100とか1000とか多少大げさにでも表現することが大事です。
あとは、個性を奪うのではなく、自分の意見を言いやすい環境をづくることも必要です。一般的な会社では、上司の言うことが絶対で、ミドルマネージャー程度にならないと、自分の意見は言えません。一方で、ホラクラシーのような組織ではいろんなアイディアが出やすい。多様な人の意見を拾い上げることが重要になるかと思います。

また、「YES AND」というキーワードも大切です。見たことがない新しいものに対して、いきなり否定するのではなくて、まずは「なるほどね」「だったらこうしたら良いんじゃない」と言える文化。これは日本企業の弱いところかなと思います。例え多様な人がいても、その人たちの意見が最初から否定されるのであれば、多様である意味がなくなってしまいます。

NP中原
アナキンは全部ダメと言われて潰れましたからね。

栗本教授
「若きパダワンよ・・」という言葉でアナキンはその若さをもって何度も否定されてきて少し可哀想でしたよね。これからの時代においては、トップの危機意識から各メンバーが主体的に課題設定をしていくことが必要になります。そう考えると、どんな企業であれ行き着く組織運営上の課題は、いかに多様性を受け入れるかです。

多様性って言葉で言うには簡単ですが、実際は本当に難しいことです。例えば、営業職の服装。髪の色、爪、ピアス、髭、タトゥーなど、どこまで許容するかの判断は難しいものです。「派手はダメ」と言っても、派手という言葉の持つ意味が全員違います。かと言って、なんでもOKなわけではありませんし、多様性を受け入れる必要に迫られる日本企業は苦労すると思います。
そんな多様性をまとめるのは、先程申し上げたように数字です。もちろんその数字の背景には、まずはミッションがあり、ミッションを達成するためのゴールがあり、具体的なKPIが生まれてきます。そう考えると、ミッションの重要性がますます大きくなります。

多様性を高めることからは逃げられないこれからの時代、ミッションドリブンな会社になることが求められていくのだと思います。

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※STARWARS、スターウォーズは、LucasFilm Ltd. LLCの登録商標です。

 

執筆者:中原雄一
2013年 ネットプロテクションズ入社。
入社後は一貫してBtoB決済事業部において事業推進に携わる。現在はマネージャーとしてプロダクトマネジメント、事業推進全般を担当。

「個性が活かされ、コラボレーションによって高い価値創造を行う組織づくり」を行うべく、マネジメント・リーダーシップ・事業戦略論・ファシリテーション・意思決定論についてや歴史・文化人類学・生物学から組織論への応用について日々学び、集団・組織における生産活動のメカニズム・本質を追求している。
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