ドリームと利益を両立させ、強烈な意思で社会を導くリーダーが必要_Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一さん × ネットプロテクションズ 秋山 瞬

執筆者: 秋山瞬

ドリームと利益を両立させ、強烈な意思で社会を導くリーダーが必要_Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一さん × ネットプロテクションズ 秋山 瞬

執筆者: 秋山瞬

人や組織にさまざまな変化が訪れる時代、これからの社会に求められるリーダーシップはどのように変わっていくのでしょうか。

そもそもリーダーシップとはどんなもので、時代に応じてどう変わっていくのか、リーダーはどのように育成すべきなのか。

Yahoo!アカデミア学長、グロービス経営大学院学長を務め、次世代のリーダー育成に取り組む伊藤 羊一さんとNP秋山が「これからの時代のリーダーシップ」について対談を行いました。

以下
伊藤:ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長/グロービス経営大学院学長 伊藤 羊一 氏
秋山:株式会社ネットプロテクションズ 執行役員 秋山 瞬

個人的な背景に基づいた、強烈な意志を言い続ける

秋山
早速ですが、伊藤さんが考える「リーダーシップ」とはどんなものでしょうか?

伊藤
リーダーシップとは、個人の原体験に基づいた強烈な想いを言い続け、実行することじゃないかと思います。最近これだって思ったのが、『下町ロケット』というテレビドラマの主人公の佃 航平(つくだ こうへい)。宇宙科学開発機構の研究員だった佃が、亡くなった父の経営する中小企業の社長になって、社員たちとロケットエンジンの部品開発に奮闘するドラマです。

佃はもともと技術者で、リーダーの経験はないし、「俺はこれでロケット飛ばしてぇんだ!」って言ってるだけ。最初、周りの人間は「何言ってんだ?」という感じです。それが、佃が想いを言い続けて壁を乗り越えるうちに、周りの人間の心も動かすリーダーになっていく。究極的には、個人的な背景に基づいた強烈な意志を言い続ける、ということに尽きるんじゃないかと思いますね。

秋山
仕事やプロジェクトを進める原動力として、バックグラウンドというか、原体験に基づく意志の力って大きいですよね。

伊藤
そうですね。過去の経験に基づいて現在の価値観が形成されて、その価値観に基づいて未来が設計されるわけです。僕はいつも「現在の延長線上にしか未来はない」って伝えるんです。未来を変えたいなら、経験の認知を変えて、足元から着実に変えようって。

実際に、僕が学長として次世代のリーダー育成を行う「Yahoo!アカデミア」では、参加者が過去の体験をシェアして、自分の価値観や譲れない想いは何かを考えるワークを取り入れています。

秋山
うちでも、人生のモチベーショングラフを書いて過去の体験を振り返ることをしています。なぜそれを実現したいのか、背景にある想いやその先の展望を互いに共有することで、仕事にかけるモチベーションが大きく上がり、リーダーシップを発揮しやすくなる感覚がありますね。

ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリストYahoo!アカデミア学長。 株式会社ウェイウェイ代表取締役。 1990年日本興業銀行入行、企業金融、企業再生支援などに従事後、2003年プラス株式会社に転じ、流通カンパニーにて物流再編、マーケティング、事業再編・再生を担当。2012年執行役員ヴァイスプレジデントとして、事業全般を統括。2015年4月ヤフー株式会社に転じ、企業内大学Yahoo!アカデミア学長として、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ系科目の教壇に立つほか、KDDI ∞ Labo、IBM Blue Hub、MUFG Dijitalアクセラレーター、Code Republicほか、様々なアクセラレータープログラムにて、スタートアップのスキル向上にも注力。
ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリストYahoo!アカデミア学長。
株式会社ウェイウェイ代表取締役。
1990年日本興業銀行入行、企業金融、企業再生支援などに従事した後、2003年プラス株式会社に転じ、流通カンパニーにて物流再編、マーケティング、事業再編・再生を担当。2012年執行役員ヴァイスプレジデントとして、事業全般を統括。2015年4月ヤフー株式会社に転じ、企業内大学Yahoo!アカデミア学長として、次世代リーダーの育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ系科目の教壇に立つほか、KDDI ∞ Labo、IBM Blue Hub、MUFG Dijitalアクセラレーター、Code Republicほか、さまざまなアクセラレータープログラムにて、スタートアップのスキル向上にも注力。

会社の先に「社会」を見据えているか

秋山
求められるリーダーシップ自体、時代に応じて変わっていくこともあるかと思うのですが、伊藤さんはこれからの時代、どんなリーダーシップが求められると思いますか?

伊藤
いつの時代もそうですが、リーダーは社会に提供する価値や与える影響を第一に考えるべきだと思うんです。まずは「自分自身」をリードできた上で、チームや会社の「人々」をリードすることができる。ここまで到達するリーダーは多いですが、そこで止まってはダメで、 その先にある「社会」を意識できるかどうかが重要なんです。

秋山
確かに、社会を見据えた上で、周りをどうリードするかを考えることは大事ですね。

伊藤
僕が考えるリーダーは「世のため、人のため」を第一に、人の笑顔に貢献する人。そのためには、何でもやっていいわけじゃなくて、社会のルールとか倫理観に則って実行しないといけないなって。最近IT業界で起こる問題を見ていると、自分たちのサービスが社会に与える影響をイメージしきれていない部分があると思うんです。

現状として、業界内での教育が圧倒的に足りないのかもしれません。ネットビジネスの第一世代は、我先にと競い合ってビジネスを展開したことで、ある種倫理観を持つ間もなく広がっていった部分があるんじゃないかなと。結果的に、社会への影響までイメージできず、問題が起こり続けるわけです。「法律さえ守ればOK」じゃなくて、社会に対して正しいことをやろうぜって強く思うんですよ。そのためにも、特に次の世代の若者たちがもっと倫理的に考えるよう働きかけたいですね。

短期・長期両方の利益を追えるのが「いい会社」

秋山
まさにその点についてはうちの会社でも考えています。今ちょうど人事評価制度を刷新しているんですが、成果だけではなく、ステークホルダーや社会への貢献という点も含めた指標を組み込みたいと検討しているんです。特に、個人における評価基準は「人間としての成長や幸せ」と「成果を出すこと」の両方のバランスで考えることが大事だと思っています。

目の前の利益だけを目的としたり、成果を出すことに比重を置きすぎると、社会の人々や社員の幸せに繋がらない、まさに伊藤さんが言われた倫理に触れることが起こりうると思うんです。もっと長期的に考えると、会社は目の前の利益以外にも、個人の人としての成長や働く中で得られる幸福感とか、別の指標を見るべきなんじゃないかなと。両方を最大化できる場をいかに創るか。そんなことを考え、周囲を巻き込んで動いていけるリーダーを育てていきたいですね。

伊藤
まさにそうだと思いますね。人の成長や幸せを優先したいと思ったときに、じゃあ成果を求めることは良くないかっていうと、そうではない。目の前の利益を出すことも必要だし、評価基準に成果を置くことは正しいじゃないですか。

ただ、それでも僕は、長期的に儲かることに積極的に投資すべきじゃないかと思うんです。GoogleやIBMなどを見てみると、足元でしっかり利益を出さないといけない中で、お客様の笑顔のために、心の底からこだわることを貫いた結果、長期的に価値の高いビジネスに繋げているんですよね。

秋山
長期と短期の両方の利益に取り組むことが大事ですね。うちの会社の7つのビジョンの1つに、「歪みがない事業・関係性をつくる」とあるのですが、「歪みがない」というのは、人が人らしくいられること、利益を最上位の目的とせず、価値提供を目的にすることを大事にするという意図を持っています。

伊藤
いい会社って、長期的な部分にも時間やエネルギーを注げる会社だと思います。ただ、制度やポリシーを社員に強制するのではなく、会社の理念やビジョン、社会への提供価値を、会社と個人がちゃんと共有できていることがカギだと思いますね。

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最後は、自分がどれだけ燃えられるか

秋山
実際、ビジネスの現場では「短期収益的にはこっちだけど、長期で考えたら絶対こっちだよな」みたいな、トレードオフも起こるかと思います。このあたりリーダーはどう乗り越えていくのが良いとお考えですか?

伊藤
長期的に実現したい「ドリーム」と、短期的な「利益」の両輪を回して走るための実行力を身につけることに尽きると思います。利益の部分を軽んじていると、自走することはできないし、ドリームの部分を軽んじていると、走り続けることはできないんですよね。良いリーダーになればなるほどこの2つを遠い距離で回すことができるイメージですね。

秋山
長期的なドリームをもって走り続けるためにも、自分が腹落ちするまで言い続けることが大事だと思いますね。採用面接では、その人が将来実現したいことについて語り合いますが、入社後もそうやってドリームを語る機会を多く用意することが必要だよなって。言い続けることで、周りにもその意識が連鎖して、やがては形になっていくと思うんですよね。

伊藤
何かを実現したいって言い続ける中で、当然、組織内で考え方や価値観が相容れないことはあると思います。僕もドリームの実現のために闘うことはありますよ。そんな時に、「こういう世界を創りたい」って想いを真正面からぶつけてもダメ。逆に成果を出せば何も言われないだろうと、ひたすら成果を出すことに集中しました。何でもすぐにできるとは思わず、「5年でこれを変えるか」みたいな長期的な思考も時には必要だと思います。

秋山
たしかに、終身雇用が一般的だった頃に比べると、今は苦境に立たされても「転職して環境を変えればいいや」って移っていく人も増えているかもしれませんね。ただ、それって場合によっては、環境要因を理由に逃げてるだけじゃないのって思う場合もありますよね。予測不可能でより複雑な社会になってきているからこそ、「人生は長いんだから、もうちょっと胆力をもって取り組もう」みたいな考え方でもいいんじゃないかなって。

伊藤
そうですね。いかに自分の人生にコミットして、情熱を燃やし続けられるかが大事じゃないでしょうか。人生にコミットできているなら、短いスパンで考えてもいいと思うんですよ。ただ、できてないんだったら、環境を変えたってやりたいことの実現は無理だと思いますね。最後は自分がどれだけ燃えられるか、意地なんですよね。

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リーダーシップが覚醒するのは、修羅場を自責で乗り越えた

秋山
ここまでに出てきた「強い想いを言い続け、実行し続ける」というリーダーシップはどうやって養われるのでしょうか?また会社は、どのようにリーダーを育成すべきだと思いますか?

伊藤
大げさに言えば、自分の人生へのコミットとして意思決定する機会と、情熱を燃やし続けるための仕掛けを用意することですかね。社内のトークイベントとか、ワークショップとか、一瞬で燃え上がらせるのは意外と簡単なんですけど、それだけでは駄目で、その火をどう燃やし続けるかが重要です。

僕は、心身のコンディションを整えることや、日記を書いて1日を振り返ることを勧めています。

秋山
なるほど、どんな変化があるのでしょう?

伊藤
出来事をメタ認知することで、経験がしっかりインストールされます。そこでの気づきを言語化することが成長に繋がるんです。歯磨きするのと同じように、振り返りも習慣的に行うことが大事です。日記を書き続ける人は変わりますよ。

秋山
習慣的な振り返りが情熱を燃やし続けることに繋がるんですね。では、実際にリーダーシップが大きく伸びるのはどんなときだと思いますか?

伊藤
何かしらの「事件」が起こったときですね。仕事上の修羅場とか、何か大きな社会現象が起きたとか。特殊で難易度が高い状況の中、自分で判断し実行することで力はぐんと跳ね上がります。

僕の実体験だと、東日本大震災ですね。かつてない大災害に直面した東北の人々に、僕たちも何かしなければって考えて、避難生活に必要な電池の供給を東北に集中させる判断をしたんです。すると、他の地域のお客さんから「こっちも困ってんだ」と苦情が来て、謝罪しながら「私たちは東北の人たちに届けるべきだと思うからやってるんです」と必死に想いを伝えました。

そんな風に、たくさんの選択肢がある中で、自分の価値観から意思決定をして、責任を持って対応することが、一番リーダーシップに繋がったと思います。結局自分の想いに従わないと駄目なんだなって実感しましたね。

秋山
私も同感です。リーダーシップが覚醒するのは、修羅場を乗り越えたとき。何をすべきか、その意思決定を自分の責任の下でやることが大事ですよね。

伊藤
明確な答えがない状況で、自分が後悔しない意思決定はどうやったらできるかってところで、最後はやっぱり、自分の譲れない想いとか価値観をもってることに繋がると思います。

秋山
先ほど言われた、自分の人生にコミットできるかどうかって、まさにそこなんでしょうね。日々大なり小なりの選択はあるじゃないですか。その中に自分の意思をきちんと込めて決定しているのかみたいな。

伊藤
そうなんですよ。「自分の価値観と仕事の判断は別物だ」って考える人が多いのですが、いやいやまったく同じだと言いたいです。基本的には全て自分の価値観で判断していくしかないのだと思いますね。

秋山
まさに、日々振り返りを習慣的にすることで、修羅場のときでも同様に「自分の価値観」を軸に意思決定をして乗り越えられるということなんでしょうね。常時・非常時、大小に関わらず自分の価値観で判断し、振り返りを通じてPDCAサイクルを回していくことで「リーダーシップ」を育んでいけるのだと理解しました。ありがとうございました。

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【対談後コメント(ネットプロテクションズ秋山)】

以前より、部分最適の集合が全体最適に繋がらないのと同様に、短期成果の積み重ねが長期成果の最大化にならないと考えていたので、全体的に非常に共感できる話が多かったです。

とはいえ、その「理想」と「現実」をいかに両立していくのかが難しい。それに対して、「日記を書いて振り返りを習慣化する」「個人の背景と社会を見据えて自分の想いを発信する」「自分の人生にコミットして情熱を燃やし続ける」というアプローチを伺えたことは、「これからの時代のリーダーシップ」を養っていく上で大変参考になりました。さすが伊藤さんだな、と。

「次世代を担うリーダー」の育成を考える会社として、いかに上記のようなサポートができる場を作っていくか。検討中の人事評価制度への反映も含め、リーダーシップを互いに尊重し高めていける文化醸成等、ハード・ソフト共に考えていきたいと「わくわく」が拡がるインタビューでした。

 

執筆者:秋山瞬
2005年 設立2年目・社員4人の人材系スタートアップ企業に新卒1期生として入社。
ベンチャー企業の経営幹部層に特化したヘッドハンティング・人材紹介に従事。
新規事業立案や関西支社設立にも携わった後、「次世代を担うリーダー創出」を志し、2009年 ネットプロテクションズの人事として参画。
2011年 人事総務グループのゼネラルマネージャーに就任。
新卒・中途採用、人材開発・育成、人事・評価制度構築、理念・ビジョン策定等
幅広い業務に携わり、「つぎのアタリマエ」となるような組織づくりを目指す。
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