リーダーを育むスペシャリスト中竹竜二さんに聞く、リーダーを生むリーダーに必要なスタイルと覚悟。

リーダーを育むスペシャリスト中竹竜二さんに聞く、リーダーを生むリーダーに必要なスタイルと覚悟。

リーダーを増やして組織を強くしたい。

そう考えているマネージャーや経営者の方は多いのではないでしょうか?

では、今の時代に必要なリーダーにはどのような力が求められるのか。そしてリーダーを育てるために何をするべきなのか。

そんな疑問に答えるのは、日本ラグビーフットボール協会でコーチングディレクターとしてコーチの育成をするかたわら、様々な企業でリーダー育成を行う株式会社チームボックス代表取締役中竹竜二さんです。

中竹さんは、リーダーに求められるのは、強いカリスマ性ではなく、組織のメンバーが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための環境を整える「フォロワーシップ」であると言います。

強い組織を作るために意識すべきこととは。
リーダーに必要な姿勢とは。

「リーダーが変われば組織が変わる」と語る中竹さんに、ネットプロテクションズ執行役員・人事責任者の秋山がお話を伺いました。

中竹 竜二
1973年福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学し、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国に留学。三菱総合研究所等を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を務め、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇など多くの実績を残す。2010年退任後、日本ラグビー協会初代コーチングディレクターに就任。U20日本代表ヘッドコーチも務め、2015年にはワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たした。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。

組織を変えるためにはリーダーが変わり続けるしかない

──本日はよろしくお願いします。中竹さんは、リーダーにかかわらず全てのメンバーが、周りを引っ張る「リーダーシップ」と、周りを支える「フォロワーシップ」の両方を持たなければ組織がうまくいかないと言われていますが、求められる力が変化している背景には何があるとお考えでしょうか。

価値観が変わったともよく言われますが、ビジネス構造が変わったことが大きいと考えています。テクノロジーの進化に伴い、「作れば売れる」という時代から、イノベーションを起こし続けなければビジネスが成功しない時代に変わりました。これまでは、ヒエラルキー組織を作り、部下を引っ張るカリスマ的リーダーがいればよかったかもしれませんが、それでは新しい価値を提供するサービスは生まれません。イノベーションを起こすためには、リーダーもメンバーも関係なく、それぞれが主体的に考えて動き続ける必要があり、そのためにフォロワーシップの重要性が増しました。

それはビジネスだけでなく、スポーツの世界でも同じです。昔は、個人の能力が高ければ勝てましたが、データ解析やコーチングが進化した今、対策を練れば、どんなに能力の高い人であったとしても簡単に打ち負かせます。スポーツでも現場からイノベーションを起こし続けることが求められるようになり、監督やリーダーに求められるものが大きく変わりました。

──組織全体での主体性が、新たなモノを生み出すために必要不可欠だということですね。私は、リーダーの条件は「次のリーダーを育てられること」だと考えています。中竹さんは「リーダーが変われば組織が変わる」とおっしゃってますが、それだけではなかなか変化がないメンバーもいると思います。そんなメンバーに対して、リーダーは何をするべきでしょうか。

組織やメンバーを変えるためには、リーダー自身が変わるほかありません。なので、メンバーに変化が見られなくても、リーダーが覚悟を持って変わり続けるしかないですね。メンバーの変化には、時間がかかることもありますし、あるグループは変わったけど、別のグループは変わらないということも頻繁に起こります。それでも、メンバーが変わるまで、他責にせず自責で学び続けるしかありません。

私自身、会社やスポーツでリーダー育成をしながら「自責で学び続けよう」と言っている以上、誰よりも学び、誰のせいにもせずにやり続けることが一番の仕事だと考えています。そして、自分自身がやり続けることでメンバーが変わることを体感するので、一貫性がますます磨かれます。

──組織を作る中で、リーダーに強い牽引力があると、メンバーが引っ張られて伸びていく一方で、逆に依存するメンバーも出てきます。私たちも、全てのメンバーがリーダーシップとフォロワーシップを両方持ち、相互に作用することを理想として制度作りをしていますが、ついつい、メンバーがリーダーシップを発揮するように何かアプローチしがちです。しかし、今の話を聞いて、アプローチするというよりは、リーダー自身が変わり続けるしかないのだと感じました。

とはいえ、メンバーがリーダーシップを発揮してくれないと、リーダーがフォロワーシップを発揮できません。メンバー一人ひとりの主体性を引き出すために、仕事はどんどん任せた方がいいです。任せたら支えるしかなくなり、リーダーはフォロワーシップを発揮せざるを得ません。ステージの外からアプローチするよりも、ステージに載せてしまった方が早い。

ただ、任せるといっても、リーダーは結果に対する「責任感」は持ち続けた方がいいです。「責任」と「責任感」は全くの別物です。結果責任をメンバーが負うかどうかは事業や組織の状態で議論の余地がありますが、リーダーが責任感を放すことはありえません。任せたことが失敗しても、心から「任せた自分が悪かった」と思えることが大事で、それが他責にしないということです。

私自身、任せた仕事の9割ぐらいは失敗したと思います。ネガティブな感情が湧くこともあるし、もうちょっと段階を踏めばよかっとか、任せなきゃ良かったと思うこともありますが、それも含めて全てが自分の責任。そこから学び、成長することが大切なんです。

結果ではなく習慣にフォーカスする

──他責にせず、自ら学び続けるのがリーダーの仕事だと。中竹さんが立ち上げたチームボックス社で提供するリーダー育成プログラムではそれをどのように実現しているのでしょうか。

私たちはリーダーの能力や組織の状態を可能な限り数値化しています。これまでのリーダー育成や人材育成、マネジメントの世界は、基本的にはアナログで「なんとなく育ったよね」みたいな、ふわっとしたものが多かったと思いますが、抽象概念を数値化しました。その指標を元にトレーニングすることで、成長が分かるようにしたには一つの特徴かと思います。
その指標に沿った力を向上させるために、トレーニングが終了した後にも、業務である日々の実践のサポートである個別コーチングを提供しています。結果ではなく、一人ひとりの行動・習慣にフォーカスしているのももう一つの特徴です。あくまで、業績ではなく人の成長にコミットして、「他責せず、自責でものを考え学び続けているか」という点を、自分と部下や上司など他者しっかり振り返るサイクルを作っています。

スポーツで言うと、ヒットを打ったことに着目するのではなく、ヒットを打つために行った努力を見るということです。結果が出るまでには時間はがかかりますが、その練習の姿勢の良し悪しはすぐに判断できます。逆に言うと、正しい努力を続けているのならば、多少結果が出るのが遅くても我慢しなければなりません。

いくら人が成長しても、なかなか業績に結びつかないこともときにはあります。それでも、新しい習慣をつける力自体が確実に資産になります。一度習慣を変えることができれば、必要に応じて自分の習慣を何回だって変えることができるという成功体験に繋がりますから。。結果を出すために、他責にせず、自分を変え続けることが大切だと思います。

──これまで、多くのリーダーを見てきたと思いますが、習慣がなかなか変わらない人、自責が抜けない人もいたと思います。変われない原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

一番はプライドです。それも、自分に対するプライドでなく、他者と比べる種類のものです。恥をかきたくないとか、人の上に立ちたい、周りから偉いと思われたいという気持ちが強い人は、他責にしがちです。

プライドを捨てるためには、「自己肯定感」が必要だと思います。最近は「自己受容」なんて表現も使いますが、要するに、ありのままの自分を受け入れることです。それができれば余計な感情を取り除き、あらゆる仕事を自責で捉えられるようになります。

自分を変える上で、やっかいな問題のほとんどがそこです。ただ、どんな人でも、行動し続けたら必ず変わります。たくさんの人に関わってきましたが、年齢は関係なくて、60歳でももっと上でも必ず変われます。「この人はきっと変われない」と言われている人のことを聞くと、やる気がいつも以上に出ますね。

私が代表を務めるチームボックスが提供するトレーニングもそこが一番の強みだと思います。人のマインドを変えて、態度を変えることに特化している講演も研修も、行動を変えるという点においては、ほとんど効果がないと言われているので。オリジナルで開発したワークや独自のチェック項目を使って、悪しき習慣を変えることに特化してサービスを提供しています。

自らの体験を俯瞰的に観察し、人に伝えられるようにする

また弊社の強みをもう一つあげるとしたら、提供コンテンツ。私自身に、自分で体感したことを、俯瞰して論理的に整理して、再現可能なトレーニングに落とし込む力に長けていることです。どうすればリーダーを育てられるか、自分が体験しただけでは他の人に伝えられませんが、私の強みは、体験したことをサービス化できることだ思います。

その力は、留学先のイギリスの大学院でで「形態型社会学(Figurational sociology)」という学問を学んだことに起因しています。聞きなれない分野かもしれませんが、社会の仕組みや現象を整理して構造的に捉える学問です。研究のために、物事を俯瞰的に捉え、主観性を一切排除することが求められました。論文の中では一回も「I(私)」という主語を使ってはいけませんでしたし、「〜すべき」という哲学的な主張を入れることも許されませんでした。

例えば、「人が殺された」というテーマを扱う時にも、誰が悪いのか犯人探しをするのではなく、そもそも人が水を飲んだと同じような事象だと捉え、善悪や価値観は抜きにして、どういう原因と結果があってその殺人事件が起きたかを、客観的に構造として紐解きます。個人や社会通念を排除して、社会の仕組みを俯瞰して客観的に見る力を徹底的に叩き込まれました。

それが元になり、自分なりの視点法を生み出していったんです。例えば、振り返りの時に「Good」「Bad」「Next」の3つの観点で見る方法は、とても単純なフレームワークですが、今ではラグビー界ではほとんどのチームで使われるようになりました。すごくシンプルでわかりやすいけど意外に気づかないことを、私の視点法で整理して、他の人でも使えるようにしているのです。

どんなことでも構造化してコンテンツ化できるので、講演会やトークイベントでは、どんなお題を振られても話すことができます。今も、パソコンの中には500個ほどのテーマで話せるネタがあります。数が多いというよりも、どんなことでも構造化して課題解決の仕組みに落とせることが強みだと思います。

──他の人が再現できる形にできるのがポイントですよね。私たちは「つぎのアタリマエをつくる」というミッションを掲げているのですが、そこには、今の特別で終わりたくないという思いがあって、「自分たちだからできた」状態ではだめだと感じています。自分たちが事業や組織における新しい仕組みを生み出せたら、それを体系化して世の中に広げ、当たり前にしたいと思っているので、中竹さんの考え方から学ぶべきところが非常に多いと感じました。

コーチデベロッパーを日本に根付かせる

──リーダー育成を長年続ける中竹さんの働くモチベーション、原動力はどこにあるのでしょうか。

使命感しかないですね。自分にしかできないことをやるのが、私の役割だと。過去の仕事も同じですが、いい意味でも悪い意味でも、火中の栗を拾うような役割というか、自分にしかできないようなことをやってきましたし、これからもそれをやり続けるのだと思います。

それも、人に反対されることが良いですね。大抵の場合、何かをやろうとすると「そんなの無理だ」とか「意味ない」とか言われますが、それって論理的に考えると当然なんですよね。新しいこと、イノベーションは常に既存の社会から見れば異端なので、反対されるのが当たり前。むしろ、反対意見が出ないことはやる価値がないとすら思っていました。みんなが納得することは新しくないし、ほっといでも誰かがやりますから。

──自分にしかできないことを体験して、それを他の人でも再現できる形にする。そうすると、さらに難易度が高くて中竹さんしかできない案件が舞い込んでくる。それをやり続けることが、中竹さんにしかできないことをやり続けることであり、使命ということですね。
最後に、そんな中竹さんが、今目標にしていることを教えてください。

ここ数年は、「コーチのコーチとして、実力的にもステータス的にも世界トップレベルになること」を目指しています。コーチを育てるコーチのことを、「コーチデベロッパー」と呼ぶのですが、世界ではたくさんいますが、日本ではまだまだ少ないのが実情です。ですが、この役割はこれからもっと重要になります。

世界のトップまで行き、日本のコーチデベロッパーを確立する。人数も増やし、実力を上げることに寄与したい。それが、今ある使命感です。その目標を実現したら現役を引退して、ゆっくり暮らしたいですね。

執筆者:THINK ABOUT 編集部
THINK ABOUTを運営するネットプロテクションズの社員によって構成される編集部です。
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