自由に動ける「ネコ型」社員になれ! 「イヌ型」組織を変えるために必要なこと

執筆者: 松尾奈々絵

自由に動ける「ネコ型」社員になれ! 「イヌ型」組織を変えるために必要なこと

執筆者: 松尾奈々絵

雑誌「anan」で1冊丸ごとネコ特集が組まれたり、ネコ写真がSNSで話題になったりと、世間で広く愛されているネコ。自由気ままでマイペースな存在が、人気の理由の一つのようだ。しがらみの多い人ほど、ネコを愛でたくなるのかもしれない。

「実は昨今、組織でもネコのように個人主義な『ネコ型』の社員が求められているんですよ」

そう話すのは、同志社大学政策学部教授の太田肇さんだ。イヌっぽい方が企業に必要なように思うが、ネコ型の社員はどういう理由で必要とされるのだろうか。詳しく話を伺った。

◆太田 肇さん
同志社大学政策学部教授。個人を尊重する組織の研究を専門とする。著書に「『見せかけの勤勉』の正体」(PHP研究所)や「公務員革命: 彼らの<やる気>が地域社会を変える」(ちくま新書)など。2018年4月に「『ネコ型』人間の時代」(平凡社)を上梓した。

「イヌ型」「ネコ型」人材とは?

――太田先生は著書「『ネコ型』人間の時代」の中で、人を「ネコ型」「イヌ型」に分類しています。改めてそれぞれの特徴を教えてください。

「イヌ型」は、役職や階級など、上下の序列が重視される縦社会を大切にし、集団主義を良しとする人です。これまで、農業社会や工業社会において重宝されてきた人材といえるでしょう。

彼らは組織の中でルールを守りますが、上から支持された通りに動き、周りに対して過剰に同調してしまうので、自発性や利他心をあまり持っていません。強制や圧力がないと、動かなくなってしまう恐れがあります。

一方「ネコ型」は、ネコを想像していただいてわかるように、マイペースで個人主義的な考え方を大切にします。「ネコ型」の特徴として、人との関わり方を縦ではなく横で考えること、そして誰かに指示されてからではなく、自発的に動くこと、直感を大切にすることなどが挙げられます。これからはそんな「ネコ型」の社員が求められる時代だと私は考えています。

――それはなぜでしょうか?

これまでは「イヌ型」が社会の規範を作ってきましたが、今の時代には合わなくなってきているからです。「イヌ型」を前提とした弊害が、さまざまなところで出てきました。

例えば、流行語にもなった「忖度」や日大のアメフトの事件など、縦の関係の強さが不祥事や暴力事件などを生む温床になってしまっています。「イヌ型」が社会に合わなくなってきているんですね。

「ネコ型」人材はどうして今必要なのか

――どうして「ネコ型」が今の時代に必要とされるのでしょうか。

一つにはAIの時代になったことが挙げられます。いくつかの側面がありますが、AIの時代において、上意下達ではなく、横の繋がりによって物事が進むようになりつつあります。

IT化により、職場にロボットや情報システムが導入されることで、単純作業が減少しました。上から与えられた仕事をただこなせば良い時代ではなくなったのです。部下に作業を指示したり、企画通りに物事が実行されているかどうかをチェックしたりする仕事は、これからは不要になるでしょう。つまり、ピラミッド型の組織はもういらないのです。どこの組織にいるのかが関係なく、最適のものを見つけられる、最適な人とマッチングできるようになる。これは全て横の関係ですから、縦で命令してという場面がなくなるんですね。

また、能力的な面で言えば、AIによって単純な仕事だけではなく、専門職の仕事も、取って代わるのではないかと言われていますね。となると、「直感」が大事になってきますね。人間特有のものとして、最後まで残るのは、直感をしっかりと持っている「ネコ型」なんです。

――これからの時代には「イヌ型」を減らした方がいいということでしょうか?

いえ、いらないと思うんです。全員「ネコ型」になりましょう。

――全員! そこまで言い切れるのはなぜですか?

一つには、「ネコ型」がいても「イヌ型」がいる限り、力が発揮できないことが挙げられます。「イヌ型」はどうしても上下関係で人を判断し、下の立場である部下などを押さえつけますから、自ら考えて自発的に行動する等の「ネコ型」のいい面が発揮できないんです。

――「イヌ型」「ネコ型」の混合はよくない、と。「イヌ型」主体組織にはもう、メリットがないということですか?

はっきり言ってありません。そういう時に、両方の良い面を探してしまって、結局ほとんど変わらないことが世の常ですが、もう思い切って全部なくしてしまった方がいいと思いますね。

「イヌ型」のスパルタ方式の方が、目先のとりあえずの結果は出せるんですよ。ただ、その後に成長できるかといいうと、大きく伸びることはない。彼らは指示を待つタイプのため、自分で考えた上で、努力することが困難なんです。成長の伸び代に限界がある。

全国大学ラグビーフットボール選手権大会で9連覇した帝京大学の岩手監督も同じことを話していましたが、自分で考えなければ、ある程度のところで天井がきてしまうんです。

組織はインフラとして、個人をサポートするべき

――ただ、「ネコ型」人材が増えれば、組織そのものがそもそも必要なくなるのではないでしょうか?

これまで考えられてきた一般的な組織はいらなくなると思います。これからは、個人個人が持っている能力を最大限に発揮できる場を提供するのが、理想の組織ではないでしょうか。

――なるほど。でも、その理想を実現するのは難しいような気もするのですが……。

組織の構造としてはシンプルなので、難しい話ではありません。場を提供するだけでいいわけですから。

――猫がふらっと立ち寄れるような?

そうです。これからの組織が提供するべきなのは、仕事をするための場、インフラです。決まった時間に出社しなくても、好きなタイミングで会社に来ればコンピューターやネット回線などの設備が使える、情報を得られる、コミュニケーションが取れる。そういった場が求められるのではないでしょうか。

あとは業態にもよりますが、個人がトラブルに巻き込まれたときに、法的な支援をしたり、最低限の身分保障や報酬、社会保険を提供したりすることが必要になると思います。ほかにも、場合によってはチームを調整・コーディネートをする人を、管理職ではなく専門職として雇うといいでしょうね。

――今の会社や組織は、企業がお金を儲ける、企業自体がどう成長するかに重きを置いている場合が多いように思います。そこからどうすれば、インフラ型にシフトできるのでしょうか?

まずは、個人が組織に貢献をして、利益を上げることが必要になります。そして個人が専門を分化していけば、その人なりの居場所というのは出てくるはず。総合職としてではなく、専門家として仕事を極めていく必要があるでしょう。

――なるほど。個人はその能力を今後どう高めていけばよいのでしょうか。

はっきり言って、わかりやすい方法はありません。方法があれば、ビッグデータに組み込まれてしまいますので、とにかく多様な経験をするのが一番ではないかと。とにかく、自分のオリジナルのものを作っていくことですね。

――自由な自分と社会に何かを貢献するとスキルを持った自分。「ネコ型」社員になるには、両側面が必要なんですね。

抽象的ですが、個性をいかに自分で伸ばしていくのか。人間は本来そうあるべきですよね。

将来ずっと先のことを考えても、AIがどれくらい人に取って代わるのかはわかりません。ただ、人は一人ひとり特有の経験があります。その経験から新しいことを生み出すのは、AIには取って代わられないと思うんです。ですから、これからの時代は、その経験をいかに蓄積し活かしていくかが大切ではないでしょうか。

「ネコ型」社員の増加に向けて

――現在、「ネコ型」社員は増えてきているのでしょうか?

出てきていますね。マイペースで、プライベートも大事にするけれど、感性が優れていて、仕事ができるタイプが増えてきたという話を、いろいろな会社で聞きます。そして、今までのような縦の関係ではなく、対等な関係で仕事をしてくると。こういうタイプがここ2〜3年で現場に広がってきています。

これは、ゆとり教育の良さが今になって出てきたのかもしれません。ゆとり教育は、今までの受験中心の教育で測られる学力が、これからは通用しないから見直さないといけないということで始まりました。

けれど、ゆとり教育を失敗と結論づけるのは、旧来の学力の尺度で測って学力が落ちているという評価軸でした。でも、そんなのは当たり前ですよね。実際に授業時間を減らしたわけですから。

――「ゆとり教育」の問題に限らず、何かを変えるならそもそも結果を評価する物差しを変える必要がありそうですね。

そのとおりです。例えば、自立型社員の育成を掲げているにもかかわらず、その企業内で社員を集めて一律に研修をしている企業があります。そして、どれだけ自立的に行動できるのかを人事評価し、やるべきことを覚え込ませたりする。これっておかしな話で、「ネコ型」社員を求めながら「イヌ型」社員の管理をしているんです。

固定観念にとらわれず、根底のマインドを変えること。思い切った取り組みをしていかないと、これからの新しい組織を作るのは難しいでしょうね。

 

ライター:松尾奈々絵(ノオト) 編集:ノオト

執筆者:松尾奈々絵
有限会社ノオトの編集者・ライター。品川圏域のニュースを届ける「品川経済新聞」やビジネスパーソン向けのオウンドメディアを担当。
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