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すべてのステークホルダーが幸せになるビジネスを作るために~IT部門を「ビジネスアーキテクト」に変えた想いとは~

IT / Concept

すべてのステークホルダーが幸せになるビジネスを作るために~IT部門を「ビジネスアーキテクト」に変えた想いとは~

私がCTOとして束ねている部署は「ビジネスアーキテクト」という名称です。
世間一般では、IT部門やシステム部門と呼ばれることが多いでしょう。
実際、2013年まではネットプロテクションズでも「システムグループ」と称していました。
そんな中で、私は「ビジネスアーキテクト」という部署名に思い切って変更をしました。

なぜ変更をしたのか。どんな想いがあったのか。私なりの”システム”や”IT”についての考えを記してみます。

システム=ITという偏った認識への危惧

全社でITへの意識を持つために、プログラミング研修も取り入れている
全社でITへの意識を持つために、プログラミング研修も取り入れている

一般的に、私が統括している領域は「システム」や「IT」と呼ばれます。
その名の通り、ビジネスを実現するためのIT資産を構築、運用し、維持、発展させることが主な役割であることは、疑う余地のないところだと思います。

ただし、その役割に「システム」や「IT」という単語を用いた場合、どうなるでしょう。
その外側にいる人達からは「システムを作ってくれる人たち」という認識が生まれ、思考を停止し丸投げする、という事象が発生します。
一方で内側にいる人達は「言われたとおりにシステムを作れば良いのだ」という、役割を狭く規定する事象が発生します。

実際にネットプロテクションズにおいても上記のような状態が長く続いていました。
一般的な概念で考えれば仕方ないことだとも言えるでしょう。
しかしながら、本来の役割や目的である「ビジネスを実現させるための仕組みづくり」の実現に対しては大きな齟齬が発生します。

システムとは、「多くの物事や一連の働きを秩序立てた全体的なまとまりや体系のこと」(※)つまり、ある事象において関係する要素すべてを緻密に組み立てて、全体として機能している状態となります。
したがって、その要素には当然ITもありますが、あくまでもそれは1つの手段にすぎず、人の手作業や人の感情だって含まれるでしょう。

それにもかかわらず、一般的に「システム」と表現されると、頭には「IT」のことばかりが浮かんでしまうことが多いように感じています。
私たちがビジネスのシステムを形作ることをミッションとする以上、「IT」はあくまでも手段の1要素であり、他の要素も同時に考慮して取り組むべきだと考えています。

また同時に、ITは特殊な職種とも感じられることが多いようです。
そのため、ビジネスサイドのメンバーからはITを敬遠され、すべてお任せといった状態になってしまうことが多々あります。
ビジネスサイドもビジネスのシステムを形作るメンバーの1人である以上、関係ないものではなく、一緒に考えて作っていくという関係性を作っていきたいとも感じていました。
ビジネスを生み出していく企業のCTOとなってから、こうしたシステム=ITという認識によって生じる問題に危惧を感じてきていました。
※岩波国語辞典(第七班)における定義

緻密で繊細な設計こそが、自分たちの特徴であり価値である

IT部門もビジネス部門も、みんなでビジネスを作っていく環境を作れるよう、偏った認識になりがちな「システム」という名称を変えたいと考えるようになりました。
名称を変えること自体は本質ではありませんが、目指すべき姿、すなわちビジョンを示しているとも捉えられ、認識を変えるための一つの方法であると考えました。
変更するにあたって、どんな名称がいいのかを考える上で、自分が仕組みを作ってきた経験を元に特徴を考えてみたところ、IT部門、もっというとプログラミングを経験している人だからこそ持っている特徴、強みがあることに気が付きました。

それは緻密さ、繊細さです。

プログラミングはあらゆるアクションや状態などすべてにおいて厳密に定義化していく必要が有るため、なんとなくで済ませることができません。
人間が無意識下に行っている行為さえも1つ1つ分解し、定義し作り上げていきます。
そのため、ビジネスフローを組み立てる上でも全体像を捉えつつ、細部まで緻密に設計していきます。

末端のフローやロジックに至るまで詳細に設計し、バランスよく首尾一貫したものになっていなければ、長きに渡って汎用性を保ちながら発展させていくことはできません。
ビジネスサイドが企画したアイデアに対して、ITサイドから事細かに「これはどうするの?」と質問の嵐が出てくるのもこういった理由からなんですね。

ビジネスサイドにはない、プログラミングを経験しているからこそ持っている「緻密さ」「繊細さ」をビジネス設計に活かすことが自分たちのミッションであり、価値であると改めて認識しました。

あらゆる面において、細部にまで配慮の行き届いた設計を行いビジネスを作っていくことこそが“いいビジネス”を作る条件

緻密さ繊細さがIT部門の特徴であると再認識したと同時に、“いいビジネス”を作ることの必須条件でもあると感じました。
“いいビジネス”の条件は以下の3つの要素だと考えています。

・社会に、継続的かつスケーラビリティの高い価値提供ができている
・全てのステークホルダーに、均質に高品質な価値を提供できている
・提供価値の維持発展の元で、仕組みの最適化(コストの最小化)ができている

自分自身の価値観もそうですし、私たちはミッションに「つぎのアタリマエをつくる」と掲げているように、どうせやるなら社会を大きく動かすことをしたいと考えています。

社会を大きく動かせるようにビジネスをスケールさせる上では、企画段階では見えてこない細部にまでこだわってサービス設計をしないと、どこかで歪みが生じてしまいます。

例えば、細部にこだわったサービス設計をしないと、あるユーザーにとってはよくても、別のユーザーにとっては迷惑に感じてしまうことなどが出てきてしまいます。
そうなると、すべてのユーザーに高品質を均質に提供しているとは言えません。
また自分たち、メンバーに無用な負担がかかってしまうという、弊害が出ることもあります。

そうなってしまっては不満が生じ、巡り巡ってユーザーに高品質なサービスを提供することにも支障が出うるでしょう。
とてもシンプルですが、ユーザーにメリットを提供するためにビジネスを作っているので、スケールさせるために不利益を与えてしまっては本末転倒です。
メンバーにとっても、その弊害として社内に負担が偏ってしまってはモチベーションの低下につながりますし、働くことで充実を感じられないのは悲しいですよね。

だから、きちんとビジネスフロー全体をバランスよく緻密かつ繊細に設計し、ステークホルダーが幸せになれるようにビジネスを形作っていくべきだと考えています。

また同時に、私たちは私たちにしかできないことをやりたい、注力したいとも考えています。

背景としてはこれもとてもシンプルで、自分たちは幸せになるために働いていて、自分らしさを活かせることに注力することで、自身の存在意義を明確に認識することができ、幸福を感じることができます。
出来る限り一人ひとりが特徴を活かして働くことに注力できるように、非属人化・仕組み化をしていきたいと考えています。

ビジネスを作っていく上で、ステークホルダーが幸せになれるよう、絶妙なバランス感を持って細やかに設計していく、仕組み化していく、これを私はビジネスをアーキテクトする行為だと表現しています。

このビジネスのアーキテクトこそが“いいビジネス”を作るための必須条件だと考えています。

すべてのメンバーがビジネスアーキテクトとなり、社会を変革するビジネスを生み出す集団にしていきたい

機能開発に関しても部署に関係なくディスカッションを行っている
機能開発に関しても部署に関係なくディスカッションを行っている

ネットプロテクションズは、メンバーが社会に変革を起こせるビジネスリーダーになることを目指しています。
ビジネスをアーキテクトすること、つまり構造的かつ緻密にビジネスを設計していくことが“いいビジネス”を作る条件と考えるので、全員がビジネスアーキテクトとなる必要があると考えています。

そのためには、緻密かつ繊細にバランスのとれた設計に対するセンス=勘所と、それらの必要性に対する認識が必要になってきます。
そう考えると、会社としてこのようなセンスを養っていくことこそ、私たちネットプロテクションズのIT部門が担うミッションではないかと思いました。

IT、プログラミングはどうしても自分たち=人ではない、「モノ」であるために、馴染みがないと敬遠しがちです。
結果、ITの経験を怠り、そのセンスを手に入れないまま行ったサービス企画は精度の低いものになり、ビジネスフローの構築において抜け漏れや手戻りが発生し、“いいビジネス”を生み出しにくくなってしまいます。

こうした現状を変えるべく、あえて私は部署名を「ビジネスアーキテクト」とすることにしました。

本来、ネットプロテクションズのメンバーはすべて「ビジネスアーキテクト」を目指すべきです。
しかし、IT独特の緻密さ繊細さを伝えられていない現状から一足飛びに目指すのは困難です。
だから、あえて自分たちを「ビジネスアーキテクト」と呼ぶことで“いいビジネス”を生み出すことにIT経験から得られる緻密さが重要なことを自ら発信していく。
「ビジネスアーキテクト」からビジネスリーダーを生み出すことで、ITに携わることでしか得られない視座、視点の重要性に気づいてもらう
という効果を出したいと考えました。

“いいビジネス”を生み出していく集団になるべく、まずは自分たちから緻密なビジネス設計を行っていく。

そして、日々の活動がメンバーに浸透し、ステークホルダーが幸せになれるようなビジネスが次々と生まれる集団となれるよう、「ビジネスアーキテクト」を強い組織にしたいと思います。

鈴木 史朗
執筆者:鈴木 史朗
1996年 IT業界に入り、情報系業務や研究者向け、金融機関のコンサルティングに従事。
   数理モデル化を中心とした分析を推進。
2002年 ネットプロテクションズに入社し、2004年に取締役CTOに就任。
   NP後払いをはじめとする決済事業のモデル構築・設計、及びシステム開発を統括。
   現在はビジネスアーキテクトを輩出する組織の構築を推進。
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