2050年の価値交換を探る〜未来社会を描き、実現を考える〜_THINK ABOUT CONFERENCE『貨幣の束縛』アフターレポートNo.2

2050年の価値交換を探る〜未来社会を描き、実現を考える〜_THINK ABOUT CONFERENCE『貨幣の束縛』アフターレポートNo.2

Words THINK ABOUT 編集部

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2018年10月30日、THINK ABOUTが主催する初のカンファレンス『貨幣の束縛』では“貨幣”を起点に信用や価値、そして未来の社会構造を実践者や研究者らと共に考えた。

これまで、「信用」や「価値」を媒介する存在として貨幣が使われていたが、テクノロジーの進展により変化が訪れている。パネルディスカッション「2050年の価値交換を探る〜未来社会を描き、実現を考える」では、2050年という予測不可能な超未来における貨幣の役割、信用や価値交換のあり方や、ひいては社会の姿について、スピーカーとともに考えた。

モデレーター
シンクタンク・ソフィアバンク
藤沢 久美
国内外の投資運用会社勤務を経て、96年日本初の投資信託評価会社を起業。2000年シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表。政府各省の審議委員や日本証券業協会などの公職に加え、豊田通商など上場企業の社外取締役なども兼務。1000社を超える経営者インタビューやダボス会議との連携を通じて、国内外の官民協働支援に取り組む。近著は、『あの会社の新人は、なぜ育つのか』(2018年3月)など著書多数。

スピーカー
慶應義塾大学 SFC 研究所 上席所員・環境情報学部 講師
斉藤賢爾
一般社団法人ビヨンドブロックチェーン 代表理事。株式会社ブロックチェーンハブ CSO (Chief Science Officer)。1993年、コーネル大学より工学修士号(計算機科学)を取得。2006年、デジタル通貨の研究で慶應義塾大学より博士号(政策・メディア)を取得。主な著書に『信用の新世紀 ─ ブロックチェーン後の未来』(インプレスR&D)。

READYFOR株式会社 代表取締役CEO
米良はるか
1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役CEOに就任。これまでお金が流れていなかったところにお金を流す、新しい仕組みを構築した。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会義」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

事業家・思想家
山口揚平
早稲田大学政治経済学部。東京大学大学院修士。1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010年に同事業を売却。現在は、コンサルティング会社をはじめ、複数の事業・会社を運営する傍ら、執筆・講演活動を行っている。専門は貨幣論・情報化社会論。

価値の付け方は個人によって異なる

ディスカッションは、参加者がリアルタイムに書き込みができるアンケートアプリを使って行われた。最初のテーマは、「価値とは何か」。参加者からは「信用」「他者への貢献」「感謝」「愛」など様々な意見が寄せられた。

藤沢:まず、価値とは何か、パネリストの皆さんの意見をお聞きしたいと思います。斉藤さん、いかがですか。

斉藤:私も価値ってなんなのかわからない状態なんですが、まず浮かんだのがアメリカで使われる英語の「Value」です。バリューパックとか、ファミリーバリューとか言われる、この場合のValueの意味は、お金を使わないことなんですね。これが今の貨幣経済における価値をよく表していると思います。

慶應義塾大学 SFC 研究所 上席所員・環境情報学部 講師 斉藤賢爾氏

私は、お金が生まれたおおもとには、複製技術があると思っています。現在はお金を出して複製を買おうとしていますが、今後さらに技術が発達してふんだんに複製が作られるようになれば、複製は「お金を出して買うもの」ではなく「掴んで取ってくるもの」になる。今は、自分が持っていないものを手に入れるためにお金で買う必要がありますが、今後は誰でも欲しいものを自分で手に入れられるようになり、購入する必要がなくなると思います。

藤沢:ある意味、原始時代に近いような形ですか?

斉藤:そうです。未来のモデルは狩猟採集社会だと思っています。だから、お金で買えないものにこそ本当の価値があるのではないかと。

藤沢:ありがとうございます。山口さんはいかがですか。

山口:価値という言葉には色々な使い方がありますが、自分にとっての価値という意味でいうと、幸福のことだと思います。幸福とは、シンプルに一体性のこと。期待と実態の一体化や、自分と相手が繋がって一体となることに価値があるのかなと思います。孤独でないことですね

藤沢:なるほど、ありがとうございます。米良さんはどうですか。

米良:価値って何なのか、難しいですね。思いついたのが、インターネットの普及によって以前は価格をつけられなかったものに対して、個人が価格づけできるようになったということです。クラウドファンディングをしていても、例えば誰かの手紙が、その手紙のストーリーを持っている人にとっては高い値打ちのあるものになったりとか。これまでの需要と供給によって価格が付いていた世界から、もっとパーソナルな価値に基づいて値段をつけられる世界になっているので、市場での価値を計るのがどんどん難しくなっていくだろうなと思います。

ただ、今はお金という基準があるから「これは1万円だな」とか決められるわけで、もしこの共通のお金という概念がなくなってしまったら、人は何を基準として価値を判断するようになるのか疑問を持っています。お金に代わるものが出てきて、同じような機能を果たすようになるのかなとか、色々考えたいと思っています。

藤沢:ありがとうございます。確かに「価値」という言葉の定義が難しいですが、今までのお話の中で、何か対価を払ってでも手に入れたいものに価値がある、というのが見えて来たと思います。これまでは、そういった価値あるものを手にするためにお金を使ってきましたが、今後は何を使うようになるんでしょうか。

信用や時間や労働が、価値を計る新たな基準になる

会場では、「今後お金は価値交換の主役ではなくなるか」という問いに対し、47人が「主役じゃなくなる」と回答、26人が「お金が主役であり続ける」と回答。「お金に代わって何が主役になるか」という質問には、感謝、時間、愛、労働、関係性、信用など様々な意見が寄せられた。

藤沢:いろいろ出てきていますね。この前のセッションでも、働くことの価値についての話が出ていましたが、皆さんは労働や時間に対してはどうお考えですか?

山口:私は、仕事の意義は労働ではなく貢献だと思っています。人間は個性があるから、本来みんな違う。でも、労働はコモディティ化(大衆化)していて、個別の違いを出すことができない。個別の違いを出して社会に貢献できることが、個人にとって一番幸せだと思います。

藤沢:じゃあ、自分の時間を提供することは、労働じゃなくて貢献?

シンクタンク・ソフィアバンク 藤沢 久美氏

山口:時間は、使い方次第で労働にも貢献にもなります。だからこそ、今後は時間を労働ではなく貢献に使うべきだと思うんです。どんな貢献をするにしても時間は不可欠なので、「どのくらい時間をかけたか?」ということが価値を計る上で一つの尺度になるのかなと思います。もちろんなにか行動をしなくても存在自体が仕事になる人もいます。

斉藤:労働が貢献になるという部分については、私も同じ考えです。お金と労働がセットだとすると、2050年にはお金とともに労働も消え去り、人々は貢献するようになる。さらに言うと、全ての組織がNPO化すると考えています。

NPOは、ミッションの実現のために人が集まって行動する組織です。NPOで活動する人々の目的は、金銭ではなく自己実現なんです。私は、担当している大学での「NPOの経営」の授業で、NPOのマネジメントは参加する人の自己実現をサポートすることが重要だと話しています。全ての組織がNPO化すれば、金銭を得るための労働ではなく、自己実現のための貢献に時間を使うようになります。ミッションの達成を通して得られる自己実現のために、人々がNPOで社会に貢献するというのが、お金がなくなった2050年のイメージですね。そういう風にできたらいいなって。

米良:斉藤さんがおっしゃったことには私も全く同じ意見です。ただ、NPOのお手伝いをする中で、個人の自己実現のサポートをやりすぎて、組織自体のミッションに向かえなくなっている組織もあると思っていて。NPOの本来のミッションに向かって進めるような体制づくりも重要だと思います。

それから、時間だけが尺度になるのではないと思いますね。貢献の仕方にもいろいろあると思うんです。自分の時間は提供できないし労働もできないけど、お金なら出せるという人もいます。必ずしも時間だけで計るものではないのではないでしょうか。

藤沢:なるほど、時間を提供できない場合はお金で解決する場合もあるだろうし。他に価値交換の主役に代わるものについてご意見ありますか。山口さん?

山口:難しいですよね。ただ僕は、社会がモノソサエティ(単一的)になることが怖いと思っていて、会社や住む場所や、家族など様々な局面で自分の価値観に合ったコミュニティを選択できるようになるべきだと思っています。これから益々どのコミュニティに属するのかが大事になってくる。僕自身、仲間に入りたいと思うコミュニティにお金を使っています。これまでは持っている資産の中でお金が上位にありましたが、お金よりも所属するコミュニティや、そこで得られる知識、所属するための信用が重要になってくるでしょう。

事業家・思想家 山口揚平氏

ですから、知識と信用ある若者は、あまり現金化しないほうがいいと思っています。クラウドファンディングなどによって、人物の信用や関係性がお金に変えやすい世界になっています。信用の「換金率」がどんどん高くなって来ていて、信用のATMからどんどんお金を引き出せるというような。

じゃあ信用をどう貯めるかっていうと、貢献することです。ある本によると、貢献=(専門性+確実性+親和性)/利己心という方程式があるそうです。この4つを通して他者に貢献し、信用が溜まっていきます。そして、貢献するための専門性は時間によって培われ、その時間をもつためには健康が必要になる。このことから私は、人間の持っている資産は順に、お金、信用、貢献、時間、健康という流れで表すことができると考えています。今後は、それぞれの変換率をどう調整するかが重要になると思います。実際、僕は信用が大事だと思ってやっていったら、変換率を間違えてお金がなくて大変な思いをすることになりました。資産をどのような形で蓄積するべきか、考えていかなければいけないと思います。

貨幣は形骸化し、信用の貯蓄が重要に

藤沢:今、お金がなくなるんじゃないかとか、お金ではなく信用や時間資本主義などの軸ができるのではないかという話がある一方で、将来を考えたら現金もまだ手元に置いておかなきゃいけないよという話も出ました。これを踏まえて2050年のことを考えると、私には貨幣も、信用も、時間も健康も存在し続けていて、その割合が代わると言っているように聞こえてきますが、斉藤さんは2050年の状態をどうお考えですか。

斉藤:割合が変わるということだと思います。お金というのは、石のお金のようなものも含めて考えると、発明された当時は今のような形ではありませんでした。2050年もお金は存在し続けるけれども、違う役割を持つようになると思います。2050年には、AIやロボティクスなどの技術が進むことで、生活を営むのに必要な資源がふんだんにある状況が実現されるでしょう。そうすると、自分の生活や楽しみのためにお金を使う必要はなくなるけれど、例えば国家としての秩序を形成するためや、人を集めるために使われるものになるのではないでしょうか。誰かのアイデアに賛同した時に、賛同した証拠として受け取るものになるとかですね。現在のお金が持っている「価値を計量する機能」は失われ、別の役割に使われることになると思っています。

藤沢:なるほど、役割が小さくなった道具として現金通貨が残っていくんじゃないかと。米良さんはどうお考えですか。

米良:少し話がずれちゃうかもしれないんですけど、私は去年悪性リンパ腫という病気になって、半年くらいお休みしていたんです。夜9時くらいに診断されて、そこから病気の詳細や治る確率、専門医のことなど理解したいと思い、これまで関係があったいろいろなお医者さんや知人に連絡しました。すると深夜12時ごろまでには、専門医や診療方法、治癒の確率などの情報が集まってきたんです。いろいろな人が最も良い情報を教えてくれたおかげで、権威と言われる先生に診てもらい、病気を治すことができました。

READYFOR株式会社 代表取締役CEO 米良はるか氏

その時、これまでREADYFORをやってきたことが、ある種の信用の蓄積になっていたことに気づいたんです。自分が本当にピンチの時命を救ってくれるのは、お金ではなく人の信用なんだと感じました。

クラウドファンディングも、使っていただく方は何かに挑戦したり事業を立ち上げようとしている、本気のタイミングなんですよね。そこで一番大切なのは、それまでの人生でどれだけネットワークができているか、自分がどんなことをやってきたのかなんだと思います。それが信用になって、たくさんの人に応援してもらえる。

今後は同じように、これまで狭いコミュニティの中でしか見えなかった信用というものが、インターネット上のツールを介して可視化されて、貨幣を上回る価値になっていくんじゃないかと思います。

藤沢:ありがとうございます、すごく具体的な良いお話をしていただいたと思います。信用を積み重ねてきたことによって、助けてもらい貨幣の価値とは違うものを得ることができた。一方で、お聞きしていると信用は、もちろん毀損することはあるんだけど、貨幣化しないで置いておいたほうが価値が大きいのではないかという気もしてきます。信用や貨幣の役割は、今後どういう形でどういうバランスに変わっていくのか、洞察はありますか。

山口:昔の日本経済は複利の法則があって、お金を持っていれば増えていました。しかし今後は複利効果があまり期待できない。ですから直感的ですが、お金よりも信用を持っていた方が、ネットワークを介して増幅していくのではと思います。

藤沢:確かに、今後知識社会になっていく時に、おそらく通貨が安くなり、資本財も伸びないだろうと予想できる。だから信用の方が増えそうだというのは、私も直感的に賛成できます。でも、多分会ったばかりの人には信用ってないですよね。信用を貯める、増やすためには何が必要なんでしょうか?

山口:コミュニティは必要だと思いますね。僕のように小さな事業者でも、関わっている会社や、その社長を介して財務をやっている人たちと繋がっていく。あるコミュニティのボスは他のコミュニティのボスとも繋がっていますから。ハブを中心に繋がり、信用が増幅していくのは間違いないと思います。

ただ、資産を信用に代えて過ぎてしまうと本当にお金がなくなってしまうので、結局はバランスですよね。2050年においても、その時代に最適な資産のバランスを取るのが大事だと思います。

既存の共同体が独立し、貨幣を発行する時代へ

藤沢:現金なのか信用なのか、資産の中でも手元に残すものの割合が変わって多様化していくんですね。一方で、貨幣の役割はどう変化していくか、斉藤さんはどうお考えですか。

斉藤:個人が自分のミッションを人と共有するときに、自分の信用に基づいて貨幣を発行できるようになると思います。「星の銀貨」という話で、最後に空から無数の銀貨が降ってくるシーンがあるんですが、これが現実になるんじゃないかと思っています。例えばクラウドファンディングですね。ただ、有名人ならやろうと思ってすぐに無数の銀貨が降ってくるかもしれないですけど、私のような一般人がやると、一人一人にお願いした結果として銀貨が降ってくる。人間関係を銀貨に替えているようなものですね。そして、なぜ銀貨が降ってくるかというと、その人も誰かのために銀貨を降らせているような人だからです。そして、どういう人に銀貨が降ってくるかというと、自分も誰かのために銀貨を降らせているような人だからだと思います。つまり、自分がこれまで他の人たちのために銀貨を降らせるようなことをやってきたことが、間接的に銀貨を降らせているんですよね。そういう世界観を技術として支えられると考えています。

藤沢:なるほど。個人がそれぞれの通貨を発行できるようになった時、個人同士が通貨を交換する時の基準はどうなるんでしょうか?

斉藤:基準は、最終的にどうでも良くなるだろうと思っています。というのは、資源がふんだんにある状態になれば、欲しい物は手に入るようになるから、お金で価値を計量する必要がなくなる。ものを手に入れるためではなくて、例えば人助けのために使うとか、自分に恩恵が回ってこなくても心の満足を得るためにお金を使うような世界になるんじゃないかと思います。

藤沢:先ほど、会社はお給料を得るのではなく、自己実現のための存在になるというお話もありましたが、そういった組織や今お話されたような世界へ、一体何が起きて変わっていくんでしょうか。NPOやそこで働く人が増えて、少しずつお給料より自己実現に価値がある社会に変わっていくのか、それとも何かトリガーとなるようなことが起こりうるのか。どうお考えですか?

 

山口:現在の会社や組織が、徐々に独自の経済体を築くようになると思います。法律や教育、生活保障や貨幣の発行など、国が行なっていた機能を会社や組織などコミュニティが代替するようになるということです。外部に対して価値創造して外貨を稼ぎ、社内で分配するようなベーシックインカム制度が実現されて、会社単位で経済体ができていく。そうやってできていった経済体の中から自分の所属しやすいところ、ミッションに共感するところを選んで、自己実現のために貢献するのが一番幸せな生き方じゃないかと思いますね。

分配されている給料と自分のエネルギーを天秤にかけながら、どのコミュニティに所属するのがより幸せかということ考え、様々なコミュニティを渡り歩いていく。コミュニティとの関わりの中で、自分の資源をどう増やし、どんなキャリアを描くのかも考えられるようになると思います。

米良:通貨の話に少し戻るのですが、私は経済体が独自の通貨を持てるかどうかに疑問があります。これまで、私の親の代は終身雇用の社会の中でずっと生きてきて、その親から生まれた私たち子ども世代も、ほとんどが大企業で働いています。自分でコミュニティを選ぶというよりも、大企業などに入って当たり前に給料をもらえることに安心して働いている人が多いと思うんです。仮に共同体が通貨を発行したとしても、発行元である小さなコミュニティを強く信じていける人ってそんなに多くないんじゃないかと。そうなると、みんなが安心して信じている日本の発行する通貨の方が、強い価値を持ってしまうんじゃないかなと思ったんですが。

斉藤:それでいうと、独立するためにはある程度の規模は必要ですね。2000人くらいの規模の共同体を作ると、独立できる可能性があると思います。食料とエネルギーの生産が自前でできて、他にもいろんなことをやっている企業体があれば、可能性としてはあるんですね。

山口:最初の基調講演でもお話ししましたが、通貨の本質は信用と汎用性の掛け算です。ですから確かに、地域通貨や企業のポイントなどで既存の通貨を凌ごうとしてもうまくいかないんです。国民国家が発行する円やドルに敵うわけがないですから。でも、それと仮想通貨による資金調達(ICO)とはまた別の話です。僕は、ある経済体が株式のように資金調達のためにトークンを発行し、既存の通貨や仮想通貨などの形で資源を得ることはできると思っています。

2050年に向けてアクションを

藤沢:通貨は全くなくなるのではなくてその役割が変わるというお話や、信用やどんなコミュニティに属するのかが重要になるというお話など、さまざまな意見が出ました。今回は、評論家チックに予想するのではなくて、2050年に向けてじゃあ自分はどうするの?ということを考えたいと思います。最後に、皆さんに2050年の社会に向けて何をしていかれるのかお聞きしたいと思います。

山口:僕は事業の創造を通して、国の産業の創出にコミットしたいと思います。僕が行いたいのは、あらゆる人が孤独でない社会を作ることです。僕は、人間とは「情報に吸着した意識の集合体」であり、関係の中にしか存在できないものだと考えています。ですから人が生きていくためには、孤独な状況を作ってはいけません。今後、技術の進展と社会の変化に伴い、階級社会やAIによる支配などのディストピアが出現する可能性があります。変化していく貨幣や新しい技術が、人と人との関係性を分断するようなものにならないよう、より良い使い方を考えていきたいです。

米良:私は、お金が流れたら社会全体がより良くなるところを見極め、その部分に適切にお金を流せるモデルをテクノロジーを使って作って生きたいです。クラウドファンディングもそのモデルの一つ。お金の領域で資本主義の課題を解決していきたいと思っています。

また、クラウドファンディングでプロジェクトをやることは、信用を貯める手段になりうると考えています。プロジェクトに取り組み、成果を社会に還元し、助けてくれた人たちにお礼することができれば、個人の評価は上がります。プロジェクトを行う中で起きる出来事を、個人の信用や評価に回せるよう、積極的にチャレンジしてもらえるようにしたいです。

斉藤:3年後に地球のどこかでお金を消し去るというビジョンに向かい、必要な技術の開発を進めていきます。そうすることで、30年後の社会に備えられるようにしたいです。2050年までに大事だと考えているのは投資ですね。お金が現在の機能を持っているうちに、長い将来価値を生み出し続けるものに私自身投資していきたいと思いますし、皆さんにも考えていただけたらと思います。自分にとって、一番長く続くものは何でしょうか。それは自分ですよね。なので、まず自分に投資すること。自分の寿命を超えて長く続くものもあります。子どもたち、次の世代ですね。その意味でも、ぜひ子どもたちや若者たちへの投資をいただければと思います。

藤沢:ありがとうございます。2050年の価値交換の主役は、相変わらず通貨なのか、信用なのか、時間なのか。個人がそれぞれのバランスを考え、資産を調整していく時代になるというお話もありました。皆さんも、2050年の価値交換において何が重要なのか、どういう行動をすればその世界が実現するのか、考えてみていただければと思います。ありがとうございました。

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