衰退の先にある、イタリアの豊かな暮らし

衰退の先にある、イタリアの豊かな暮らし

1990年代までは、イタリア人の楽観的なまでに人生を謳歌する感性を羨ましいと感じながらも、そこに何かしらの未来を見出すのは難しかった。あれから数十年、日本より早く成熟社会に入ったイタリアではいま、衰退の先にある新しい幸せの風景を描き始めている。

Words Miki Tanaka

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“地方創生”の掛け声のもと、日本でも地域の活性化に本腰を上げる地方都市が急増した。しかし、日本では近い将来、少子高齢化による人口減少が必ず起こる。それでも、“活性化”しなければいけないのだろうか。世界を見渡せば、こうした現象はあちこちで見られ、衰退を経験した後、豊かな暮らしを手に入れた街も少なくない。通行量や居住者数、事業者数だけでは測れない、ロマンティックな物語が、人を、街を、再生させるとしたら……。そんな取り組みを行う一企業がイタリアにあると聞き、ウンブリア州ペルージャ県のソロメオ村に向かった。

村の人口は約500人。うち250人ほどがブルネロ クチネリ で働き、村民のほとんどが同社の関係者だという。

フィレンツェからクルマで約2時間。長閑な田園地帯のなかに、住居が疎らに点在するソロメオ村が見えてくる。今回の目的地である「Brunello Cucinelli S.p.A.(ブルネロ クチネリ)」の本社屋は、その豊かな自然に溶け込むように佇んでいた。丘陵地には、同ブランドの直営店や職人学校、劇場なども見える。

高級カシミヤセーターで世界的に知られるブルネロ クチネリは1978年に創業。ペルージャ近郊の50平方メートルの一室からスタートしたが、その圧倒的な美意識と職人技を大切にした上質なつくりで名を馳せ、85年に創業者兼CEOのブルネロ・クチネリ氏の故郷であるソロメオ村(正確には、クチネリ氏は近郊の村出身だが、ここにはパートナーのフェデリカさんの実家があり、婚約時代から通い詰めたゆかりの地)に本社の移転を決めた。全世界に約1,700人いる従業員のうち、ここで働くのは1,000人ほど。わずか人口500人だった村で、クチネリ氏が始めた挑戦はどのように進められたのだろうか。

丘陵地に立つ教会を前にした、創業者兼CEOのブルネロ・クチネリ氏のファミリーの記念写真。左端が本人。

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