インドのトイレを変えた老婆の信念

インドのトイレを変えた老婆の信念

2014年5月、インド北部の小さな村で、5人の男に集団レイプされた14歳と15歳の少女が自殺するという痛ましい事件が起きた。夜遊びするような場所もない保守的な田舎の村で、若い女性が夜遅く外にいたのはなぜだったのか?

Words Chihiro Oka

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ふたりはいとこ同士で、夜遅くに外を連れ立って歩いていたところを連れ去られて暴行を受けた。だが、そんな遅い時間に、若い女性が屋外にいた理由はあまり知られていない。ふたりは“トイレ”に行こうとしていたのだ。

インドでは特に農村部でトイレの普及率が低い。10年ごとに行われる国勢調査では、全国の2億4,700万世帯のうち、何らかのトイレ設備がある家は46.9%だった。これは2011年の数字だし、もちろん都市部と農村部では大きな差がある。しかし、平均すればインドの一般家庭の半分にはトイレがないことになる。当時はトイレというものがひとつも存在しない村というのがざらにあり、人々は藪や河原など人目につかない場所まで行って用を足していた。

屋外排泄には衛生面の問題だけでなく、野生動物や毒ヘビに襲われるといった危険が伴うほか、女性にとっては別の大きなリスクもある。田舎では、夜間に用足しのために外に出た女性がレイプの被害に遭うという事件がよく起きていた。

自殺した少女の母親。

自殺した少女の母親。少女たちはいずれも「ダリット(不可触民)」という最下層の身分の出身で、警察当局は当初、家族が出した被害届を無視したとされる。Photo by Burhaan Kinu/Hindustan Times via Getty Images

事態を重く見たモディ政権は14年10月、「スワッチ・バラート(クリーン・インディア)」というキャンペーンを立ち上げた。1.96兆ルピー(約3兆円)を投じて一般家庭でのトイレの設置や公衆トイレの整備を進め、独立の父マハトマ・ガンディーの生誕150周年に当たる19年までに屋外排泄の根絶を目指すというのだ。しかし、長年の習慣を変えさせるのは難しく、地方ではトイレの普及は遅々として進まなかった。

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