いま、一人ひとりが力を発揮するためのヒントを、一冊の本に見つける—— 『VISION DRIVEN INNOVATION』

いま、一人ひとりが力を発揮するためのヒントを、一冊の本に見つける—— 『VISION DRIVEN INNOVATION』

世界を覆うコロナ禍は、経済はもとより人間の基本的な生活に深刻な被害を与えている。人と人との物理的なつながりが奪われたいまこそ顧みられるべき個人の力は、どのように発揮されうるのだろうか。「ひとりの妄想で未来は変わる」との表題が与えられた著作に記された言葉と、著者・佐宗邦威氏へのインタビューから読み解く。

Words Sota Toshiyoshi Photos Kaori Nishida

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自分の内面を掘り下げること

ソニーでの新規事業創出プログラムの立ち上げをはじめとする活躍で知られるビジョナリー、佐宗邦威。現在、共創型戦略デザインファームBIOTOPEを率い、デザイン思考を武器に商品開発やリブランディングに取り組んでいる彼が、2019年3月に上梓した書籍『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社)は、発売1カ月で8万部を突破するベストセラーとなった。

そして2019年12月には『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』(日経BP)を上梓。いずれの著作においても佐宗氏が強調するのは、プロジェクトを自分ごと化できる個人の存在と、その個人が発揮する妄想や直感といった“右脳”的な要素の必要性だ。

「書籍のテーマとして共通しているのは『ビジョンをつくる』こと。そして、一人ひとりがもっている“内面の妄想”こそがビジョンになっていくと思っています。そのための実践的な方法論を思考したのが、『VISION DRIVEN INNOVATION』です」と佐宗は言う。

『VISION DRIVEN INNOVATION』の序章では、「創造と変革の36の智慧」と題した見開き2ページで36個の具体的な「智慧」が挙げられている。

ここで佐宗は、ビジネスをかたちづくる組織をそれぞれ「生産する組織」「創造する組織」のふたつに分類。特に後者を「これからの時代に必要な組織」とし、組織に属する個人20個の具体的な処方を挙げている。

20個の項目は、実に細かく、具体的なものばかりだ。例えば、組織を越えて仲間をつくるために「①空き時間を利用して外に出る」「②勉強会や研修を仲間づくりの場にする」ことから始まり、スケールアウトするのに必要な意義(ビジョンと言い換えられるかもしれない)の伝導のための「⑲トップによる意義の啓蒙」「⑳ツールやノウハウの共有」まで続く。

「この本では、デザインのもつ役割として、“内面を掘り下げ、自分自身を知っていくための機能”を求めることもできるのではないかと提案したかったんです」とも言う佐宗。

日本にデザイン思考を紹介したひとりでもあった佐宗は、自身の発想の根幹にあるものとして、ユング心理学への傾倒とシンギュラリティ大学での体験を挙げる。

「デザインという作業は、突き詰めていくと自分の内面との対話のなかで生まれてくるものです。もちろんアウトプットはコミュニケーションの結果として表現されますが、コンセプトそのものが個人的なプロセスから発生したほうが、いいものができると思っています。

自分の潜在意識と自分を取り巻く現実を結び付けていくことで、その人らしさが浮き彫りになり、そこに独創性や固有性といった創造性の源泉が見つかる。これって、すごくユングの考え方に近いと思うんです」

佐宗がかつて学んだシンギュラリティ大学は、アメリカ西海岸に存在するインキュベイション機関兼教育機関だ。「シンギュラリティ」という概念そのものを提唱した未来学者レイ・カーツワイルと、X Prize財団の創設者でシリアルアントレプレナーのピーター・ディアマンディスによって創設されたこのプログラムでは、参加者はAIやロボティクス、デジタルバイオロジーをはじめとする先端分野の世界的な専門家と直接議論しながら、人類が抱える大きな課題について思考を深める。

「それまでデザインを仕事にしていたので、“人に寄り添う”という基本哲学のもとで動いてきました。対して、シンギュラリティ大学の科学者たちのアプローチは、見えない未来を想像しながら人を巻き込み研究を進め事業化するというもの。

そこにいるデザイナーは、プロトタイピングなどのアプローチを使って、その見えない未来をかたちにしていくんですね。自分が学んできたデザインの世界とはまったく異なる世界でしたが、そのとき感じた面白さは、自分にとって大きな糧になっています」

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