「いい人生は、如何に自分でデザインしていくか」 ~一元的な価値観が通用しない現代に思う、人生の選択~

執筆者: 河西遼
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「いい人生は、如何に自分でデザインしていくか」 ~一元的な価値観が通用しない現代に思う、人生の選択~

執筆者: 河西遼

私は今年の4月に、ネットプロテクションズ(以下、NP)で新卒4年目を迎えました。新規事業として「NP後払いair」の立ち上げ責任者を経て、自ら異動希望を出し、現職の人事企画に至ります。
「人の感情のメカニズムや、最大幸福のための社会設計について考えていきたい」と日頃から考えている私ですが、(この背景についてはこちらの記事から )今回は理想的な「人生の選択」についてお話しできたらと思っています。

世で言う普遍的な「成功」は、消えつつある

誰にとってもいいと言える人生とは、どのようなものでしょうか。私はごくごく単純に、理想的な人生とは、当人にとって最も幸せな人生のことを指す、と考えています。それは言い換えれば、生涯幸福度が最大化された状態と言えます。社会的に捉えてみても、個々人の生涯幸福度が満たされ、その総和が最大化されることが理想だと考えています。(格差はどこまで許容されるべきか、対象は人間のみでいいのか、などの論点が多数あることは承知していますが。)
そう考えると、人生におけるあらゆる選択は、当人の生涯幸福度の最大化のための手段として捉えられます。この記事では、そうした理想的な人生選択の実現に向けた具体的な方法として「自分の欲求を知ること」と「社会を知ること」、そして「ポートフォリオを組むこと」をご紹介したいと思います。

具体的な方法について話を進める前に、そもそもなぜ今、人生の選択の仕方について改めて考える必要があるのか。これまでの時代においては、産業革命以降、日本の高度経済成長が象徴的であったように、上手く経済成長の波に乗れていれば、人も社会もよりよい方向に向かえる時代だったと言えます。しかし工業の発達が飽和し始めたころから、「経済的な合理性」と「世の中に提供する価値の大きさ」、「それを提供する人々の幸福度」の3つのベクトルが徐々に一致しなくなってきているように思えます。私たちは、経済の波に乗れば幸せになれる、といった一元的な価値観が通用しない時代を迎えつつあるのでしょう。特に昨今は、IT産業の発達などに伴って社会変化が高速化し、未来の予測可能性が極めて低くなってきています。そのような時代背景の中では、それまで世で言われていたような、普遍的な「成功」という概念は存在しなくなり、むしろそれを求めていては、社会の荒波の中で幸せを実現することは困難になります。だからこそ、「自分なりの」理想的な人生を模索していく必要があるのです。

Young boy exploring nature in a meadow with a magnifying glass looking for insects

自らの欲求について、仮説検証し続ける

一元的な価値観では立ち行かなくなってきている現代において、私たちは「自分がどういう状態であれば幸せなのか」を知らなければなりません。それはすなわち、自らの欲求を知ることです。人の幸せとは、結局のところ簡単な話で、当人が持っている欲求が満たされている状態のことだと考えています。この欲求は、ご飯を食べたいだったり、人に認められたいだったりと、一人でも複数の種類を抱え持っていて、かつそれらが絡まりあっているものです。
これらの欲求がすべて100%満たされるのが究極的には理想でしょうが、人間の時間は有限であり、かつ時間を投じて獲得したひとつの経験によって、すべての欲求を同時に満たすことは困難です。このような制約が存在するからこそ、「いかに時間を投下するか」という、人生選択の必要性が生じるのです。この構造は、ざっくりとこのように表せるでしょう。

欲求:f(x)
経験:X
ある特定の感情:Y
とした時、
Y=f(X)

感情の中でも、今回は幸福度のみに着目し、最大化することを試みます。そうすると、制約条件がある中で幸せを目指すために、まずは自分の欲求を知り、その上でどの経験を獲得するかを選ぶ必要があります。
では、どのように自分の欲求を知ればいいのか。そのためには、常日頃から経験(=X)と感情(=Y)の関連性のデータをため続ければいいのです。獲得した経験と、その際に沸き起こる感情の組み合わせのパターンを蓄えて、それらの関連性についての内省を、常に心掛けます。そうすることで自分のもっている欲求がどのようなものなのか、仮説を立てて、ブラッシュアップしていくことができるのです。

例えば、新卒で就職活動を経験した方々は、「自己分析」と呼ばれるものを行ったことがあるかと思いますが、一般的な「自己分析」では、これまでの20年前後の人生の中から、特徴的な経験を選びとって、せいぜい5つ程度のエピソードから、自己の本質をあぶり出そうとすることが多いでしょう。しかしそれでは、経験と感情の関連性のデータが圧倒的に足りていません。実は、特徴的なごく少数の経験に着目するよりもむしろ、日々の些細な経験の中で揺れ動く、細かな感情の機微を捉まえて、内省を繰り返すことのほうが、飛躍的に自己分析の精度を高めるです。

genervter schüler zwischen bücherstapeln

経験をマネジメントして、幸せに近づく

自分の欲求を知ったら、次に経験をマネジメントしていきます。社会を知ることは、そのために必要となってきます。なぜなら、望み通りの経験を得られるかどうかには、自分を知ることとは異なり、外部環境というアンコントローラブルな要素が含まれるからです。この構造はざっくりとこのように表せるでしょう。

社会のメカニズム:g(a,b,t)
外部環境:A
行動:B
時間:T
経験:X
とした時、
X=g(A,B,T)

行動は自分でコントロールできますが、外部環境は度合いの問題ではあるもののコントロールしにくいものであるため、その仕組みを理解して、自分が求める経験を獲得できるようにすることが、つまり社会を知るということです。
では、どのように社会を知ればいいのか。大切なのは、社会の裏側にあるメカニズムを、どれだけ大局観と緻密性を合わせ持って見ることができるかです。それは一般的な言葉で言えば、リベラルアーツのようなものです。世の中は、宇宙や自然の原理法則の上に地球環境があり、その上に国家、次に組織、そして個人がいるというように、レイヤー構造になっています。そして上部のレイヤーは、より下部にあるレイヤーの影響を確実に受けるような仕組みとなっています。さらに上下の関係だけでなく、国家間のインタラクションなどといったように、同レイヤー間の関係性も存在するので、相互に絡んだメカニズムをミクロ・マクロの視点を合わせ持って見る必要があります。
また、その相互に絡んだメカニズムを現時点のスナップショットとして捉えているだけでは、全く意味がないものになってしまいます。人生を通じての幸福度の総和を高めなければ「いい人生」とは言えないのですから、時系列でのメカニズムの変容(ダイナミズム)も意識しなければなりません。
大局観と緻密性を合わせ持って社会のメカニズム・ダイナミズムを知ることで、「どのような環境に自分自身をポジショニングし、どのような行動を起こせば、どのような影響が巡り巡って自分に返ってくるのか」と仮説を立てられるようになり、経験をマネジメントできるようになるでしょう。

Culture Community Ideology Society Principle Concept

理想で片付けないために、ポートフォリオを組む

いい人生のために、すなわち生涯幸福度の最大化のために、理想的な「人生の選択」の方法論をここまで説明してきましたが、あくまでこれらは理想論に過ぎません。なぜなら、いずれも解に辿り着くことが非常に難しいからです。そもそも自分で自分を正確に認識することは難題ですし、かつ人とは変わりうるものなので、今後の変化についても予測困難でしょう。社会にしても、1、2年後の絵姿や、もしくは逆にものすごく長期スパンのトレンドなどなら読むことはある程度可能かもしれませんが、5年、10年先を読めと言われると難しい。VUCA という言葉がありますが、高度経済成長期・バブル期を超えて重厚長大産業が停滞する一方で、テクノロジーの飛躍的な進歩に伴って生じる、突発的かつ連続的なイノヴェイションが社会をけん引している現代は、益々予測困難な時代になってきています。
そのため、やはり大切となるのは、これまでお話ししてきた「自分を知ること」と「社会を知ること」において、如何にPDCAを回すことができるかです。しかし、世の中は完全に自由に仮説検証ができるわけでもありません。例えばビジネスにおけるキャリア選択の場合、採用のシーンにおいては、年次・年齢・経験社数が増すにつれてやりたいことよりできること、ポテンシャルより経験・スキルの方が重要視されるようになります。そのため、過去の経験に引きづられて、未来の選択肢が徐々に狭まっていく構造となっています。

では、どうすれば人生の選択をより正しく導くことができるのか。これはキャリア選択の文脈以外においても言えることなのですが、大事なことはポートフォリオを組むことです。つまり、その時点での仮説の確からしさに応じて、どれだけ未来の選択肢の流動性、選択肢の幅を担保するかをコントロールすることです。仮にもう間違いなく自分のモチベーションの源泉を明確に見出していて、今の世の中ならこのキャリアを歩めば欲求を充たせるのだ、と分かっているのであれば、キャリアチェンジの可能性に対する担保は度外視していいでしょう。ただ、仮説の確からしさが低い場合は、どのようなモチベーションのシフトの可能性があって、それに応じてどのようなキャリアチェンジの可能性があって、その職に就くためには、事前にどのような経験をしている必要があるのか、などを想定しておく必要があります。そうした意図を持った上で、自分に向き合うためのモラトリアムを獲得するために休学して海外に行ったり、大学院に進学したり、ひとまず社会を俯瞰し、ビジネス全般に活かせるポータブルスキルを獲得するためにコンサルティングファームやベンチャー企業、大企業などに入社することは、ひとつの人生戦略としては間違ったことではないと思います。しかし、自分の意思ではなく、なんとなく周りのみんなが言う「成長」や「安定」というものを期待して、そのような選択をするのであれば、時間の浪費、さらには自分の選択肢を狭めることにもつながりかねませんので、オススメできません。そこまで考えられてこそ、いい人生を実現するための、納得感のある選択ができるようになるのではないでしょうか。いい人生は、如何に自分でデザインしていくかで決まるのです。

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執筆者:河西遼
2013年、東大を卒業し新卒でネットプロテクションズに入社。
入社後は新規事業として「NP後払いair」の立ち上げ責任者を経て、自ら異動希望を出し、現職の人事企画に至っている。内に秘めた知的好奇心を追求し、「人の感情のメカニズムや、最大幸福のための社会設計」について日々考えを巡らしている。
今後は会社のミッションと個人の幸せの両立を模索しながら、会社組織の新しい「アタリマエ」を実現していきたいと考えている。
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