ビジネスリーダー創出のため、100%外注から内製チームを設立

執筆者: 鈴木史朗
vol14
vol14

ビジネスリーダー創出のため、100%外注から内製チームを設立

執筆者: 鈴木史朗

ネットプロテクションズ(以下、NP)のIT部門であるビジネスアーキテクトでは、これまで開発を外注で行っていました。2015年からはテスト的に内製を一部開始し、現在ではチームとして内製を行う組織を作っています。

なぜ外注100%で開発を行ってきた状況から、内製を取り入れ始めたのか。

当社ミッションの「つぎのアタリマエをつくる」を目指す上で取り入れた理由をお話いたします。

技術力向上のために採用した外部ベンダーの活用

NPは2000年に設立され、私はその2年後に入社しました。私が入社する以前は単に作る人がいないという理由から外部ベンダーに開発を委託していましたが、内製したほうが早く・良い品質でモノづくりができると考えていたので、私の入社を機に内製での開発に切り替えていきました。

しかし、内製を進めてから3年経過したあたりから、技術力が下がってきたことに気が付きました。

チームが後払い決済という1つのプロダクトのみにしか携わっていないこと、決済という安定性重視の特性という理由から、技術力が高まっていきにくくなっていたのです。
様々なケースに携わっているからこそ、手段にバリエーションがつけられ、ケースに合った手段を採用することが出来ます。またバリエーションがあるからこそ現状ありきではなく、より良い手段を考えられるものです。

この観点においてベンダーは、多くのケースに接触し知見を高めているからこそ、高い技術で早く・良い品質でモノづくりができる。そうであれば、様々なニーズを素早く取り入れつつ、システム規模を拡大すべきフェーズとして最適だろう。そう考え、外注に切り替えていきました。

「外部ベンダー×企画社員」の組み合わせが強力なシステムを作り上げる

外注に切り替えて以降、開発・保守のスピードは高まり、多くの機能もスピーディにリリースしていくことが出来ました。

2015年度には年間の流通金額が1,000億円を突破し、月間の取引件数は200万件を超えるなど、莫大なデータ処理を安定的に行えており、他にもBtoB決済や販促サービスといった新規事業も展開できています。

こうした安定的かつさらなる拡大を実現できているのは、開発・保守においては外部ベンダーの技術力を活かし、企画・設計においてはメンバーの能力を活かすという体制がうまく組み合わさることができたからだと自負しています。

しかし、こうした良好な状況は永続的なものではないのでしょう。新たな問題がチームに生まれてきました。

現場感の希薄化で、かえって技術力が低下

開発・保守における詳細設計からコーディングという現場を外注し、社員は企画に専念する体制にしたことで少しずつ「現場感」を失いつつありました。結果、設計へのリテラシーが低下してしまい、設計部分までも外部ベンターの提案をそのまま受けてしまう体制になってしまいました。プロジェクトマネージャだけは必ず社内で担当することにこだわっていましたが、その体制も形骸化しつつありました。
シンプルなサービス、他にケースが学べるサービスであればそれでもいいのかもしれません。しかし、ネットプロテクションズが提供しているのは構造上複雑になってしまう決済サービスです。さらに、世の中にないカタチ、ゼロベースで生み出した決済サービスであるため、他に学べるケースがありません。もっと言うと、クレジットカードなど他の決済サービスを参考にしてしまうと、わたしたちが作り上げたい決済サービスとは乖離してしまいます。

こうした複雑かつゼロから描かないといけない事業作りにおいては、設計部分においても未来を描きつつ、緻密に作り上げていく必要があると考えています。未来への方向性を設計に反映させると共に、そこにこだわりを持っている必要があるのです。

また、新しく事業を生み出していく上でも「現場感」は重要になります。

ゼロベースで物事を捉え、あるべき理想を描いた事業を生み出していくことが私たちのミッションですが、「現場感」がないと、持てる狭い範囲の手段に縛られてしまい、結果としてありきたりで変革を生み出せない事業しか作ることができなくなってしまいます。

こうした事業作りの肝になりうる設計部分が外部ベンターに任せっきりにならざるを得ない状況、「現場感」を失っている状況には危機感を感じていました。

スペシャリティの向上がビジネスリーダー育成の障害になるという仮説

元々外注に切り替える際、短期的にはスピードと品質の向上が見込まれるものの、事業が一定の複雑性を増した段階では非効率になるだろうと予測はしていました。同時に、「現場感」の喪失、つまり技術力の低下もリスクとして抱えていることは承知の上でした。

想定をしていたことなので、問題が見えてきた段階で内製に戻すことも考えていました。しかし、いざその状況になった際に、容易に内製に切り戻すことにもリスクを感じていました。

理由はビジネスリーダーとエンジニアの文化衝突への懸念です。

ネットプロテクションズは事業を生み出すビジネスリーダーの集団であることを志向しています。一方でエンジニアはその特性として、プログラミングのスキル自体が目的化しやすく、また周囲とのコミュニケーションも疎かにしやすい職種なので、どうしてもビジネスリーダーとの衝突リスクが高まります。また、自らの世界を自然と狭めてしまいがちになるため、エンジニアというキャリアステップを踏むと、ビジネスリーダーへの道のりを遠ざけてしまう傾向にあります。

技術力の低下という問題は把握しながらも、そう簡単には内製に切り戻せないジレンマが続いていました。

一気通貫の開発体制がビジネスリーダーに必須なITリテラシー

ビジネスアーキテクト②
文化衝突というジレンマを抱えながらも、内製化は必須だと考えていました。「現場感」を失うとどうしても技術力が低下し、そこへのこだわりも失っていきます。

それと同時に、IT部門のメンバーだけでなく、ビジネスサイドのメンバーのITリテラシー向上は“いいビジネス”づくりには必須だと考えています。(参考記事:すべてのステークホルダーが幸せになるビジネスを作るために~IT部門を「ビジネスアーキテクト」に変えた想いとは~)

一般的にビジネスとITには大きな垣根があると考えられがちですが、それは幻想であり、両立できるし、両立することでより“いいビジネス”を作れる。そう考えているからこそ、文化衝突というジレンマと向き合いながらいかにして内製化を進めるかが大きな課題でした。

こうしたが状況の中、ある転機が訪れました。新規事業の開発にあたって、立ち上げメンバーが自ら開発を行いたいと言ってくれたのです。

この提案はチャンスだと感じました。と言うのも、提案してくれたメンバーは元々ビジネスサイドで事業づくりに貢献してくれていました。また、新規事業づくりにおいての開発だったので、ビジネスづくりありきの開発になります。こうした状況からITが目的化せず、事業づくりのために開発が行えると感じたのです。

実際、この内製プロジェクトはうまく進んでくれました。事業づくりをベースにしたことで目的を失わず、また初心者に近いメンバーも含めた個々人がそのためにスキルアップをしてくれたことで、これまでになくスピーディかつ高品質に開発が完了しました。実際外注で80人月程度と想定される開発規模を、35人月程度で進めることができました。未来へのベクトルを精緻に実装できたことを考慮にいれると、数字以上の効果があると言えます。

この経験は、ビジネス目的×内製という一気通貫の内製チームを作ることが、社内のITリテラシーを向上させ、“いいビジネス”を生み出し続けられる組織になるための方法であるということが、組織として大きな学びになったと考えています。

内製という体制はまだ始まったばかりです。当初の懸念が完全に解消されたわけではありませんし、技術力の向上は一朝一夕には成就しません。しかしながら、ビジネスとITの垣根がない会社づくりは、挑み続け、思考し続けることで必ず達成できる世界観だと自負していますし、達成することがわたしたちネットプロテクションズの責務であるとも考えています。

だからこそ、ベンダーと有機的にタッグを組み、win-winの関係を築きながら、ビジネスの推進×イケてるITの実現という、本質的な開発効率の向上を進められる組織にしていきたいと思います。

今後もビジネス目的となれるような新しいビジネステーマを生み出し、目的意識を失わない内製チームづくりを行うことで、アタリマエとなる事業を創出するビジネスリーダーの創出を目指していきます。

タグ : 
執筆者:鈴木史朗
1996年 IT業界に入り、情報系業務や研究者向け、金融機関のコンサルティングに従事。
   数理モデル化を中心とした分析を推進。
2002年 ネットプロテクションズに入社し、2004年に取締役CTOに就任。
   NP後払いをはじめとする決済事業のモデル構築・設計、及びシステム開発を統括。
   現在はビジネスアーキテクトを輩出する組織の構築を推進。
この執筆者の記事をもっと見る