「組織をつくらない」という新しい組織づくり  リーダーの失敗経験から得られた新しい考え方

執筆者: 磯部裕樹
vol17
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「組織をつくらない」という新しい組織づくり  リーダーの失敗経験から得られた新しい考え方

執筆者: 磯部裕樹

私は、2016年にネットプロテクションズに新卒で入社し、その後の研修を受けるまでは組織に属するという事は、組織の中の一部の機能に縛られるというイメージを持っていて、そこにつまらなさのようなものを感じていました。しかし研修を通して「柔軟性のある組織」の可能性に触れることができ、私の組織に対する考え方が大きく変化しました。

個性よりも機能が求められた、過去の経験

私は学生時代のアルバイト体験(特に工場で勤務していた経験)から、組織とは個人では成しえない大きな目標を達成するために、個人に「機能」を与えてコントロールする仕組みだと考えていました。

少なくとも、私が所属してきた組織においては、個性よりも機能が求められることの方が多かったように感じます。実際に物事を達成することにのみ焦点を当てるのであれば、個人に対して「どんな性格で、何を考えていて、どんなことを実現したいか」という事よりも、「どんな機能を持っていて、どの位その機能を果たせるのか」ということを求める方が重要なのかも知れません。そのため、個性ではなく機能で評価されていると感じる機会が多かったように思います。

そのような組織の中では、機能を果たすことに一生懸命になりすぎてしまい、目の前にある仕事にのみ注目して、様々な視点を持って物事を見ることを徐々に忘れていってしまうのではないかと考えています。

上記のようなことは組織を作る上で、必要だとは思う一方で、こんなにつまらないことがあるだろうかと感じていました。人々が各々の価値を十分に発揮でき、役割というものに囚われずに動け、且つ組織としての成果も出せる、そのような組織は存在し得るのだろうか、このような疑問をずっと抱いていました。

White jigsaw puzzle

プロジェクトワークで生じた失敗成功

入社後の研修の中でチームのリーダーを務める機会があり、自分で一から組織を作る経験をしました。

メンバーがチームにおいて、やりたいことを見出した上で、各自がその動き方を選択できる組織を作るべく、事前に組織づくり、リーダーシップ、マネジメント等に関する本を読み、リーダーを務めた経験のある人々から話を聞くなどして、準備を入念に行いました。

チームの目指すべき目的は何で、そのために各自がどう動き、何をすればいいかという事を、一から設計して、ファシリテート、進行、タイムマネジメントまで一括して行い、他のチームメンバーが持っている「各々の強みを生かすための組織づくり」に取り組んでいたつもりでした。

しかしそんな思いとは裏腹に、議論をしていく中でチームメンバーの活力が徐々になくなっていくという事態が起きていました。チームとしての意思決定をする重要な場面でもメンバーの反応が薄かったり、メンバー内でおざなりに意思決定が行われているのを感じて、私自身何かが間違っていると感じていたものの、何が違っているか分からず、戸惑っていました。

そんな中、チームメンバーから「チームに貢献できていないと感じていてつらい」という声が上がってきました。メンバーが自分自身で「何をやりたいか」、「チーム内でどう動けばいいのか」分からなくなっていたのです。チーム全員が価値発揮できるような体制を作りたいということを目標に据えて動いていたにも関わらず、程遠い組織になってしまっていました。

 そのような状況からメンバーの動きづらさを解消するために行ったのは、情報が適切に交換される体制を整え、各々が自分の動き方を選択することでした。これまでの経緯の中で不満に思っているポイントを場に出し、各々が会議でどんな感情を抱き、どんなことを考えていたか、について話し合いました。そして、それらをお互いに理解した上で、チーム目標を再設計し、個々人が考えた自分の役割について共有しました。

組織の仕組みがほぼ何もない状態でチームとしての成果を生むことができるかどうか最初は懐疑的でした。けれどもいざ議論が始まると、目標に向かい、各々が行動する中で何をすればいいかをメンバー自ら選択し、状況に合わせてリーダーが切り替わっていく様子を目の当たりにしました。誰がやるかではなく、何をやるかに応じて、組織の在り方が組み代わり、柔軟に方向が決まっていったのです。目の前の課題に対して自分がどう向き合いたいのか、自分で意思決定できる自由を担保した結果、自分の理想とする、 「各々の価値が最大限に発揮できる組織」がそこにはありました。

「組織をつくらない」という新しい選択肢

この経験を通じて、私自身が組織に関して一元的な捉え方しかしていなかったという事に気が付きました。組織では、個人には明確に役割が与えられており、その役割によって個人の行動が規定された上で、成果を追及するものである。そのような価値観が私の中にあったことに気づいたのです。

私が以前考えていたような組織でなく、個人間の関係性をフラットにして、明確に役割を規定しない状態であっても、自分で選択をしながら、組織にとっての目標を達成するために何をするべきかを個人が考えることができれば、人々は機能に縛られずに、全体を見据えた上で行動を選択して成果を追求できるのではないか。目の前で和気藹々としながら成果を出していくメンバーを見る中で、そんな可能性の一端を見ることが出来ました。

このような柔軟性を持った組織が成立するためには、個人にかかる負担、責任、行動力が、ある一定の水準にないと難しく、誰にとっても最適な組織ではないと認識しています。そのため、この組織の作り方が全てではないと思っています。

一方で、この経験を通じて組織に対する、新たな「視点」が手に入ったと感じています。「こうあるべきという組織論」から脱却した、新しい組織を作れる可能性を見たいま、本当の意味での 「主体的に意思決定が出来て、最大に価値発揮できる組織 」をデザインすることを今後も模索していきたいと考えています。

執筆者:磯部裕樹
大阪大学・大学院にて位相幾何学の研究を行い博士前期課程を修了。
学部生時代に所属していた落語研究部で、様々なプロジェクトの企画・運営を行い組織づくりに興味を持つ。

その後、ビジネスモデルの面白さと、働く人々のフラットさに魅力を感じ、2016年にネットプロテクションズに新卒で入社。
現在はカスタマーサービスグループに所属している。
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