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機能的組織から有機的組織へ――個を尊重する次世代型組織論への考察

執筆者:鈴木 史朗
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機能的組織から有機的組織へ――個を尊重する次世代型組織論への考察

執筆者:鈴木 史朗

今回は、ネットプロテクションズのIT部門であるビジネスアーキテクトグループにおける体制変更の話を題材に、「ビジネスリーダーを育てるために最適な組織体制」について考えてみたいと思います。ビジネスアーキテクトグループはもともと、グループ配下に4つの「ユニット」が属するかたちを取っていました。しかし今回、グループ配下に14の「チーム」が所属するかたちに変更しました。このような大幅な体制変更に踏み切った背景には、「プロフェッショナルなビジネスリーダーが集まる組織を創る」という狙いがありました。

固定的な「ユニット制」から緩やかな「チーム制」へ

もともとビジネスアーキテクトグループは、グループ配下に、主にサービス開発に責任を持つユニット、システム運用及びインフラ管理に責任を持つユニットなど、公式かつ固定的な組織である4つのユニットが属するという体制を組み、原則的に一人が一つのユニットに属する体制をとっていました。

そうした体制を今回、ユニット制を廃止し、グループ配下に非公式かつ定義の緩やかな組織として「運用」「基盤」「営業支援」「デジタルマーケティング」などの14のチームが所属し、各チームにメンバーからリーダーを立てるかたちに変更しました。グループに所属するメンバーは2〜4つのチームに所属し、マネージャは、メンターとしてメンバーの成長を支援するかたちで部署全体をマネジメントします。

そうした体制変更を経て成し遂げたかったことは、「より高い水準で自律と協働を達成できるビジネスリーダーが集まる組織を創ること」です。

プロフェッショナルなメンバーが有機的に連携しあえる状態を目指す

私の考える理想的な組織の状態は、

  • ・メンバー個々人がプロフェッショナルである状態
  • ・それぞれが有機的に連携しながら事業を創り出している状態
  • ・そうしたメンバーが主体的に動いた結果、組織として機能している状態

 

だと考えています。

ここで言う「プロフェッショナル」とは、自律と協働のバランスが取れている状態のことを指します。自律とは、人に頼らなくてもある程度はやりたいことができること、つまり高度かつバランスの取れた能力・スキル・マインドがあることを指します。協働とは、他者を適切に活かし、自分自身が積極的に活かされて高い成果を出せるということです。イメージとしては、楽器の演奏や合唱に近いかもしれません。ビジネスの場では、結果として、メンバー同士が周囲の状況を的確に把握し、勝手に仕事を拾いあうことで最大の成果が出せる状態です。

こうした状態は、個人の役割を明確に定義づけることを目的とした組織構造の上で実現させるのは非常に困難です。実現のためには、個々人が複数の役割を担いやすくすることが必要だと考えています。IT部門に属するメンバー一人ひとりが、企画、基盤、開発・テスト、運用など、ビジネスを動かすための一連のプロセスのうち、複数のプロセスを実行できることが重要です。例えばそれぞれの役割を持つ組織を作ってしまった場合には、それぞれの分野に長け、責任を負える人財は育成できたとしても、必然的に責任範囲を狭く定義しがちになるため、すべてを俯瞰できる人財を育成することは難しくなります。

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業務の重なりが出たとしても、目的ベースで組織をつくることが重要

それに、もともと半永続的に固定化することを目的としたユニット制を採用していくことには違和感もありました。なぜなら、社会に価値を提供するための最適なフォーメーションは、所属する人の思考や会社、ビジネス環境などの変化によって、変わりうると考えていたためです。ユニット制によって、ある程度きれいに役割を分けることは出来ていましたが、必ずしもきれいに分けることが適切ではありません。実際、きれいに分けた結果、それぞれのユニットは、半ば恣意的に規定された複数の役割を持つことになり、全メンバーを納得させられる組織を作ることはできませんでした。

個々人が持つ思考パターンは様々です。そのため、ユニット制では原則的に一人が1つのユニットに所属しますが、それによって、自分の思考パターンとは異なる組み合わせで役割が与えられる可能性が高まり、価値を発揮しにくくなることによってモチベーションの低下を引き起こします。この場合、思考力をフルに発揮しづらい状態になり、ユニットが持つ役割を充分に理解できないまま、形式的に全うする傾向が強くなります。

その結果、限られた思考の中で個々人が自分の役割を狭く規定してしまう懸念がありました。そうではなくて、「自分はこういうことをやっていて、社会や会社にはこんな価値をもたらしています」と言える状態になることを目指したかったのです。

これらのことから導かれる1つの解は、組織間で業務に重なりが出たとしても、目的ベースで組織をつくることだと思いました。つまり、各チームが達成することを明確にし、会社が価値を最大限に出すために直感的に必要だと感じられるチームが存在し、メンバーの意志や強みを考慮して複数のチームに参加できる状態をつくることだと考えたのです。

こうすることで、メンバーは動きやすくなり、広い視野を持てるようになります。小さなチームであれば容易に役割を明確化することができ、逆に役割が明確化できればチームを作ることが出来ます。また、もれや重複を許容しながら、メンバー個々人の役割に境界を作らないことが必要です。

そうして行き着いた先が、チーム制という体制でした。

理想状態を目指す手段としてのチーム制

改めてチーム制について説明します。今回とったチーム制は下記のような特徴を持っています。

  • ・ビジネスアーキテクトグループ配下に14のチームが所属する
  • ・各チームにメンバーからリーダーを立てている
  • ・一人が2〜4つのチームに所属する
  • ・マネージャはメンバーのメンターとなり、成長の支援をする

 

もともと4つのユニットから構成されていたグループを、14のチームに細分化したことで、各チームの役割を明確にしました。そうして、チームという「括り」を適切に与え、各個人の感性(主観)とチームの存在に強いリンクが生まれることで、メンバーがより動きやすい環境とすることを狙いました。

同時に、より個々人の強みを発揮しやすくなるという効果が生まれることも狙いとしています。

前提として私は、人の強みは一般的に社会で規定されているような、分野(例えば、「マーケティング」や「営業」)によるものではないと考えています。そうではなくて、複数の分野にまたがり、ひとそれぞれの範囲があると考えています。

チーム制をとることで、各チームの目的がより細分化され、分散します。これは、メンバーからすれば選択肢が明確になり、選択の幅が広がったことを意味します。その結果、メンバーは自分の強みをより発揮しやすくなります。そして、強みを軸に影響範囲を広げていければ、モチベーション高く働くことができ、成果も成長もついてくるのではないでしょうか。

チームを細かく分けたことで、グループとして成し遂げたい目的は分散するため、ともすると逆に、メンバーの視野を狭めてしまう危惧もあります。しかし一人が複数のチームに所属することで、視野を広げてもらうことも意図しています。

また、チーム数が増え、各チームにリーダーを立てたことで、多数のリーダーが生まれることになります。リーダー経験を得た人財は、人間的にも成長し、社会に対して真に価値を発揮しやすくなります。

加えて、リーダー経験を経たメンバーが増えることで、各チームの存在意義に対する感度が上がり、チームの改廃が起こりやすくなります。そうして、網羅性を感じられるような、納得感の高いチーム構成とするために、多くのチームが存在している状態を狙いたいと考えています。

大幅な体制変更に踏み切るには思い切りが必要でしたが、メンバー個々人がより動きやすく、強みを発揮し、広い視野を持てるような環境を整えることは非常に大切です。そうして、自律と協働を、より高い水準で達成できる、プロフェッショナルなビジネスリーダーが集まる組織づくりを目指していきます。

鈴木 史朗
執筆者:鈴木 史朗
1996年 IT業界に入り、情報系業務や研究者向け、金融機関のコンサルティングに従事。
   数理モデル化を中心とした分析を推進。
2002年 ネットプロテクションズに入社し、2004年に取締役CTOに就任。
   NP後払いをはじめとする決済事業のモデル構築・設計、及びシステム開発を統括。
   現在はビジネスアーキテクトを輩出する組織の構築を推進。
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