自分の仕事の意味を知る~社内報がもたらした、考えるキッカケ~

執筆者: 中堀那由太
vol25
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自分の仕事の意味を知る~社内報がもたらした、考えるキッカケ~

執筆者: 中堀那由太

みなさんが働いている会社に、企業理念やビジョンというものはあるだろうか?

あるという方はそれを口にすることができ、なおかつ社外の方に語ることができるだろうか?実際に全社員が理念を理解し、それを語ることができる状態というのは、想像するととても難しそうな印象を受ける。

ここでは、とあるベンチャー企業N社が、理念浸透のためにおこなった、とある施策について、ストーリーを展開したいと思う。

ビジョンと再会した日

ある日の夜、デスクで残った仕事を片付けていた青山の手元に一冊の薄い冊子が届いた。「Palette」というタイトルがつけられ、カラフルなパレットと絵筆が描かれた表紙のそれは、一見しただけでは一体何なのか分からない代物である。おもむろにペラペラめくってみると社長のメッセージや会社の各事業部のトピック、社員の対談記事などが目に留まる。どうやら社内報というものらしい、ということは青山にも理解できた。ただしたった50名の、全員顔と名前が一致する会社で社内報を発行する意義はまったくもって理解できなかった。

入社3年目の青山にとって社内での出来事を知ることよりも目の前の業務をこなすことのほうが大切だった。それよりも早く成果を上げて成長したいと考えていた。実際は日々の仕事に追われ、疲弊する毎日ではあったのだが。果たしてこの仕事は何のためにやっているのだろうか?自分は成長できているのだろうか?そんな疑問を抱きつつ、次から次にやってくる業務に押しつぶされそうになりながら、日々を過ごしていた。

この日も疲れていた青山は早々に集中力を切らしてしまい、何の気なしに手元にあった「Palette」をもう一度めくってみた。

「N社のビジョン」が書かれ、どうやら社長のメッセージは「ビジョンに込めた想い」として、そのビジョンについての見解を語っているようだ。そういえば企業理念やビジョンというものは、入社以来ちゃんと見たことなかったな。おもむろに読み出した文章には、N社が大切にしているビジョンが策定された経緯、そしてそのビジョンからなぜ今の事業を運営しているかが、しっかりと記載されていた。文字を追いながら、青山の頭には就職してからこれまでの仕事の日々が巡っていた……。

Palette③

ビジョンとともに歩いてきた日々

30歳になったばかりの赤坂はN社の営業部マネージャー職についている。少人数ながらチームを束ねる立場にいて、毎日メンバーとの対話を心がけている。しかしここ最近、自分の立場や年次が上がるごとに若いメンバーとのギャップを感じるようになっていた。

自分自身が新卒の頃にやっていた業務にも彼らはモチベーションが上がっていないようだが、どう伝えるべきか悩んでいる。そう言えば自分はなぜここまでがんばれてこられたのだろうか……?

そんなことを考えていたある日、彼のデスクに一冊の冊子が置かれた。「社内報です」というセリフとともに渡された「Palette」という冊子。1ページをめくってみると、会社のビジョンが書いてあった。入社してからあまり見ることが少なくなっていたそのビジョンを改めて目にした際、若い時に見たそれとは違った言葉のように感じられた。それはまさにN社で働く上でどう振る舞うべきかが記載されているように思えた。対外的にも、社内的にも。その文言に姿勢を正されたような気がして、おそるおそる「Palette」のページをめくってみた。

大切なのは「ビジョンに触れ、考える事」

ビジョンを掲げている企業は数多あるが、社員一人ひとりにしっかりと浸透している企業はその内どれくらいだろうか。「企業理念が大切、ビジョンが大事」とは、散々聞いてきたが、自社の理念ですらピンとこないというビジネスマンは意外と多い。下手したら学生の頃から「御社の企業理念に共感し~」と口にはするものの、一つもまともに読んでないという人もいるのではないか。

上述のN社とは、もちろん弊社ネットプロテクションズのことである。我々も例のごとく、ビジョンはあったが社員一人ひとりとビジョンの間には乖離があったように思う。そんな背景もあり、立ち上げたのが社内報「Palette」である。

立ち上げの目的は「ビジョンに触れ、考える事」にある。文字だけを覚えても意味がなく、その文言が出来上がった背景を知ることで、会社が大切にしているスタンスを知ってもらいたい、そう考えたのだ。

コンテンツも、答えを示すものではなく、あくまで考えるキッカケづくりを意識したものである。そのビジョンについて各々考え、またそれを議論しやすい環境にすること。そのために、働いている社員の人となりがわかるコーナーもつくり、話しかけやすい話題提供も行う。100人にも満たない、全員が少なくとも顔見知りではあるベンチャー企業ならではの狙いかもしれない。

かくしてそのような想いを持ってつくられた「Palette」が社内でどのように機能したのだろうか。

日々の仕事と企業理念~モチベーション

「Palette」が果たした役割はビジョンを伝えることでもなく、ましてや教えることでもない。できあがった言葉の裏側には過程があり、そこで議論されたことにこそ本質があるということを伝えたまでに過ぎない。

もちろん受け取る側の立場、役割、経験に応じて読み取り方も異なるであろう。ただし、そのヒントを得てどのように思考し行動するかで、その本質を理解できるかが変わってくる。

青山はPaletteを読むことで、ビジョンには背景があることをはじめて知った。同期で飲みに行った際に、ためしにビジョンについての認識をぶつけ合うと、驚くことにみんな思っていることが違う。その会話から青山が「もしかしてこういうところが大事なのかもしれない」と思ったものを上司にも話してみた。その議論から上司の認識を知り、さらにビジョンに対する理解や自身の捉え方に変化が生じた青山は、これまで取り組んでいた仕事も、以前とは違う意味を見出すようになれた。何のためにやるのか、会社が何を目指しているのか。それを理解出来た気がしたからだ。

Palette④

もちろんこれらの過程を経て考えた青山や赤坂の認識が正解とは限らない。そもそも正解なんてものはなく、そのビジョンについて考えて、自分なりの意味を見出すこと。そこにPaletteの本質はある。すぐに答えが出るものではないかもしれないが、存在するからには何かしらの意味があり、それを捉えに行くことは、会社の本質を捉えることにつながるのではないか。

そして会社の本質を捉えることは、日々の仕事や会社環境を理解することにもつながる。会社が向かう方向を知ることで、自身のキャリアを照らし合わせることができる。いまの仕事が未来にどのような意味を持つのか。会社にとって、そして自分にとって。それらを考えることで、現在と未来に何をすべきか、自ずと見えてくるのではないか。

さて、あなたの会社のビジョンは何でしょうか?そのビジョンについて考えてみたことがありますか?

N社にとってのPaletteの役割を、この記事が果たせたなら嬉しく思う。

執筆者:中堀那由太
商社、PR会社を経て2014年ネットプロテクションズ参画。
文字や言語を使用した人と人のコミュニケーションとその構成への伝達に関心を持ち、大学では比較神話学を専攻。
現在も専攻や前職での経験を活かし、商品やブランドの魅力をストーリーとして伝える「フフルルマガジン(http://mag.fufururu.jp)」の編集長を務める。
また社内風土活性化の取り組みとして社内報「Palette」の立ち上げに携わり初代編集長を務め、現在では新卒採用にも関わっている。
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