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元千葉ロッテ里崎智也が、社長に就いたら欲しい人材とは?

執筆者:横山由希路
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元千葉ロッテ里崎智也が、社長に就いたら欲しい人材とは?

執筆者:横山由希路

組織や業界にはびこる常識を疑うのは難しいこと。しかし、イノベーションを引き起こすためには、その常識に一石を投じなければならないこともあるでしょう。

今回ご登場いただくのは、元千葉ロッテマリーンズでの里崎智也さん。16年にもわたる選手生活の中で、長年正捕手としてチームを牽引してきました。2010年には、プロ野球界で「史上最大の下克上」と呼ばれたシーズン3位からの日本一に輝きました。

先日発売された著書『捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』』(カンゼン)では、自身が球団のフロント入りした際の改革方法や無駄を省く組織練習など、“里崎流”のものの見方について書かれています。常識にとらわれず、厳しいプロ野球界を闊歩してきた里崎さんに、いい人材やいい上司の定義、組織改革について、お話を伺ってきました。

野球界から見る「いい社員」とは?

――本日は野球チームを例にとりながら、「いい会社」づくりについて、ご意見を伺えたらと思います。さっそくですが、里崎さんが考える「いいプレイヤー」の定義を教えてください。

野球でいうならば、結果を出せる選手です。結果が出る選手は、必ず代名詞となりえるズバ抜けた武器を持っています。平均点の選手は、現場では一番必要とされません。日本は、長所を伸ばすよりも短所を補う教育をしますが、それですと、武器のある選手は育たないんですよね。選手の能力の高さをレーダーチャートで表すと、全体の面積が大きい平均点の選手はレギュラーになれますが、面積が小さい平均点の選手は、1.5軍程度の便利屋で終わってしまいます。いい社員も同じで、すべての項目に特徴がない平均点を目指しても、一流にはなれないのではないでしょうか。

――球界ですと、部下を育てるのは、上司にあたるコーチだと思います。「いいコーチ」はどんな人でしょうか?

しっかりとした知識と理論に基づいて、選手に選択肢を与えられるコーチだと思います。僕がお世話になった山中潔コーチ【※】がまさにそのタイプでした。プロ野球選手は、高校野球や大学野球、社会人野球など、アマチュアでの成功を経てプロ入りしているので、入団時点で各々の理論にプライドを持っています。ですから、「お前のそのスイングがダメなんだよ」と、いきなりいままで積み上げてきたことを否定すると、本人を良くするためにしたはずのアドバイスが逆効果になってしまいます。

一方、山中さんは選手を見て「何か変だな」と思っても、本人が気づくまで、そっと見守ってくれていました。選手が自ら気づいて、アドバイスを求めてきた段階で、「A・B・Cの方法がある。どれがいい?」といくつか選択肢を提示してくれます。そこで「Bの方法が自分にはしっくりきます」と答えると、そこで初めて「じゃあBを身につけるための反復練習に取り組もうな」と、具体的な練習方法を教えてもらいます。ですから同じコーチに就いていても、全員が同じ練習をすることにはならないんです。それぞれの選手に必要な練習は異なりますから。いい結果を出すには、選手に合った方法論で導いてあげないといけません。

【※】山中潔(やまなか・きよし)PL学園出身の捕手。1980年にドラフト4位で広島に入団。その後、福岡ダイエーホークス、中日ドラゴンズ、日ハムファイターズ、千葉ロッテマリーンズに移籍し、1996年現役引退。1997年から2002年、2010年から2013年まで、コーチとして千葉ロッテマリーンズに所属。現在、東京国際大学硬式野球部の監督を務める。

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――2005年に千葉ロッテマリーンズが日本一になったとき、監督を務めていたのはロサンゼルス・ドジャーズなどで活躍したアメリカ人のボビー・バレンタインでした。里崎さんにとってどんな上司でしたか?

どんな意見を言っても受け止めてくれる存在でしたね。ときどき口論にもなりましたが、僕もこのチームが勝つための意見だったので、一歩も引きませんでした。でも、彼は初めから自分の考える信念と理論を明確に話すので、口論しても不思議と後腐れがないんです。ただ、僕自身成績が伴わないと、発言の信頼度が下がってしまうので、とにかく自分の結果だけは出し続けましたが。

あと、ボビーは試合前ミーティングでよく演説をしていました。自分がチームとして目指す方向、そして目標に到達するまでの方法論を示して、そのために選手にしてほしいこととしてほしくないことを話していましたね。ですから、チームで具体的に必要なことが共有できていたんです。

――海外と日本と、文化による上司の違いにもつながるお話ですね。

日本人の上司は、結果論でものを言われることが多かったです。でも、実はそのほうが下の人間は楽な面もあります。要は、選手は結果さえ出せばいいんですから。ただし、結果が出なければそこを突いてきますけどね。そういう風土の中では、理論を持っている人ほど居づらくなってしまうため、イエスマンが残りやすい業界だと思います。

コーチや監督など、野球界の首脳陣は戦国時代の武将たちと一緒です。戦国大名である監督に、コーチという武将の腹心が付いていて、一部の人間はチーム状況が悪くなると、自分には責任がないように話を持っていき、自分だけは生き残ろうと行動します。

僕は「責任は俺が取るから、俺の言う通りにしろ」という人間は好きではありません。こういうことを言う人は、普段から責任を持っていない、いざとなれば責任を部下に押し付ける人が多いように思います。そもそも上司が部下の責任を取るのは当然の職務であり、改めて言う必要はありません。もっと一人ひとりが「自分が主役だ」「自分の責任を全うする」というくらいの責任を持って、過ごしたほうがいいチームになるんじゃないですかね。

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「いい組織」の条件は、結局上の人間の器次第

――いいチームや組織を作るためには、どんなことが必要でしょうか。

「いい組織」をつくるには、組織のトップに立つ、もしくは組織で、なくてはならない存在になるしかありません。繰り返しになりますが、まずは結果を出して周りに自分の実力を認めてもらわないとダメなんです。結果の出ていない人間が「頑張ろうぜ」と声がけをしても、「お前が頑張れよ!」って返されてしまいますもんね(笑)。

――一方、伸び悩んでしまう組織は何が問題だと思いますか?

組織の上の人間の器次第だと思います。上の人の器が大きければ、その組織は自然と上手くいきます。僕もあまり尊敬できないと思うコーチの前では、言われたことをやっているふりをしていました。伸び悩むチームの上司は、部下に自分を超えられてしまう怖さを感じて、下の人間を檻に入れてしまいます。そして部下が指示通りにモノゴトを進めないと、そこを必要以上に責めるんです。

だから、もしそのチームで上を目指すなら、まずはとにかくミスをせずに言われたことはやるべき。上司の見ていないところで、こっそりと上の人間を抜く努力をしましょう。そして、機会を待ってやっかみを受けないように一気に抜き去ってしまえばいい。その組織を変えたいのであればそれが必要になります。

一方、いい上司なら「いいよ、俺を抜いてごらん」と言えるはずです。「抜いてごらん。でも、抜けないぜ。お前が10努力するところを、俺は1000努力しているから」と。僕はまさにそのタイプです。

部下や後輩には、とにかく好きにやらせて、結果を出させるのが一番だと思います。山中コーチの話のように、自ら選んでやったことに対しては、文句を言いませんから。その方が上司も部下も気が楽ですし、「絶対に結果を出そう」という責任感も伴うので、結果的に組織も強くなると思います。「チームにいてあげている」という気持ちになった選手が一番強いです。僕はチームが日本一になった2005年、「このチームは僕を中心に回っている」と実感できましたね。
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里崎智也がもし社長になったら、求めるのはこんな人材

――最後に、もし里崎さんが会社を作るならどんな人材が欲しいですか?

僕に意見を言える人を雇います。僕も完璧な人間ではないので、僕以上の考え方の広がりを得るには、異なる考え方を持って、それを言える人が必要です。イエスマンと仕事をしたら、会社が大きくなることはないでしょうし、何よりも僕自身が面白くない。いまの千葉ロッテマリーンズの選手でいえば、投手の古谷拓哉、伊藤義弘、外野手の荻野貴司かな。彼らは僕に意見を言ってくるので。1言ったら10言い返すような僕に意見を言うのは、大変だと思いますよ(笑)。でも、そういう人は、実績とか関係なく信頼度が置けます。そこまで言って進める仕事なら、もう失敗ができないでしょうから、本人も一生懸命仕事をしてくれるだろうと期待できますよね。

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横山由希路
執筆者:横山由希路
ライター・編集者。神奈川県生まれ。東京女子大学現代文化学部卒業。エンタメ系情報誌の編集を経て、フリーに。コラム、インタビュー原稿を中心に活動。ジャンルは、野球、介護、演劇、台湾など多岐にわたる。
Twitter ID:@yukijinsky
Facebook:https://www.facebook.com/yukiji.yokoyama
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