約1年のプロジェクト期間を経てリニューアルしたネットプロテクションズ(以下、NP)のコーポレートサイト。これまでとは全く違う印象で、社内外から好意的な反響をいただいています。リニューアルにあたってコーポレートサイトデザインに込められた想いとは、その意図をマーケティンググループの池田と、制作を担当した株式会社ロフトワークのお二方に聞きました。

プロジェクトメンバー紹介

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 金指了さん(中)
株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 山田麗音さん(右)
株式会社ネットプロテクションズ マーケティンググループ 池田康平(左)

会社の「今」をありのまま表現するためのプロジェクト

池田
2015年にリリースした旧コーポレートサイトは、「後払い決済」の会社ということもあり、質実剛健というか、しっかりした会社という印象を受けるサイトでした。社員もフォーマルな服装をしていましたし。

山田
アットホームな会社の雰囲気が前面に出ているようにも見えました。ただ言葉を選ばずに言えば、ありがちなコーポレートサイトのような印象も受けました。

池田
当時より事業も組織も遥かに成長しているにも関わらず、それを的確に表現ができていないことにすごく違和感を覚えていました。こんなにも良い会社になってきているのにコーポレートサイトの第一印象だけで、こちらが意図しない印象を抱かれる可能性がある、ということにも悔しさを感じていました。何よりも、NPのメンバーが自社のコーポレートサイトを自慢できるものにしたいという思いが一番強かったですね。

「NPの「今」をありのままに伝えたい」と考えたとき、最もパワーが掛かる一方で、最もレバレッジが効くと思えたのが、コーポレートサイトをリニューアルすることでした。

サイト訪問者がそれぞれの物語をつくり読み進めていく「ナラティブ」な構造

金指
今回のリニューアルでは、サイトコンセプトを「ナラティブ」としました。企業側が一方的に決まったストーリーを伝える一般的なサイト構造とは異なり、サイト訪問者それぞれが、それぞれの物語を自ら作っていくプロセスで、NPを深く理解していくことができるような回遊設計を目指しました。

山田
NPのコーポレートサイトを訪れる人って、就活生だったり、導入を検討している企業だったり、サービス利用者だったり、さまざまですよね。そういう人たちすべてに同じようなメッセージを同じような順番で伝えても、たぶんうまく伝わらない。そこで、何をきっかけにしてNPのコーポレートサイトを訪れたとしても、ユーザーなりにNPという会社の全体像を理解してもらえるような体験がサイト内でできたらいいのではと思って、このようなサイト設計にしました。

池田
あみだくじをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。スタートからまっすぐゴールに向かうのではなく、線を足したり引いたりすることでゴールそのものが変わってきます。今回のリニューアルではまさにその「線を足したり、引いたりする」をユーザにしてもらいたいと考えました。それによって一人ひとりがオリジナルのNPに対する物語を作ってもらいたいなと。

山田
実は金指から「ナラティブ」という話が出てくる前に、コンセプト設計のワークショップなどを通じて、NPという組織に抱いたイメージがあるんです。

個々がしっかりしていて独立しているのに、集団としてまとまっている。どちらかの側面が強い組織は多いのですが、個も組織もどちらも印象として強いというのは珍しい。ユーザー体験として、そういう企業の内側をどうしたら感じていただけるだろうか、ということを考えていたところ、金指から「ナラティブ」というワードが出てきて、「ああ、それならNPらしさを表現することができるな」と感じたんです。

これまで表現しきれなかったものを「言葉以外」に託す

池田
先ほど話で出ましたが、NPのコーポレートサイトは多様な訪問者が想定されますよね。求めている情報がそれぞれ全く異なる種別の方達に、どのようにNPという会社を見てもらいたいのかが、今回のキーでした。

山田
事業だけでなく、カルチャーや組織も面白い挑戦をしている会社なので、それぞれでの評価は高いけど、それがNP全体としての価値として捉えられていないことがもったいないなという気がしていました。

池田
確かに事業においても組織においても「つぎのアタリマエをつくる」というミッションを掲げているのに、それを的確に表現しきれていないところはありました。

これまで、言葉でNPらしさを伝えてくることは多くありました。一方で言葉以外のもの、つまりイロやカタチ、またそれらが作り出す印象にNPらしさを託すということが今回のリニューアルが初めてでした。これが絶対的な正解だとはもちろん思っていません。この表現を受け取ったNPのメンバーが「これって本当にNPらしさを表現できているのか」と考え、議論してもらえるきっかけになればと思っています。

金指
まさにそのひとつがカラーですよね。今でも社内のあちこちに優しい色合いのピンクと水色が使われていますが、NPのビジネスのきちんとした側面を伝えるには優しいだけではだめ。引き締まった雰囲気を伝えるために、もう少し彩度高めのカラーを採用しました。

コーポレートロゴからイメージされる水の流れやグラデーションは、事業も組織もその時々でイロやカタチを柔軟に変化させながら進化をしていく姿、NPの持っているカルチャーをよく現していると感じていました。なので、その表現を十分に生かしたクリエイティブにすることを心掛けました。

また、今回のデザインでは円形を多用しています。池田さんが、NPを表すなら“球体”だという話をしたことがあったんです。球体ってどこから見ても円形に見えますよね。事業、組織どちらの側面から見ても、印象としては同じように感じてもらうことが狙いです。様々な側面がありますが、全部同じひとつの会社なんだということを表現したいと思い、円形を採用しています。つまり円形に見えているものは、実はすべて球体なんです(笑)。

コーポレートサイトのMISSIONを表現するページにも円形が多用されている

池田
訪問いただいた方それぞれによって紡がれるナラティブなNPの物語だからこそ、どのような順番で回遊していただいても「これがNPという会社なんだな」という共通のイメージを伝える上で、イロやカタチといった要素に統一感を持たせることは効果的なんだと感じています。

フラットに議論できる関係性だからこそ、良いものが作れた

金指
ところで、なぜロフトワークをパートナーとして選んでいただけたんでしょう?

池田
このプロジェクトを進めることとは関係なく、自分自身のクリエイティブの知見を広げるために、様々なメディアなどには触れるようにしているのですが、たまたまロフトワークの記事を見つけて「デジタルUXリーダーズキャンプ」というイベントの参加者を募集しているのを知ったんです。

実際に自分が参加してみてロフトワークの方の優秀さを実感しました。さらにその後開催されていた「ロフトワーク展」で自分たちの実績や、仕事への想いなどを伝わりやすい形で伝えてくださっていた。だからロフトワークに惚れ込んでお願いした、という感じですね。

金指
ありがとうございます!

山田
NPとお仕事をしていて思ったのは、NPからプロジェクトに参加しているメンバーそれぞれの方から出てくるキーワードが全然違うのが面白いなぁと。でも、紐解いていくと、実は同じことを言っている(笑)。

金指
一緒に打ち合わせしているときに、NPのメンバー間で議論が始まることもしばしばでしたよね(笑)。

プロジェクトマネージャーという立場からすれば、アウトプットはひとつだけ。違う意見が出てくる、というのは難しい局面ではあったんですが「この人が言ったからそれ“で”いい」という企業が多い中、面白い体験だなとも感じました。

そのフラットさをNPの組織内だけでなく、私たちにも展開してくださっていました。対等な立場でプロジェクトを進められたのは良い経験でしたね。

池田
私も金指さんや山田さんだけでなく、ロフトワークのメンバーが「いいですね、それ」とか「確かに」みたいな肯定意見ばかりを言わないのがうれしいなとプロジェクトの最中も感じていました。

客観的な視点を求めているからこそパートナーシップを組んでいるので、プロフェッショナルな視点から「なぜ」というところをきちんとディスカッションしてくれるのがありがたかったですね。おかげで、社内のメンバーと一緒に作業しているような違和感のなさを得られましたし、考えていた5倍以上の良いレベルのものができたんじゃないかなと思います。

山田
いいものができたと思いますよ。例えば、ほとんどのページの最下層にコンテクストエリアと呼ぶものを置きました。これは、通常であれば、クリックで該当ページに飛ぶべきところを、今見ているページと、これから飛ぼうとしているページの関連性を簡単に紹介するエリアでして、これからNPの皆さんで自由に変えていただける場所でもあります。

ビジネスから見たカルチャーとの関係性や、採用からカルチャーへの関連などどういう関わりがあるのかを入れていただくことで、ユーザーがナラティブな体験をしていただけるんじゃないかな、と考えています。

サイトの下部に設置されたコンテクストエリア。クリックすると簡単な概要が表示される。

金指
マウスオーバーで、次のページへの見出しが表示されるなど、回遊してもらうためのアイデアがあちこちに散りばめられています。サイト全体としてNPらしいコミュニケーションを感じていただけるようになったんじゃないでしょうか。

池田
すべてにおいて「なんとなく」がない。考えがあって作られているんです。

とはいえ、これまでがそうであったようにNPらしさってどんどん進化していくはずで、そうなったら伝えたいこと、表現したいことも変わっていく。そうなったときに、どのようにそれをコーポレートサイトに反映させていくか、ということをNPの1人でも多くの人が意見を持ち、議論し、かたちにしていければと思います 。

実を言うと、このプロジェクトに携わるまであまり組織のあり方というものにそこまで興味がなかったんです。コーポレートサイトをリニューアルするにあたり、自社についてある種フラットに、広く、深く考えることができましたし、社内のさまざまな人たちとコミュニケーションを取ることもできました。

そうしてNPをどう表現すればいいのかが理解できたところで「言葉以外でも十分表現できるんだ」という確信を得ることができた。これは大きかったですね。

山田
ここまで意見を交わしながら作り上げたという経験がなかったので、こういう奇跡的なチームに参加できたこと自体が、私にとっては大きな収穫でした。

金指
ものづくりをしている人間として、いいものを作りたいというだけでなく、プロジェクトメンバーが同じ方向を見ながら進めるか、という基準もあるんですが、このプロジェクトでは、その両方を満たしてくれる良い体験ができました。

池田
素敵なチームで作り上げたコーポレートサイトが、社内外の方々から「素敵なサイトですね」というようなお言葉をいただき、とてもエネルギーになっています。今回のプロジェクトでコーポレートサイトは完成したわけではなく、生まれたばかりの未完成なものです。NPの成長に寄り添い、進化し続けるものでありたいと願っています。

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