2021年に現プライム市場への上場を果たしたネットプロテクションズホールディングス。上場から3年が経過し、中長期目標として営業利益100億円という成長を目指す今、これからのネットプロテクションズ(以下、NP)のエンジニアリングの展望について、取締役CIOの山下とVPoEの金に聞きました。

山下 貴史
通信業界での研究開発を経て、インターネット広告企業にて、自社サービス開発や開発部門の統括、子会社の役員としてオフショア開発立ち上げ等を担当。2014年に株式会社ネットプロテクションズに入社。IT部門の組織開発、NP後払いのサービス改善等に従事。2024年に取締役CIO(Chief Information Officer)に就任、コーポレート領域やグループ全体のリスク管理、ガバナンス、サステナビリティに加えてエンジニア領域も管掌。

金 炯才(キム ヒョンゼ)
中小・大手事業会社、SIerでSE、開発、事業立ち上げを通じてPM、PMO、CTOに従事。その後ベンチャー企業を経て2023年ネットプロテクションズへ入社。2024年に執行役員およびVPoE(Vice President of Engineering:技術部門マネジメント責任者)に就任し、現在はエンジニア部門の技術と組織の双方を統括、戦略立案、リスク管理の推進に従事。

経営体制新たに、社会的公器としての責任や期待を背負い、前進する今

ー前CTOの退任からお二人が取締役CIOおよびVPoEとしてシステム部門の管掌を担うようになって6ヶ月が経過しますが、現在の状況をお聞かせください

(山下)私は取締役CIOとして、情報セキュリティやデータ活用等をはじめとする情報戦略に係る経営を担っていますが、事業成長に伴って情報戦略の重要度は日ごとに増していると感じますね。当社の決済サービスが人々や企業の経済活動におけるインフラを担う側面があるので、適切に情報を管理し経営に反映させることの重要性を強く感じるとともに、やりがいを感じています。

(金)私はVPoEとしてエンジニア部門の組織運営と戦略企画を担っていますが、山下さんと同じく、事業成長に伴って提供サービスのシステムを安定稼働させる重要性が日々増していることを感じています。それと同時に、サービス利用者の増加にともないデータ資産が集積して、事業成長の期待も高くなっています。加えて、エンジニア部門がトップダウンではなく個々人が経営視点を学び、ボトムアップ式に物事を考え動ける組織に育ちつつあります。責任と期待が大きくなる中、それに応える組織力が強固になりつつあり、次から次にチャレンジできる環境や、我々の活動の先に見えるポテンシャルに、ワクワクしています。

テクノロジーの力で、あらゆる顧客課題に寄り添えるセキュアな決済インフラをつくる

ー事業成長を加速させる組織体制が整ってきている状況なのですね。
 今後は、どのようなエンジニアリング戦略を描いていますか?

(金)人々の生活を支える決済インフラを運営していく上で、また新たな価値貢献を社会に創造していく上で、システムも社内組織も、継続的なアップデートが必要だと感じています。なぜなら5年先、10年先を見据えると、システムにおいては日々、新技術の登場に伴い、支えてきた基盤が老朽化することは想像に難くないからです。人々の生活様式にも変化があるでしょう。そうした時に、ちゃんと人々の生活に寄り添えるサービスを提供し続けるためには、システムも、それを作る組織も、時代に合わせて進化していく必要があると考えているからです。
具体的には、2つの取り組みを積極的に行いたいと考えています。
 ①事業をスケールさせやすい柔軟なシステムを築く取り組み
 ②世界的にもIT業界的にも関心が高いセキュリティ強化に係る取り組み
双方の取り組みに係る直近の取り組みを一例として挙げると、スケールさせやすいシステムづくりが推進できるように、プラットフォームエンジニアリングを担う組織を立ち上げ、事業毎に最適化されているシステムの一部を全体最適化することで効率化を図っています。加えてNPの市場優位性となるコアテクノロジーの分析、およびIT投資戦略の策定を事業横断で検討しています。セキュリティ強化については、オペレーションレジリエンス(※1)を高めるべくCNAPP(シーナップ)(※2)などの技術応用も検討し、決済インフラとしての盤石な体制を築いています。

※1:システム障害、自然災害等が発生時に、重要な業務を、最低限提供し続ける能力を指す。
※2:Cloud Native Application Protection Platformの略で、セキュリティとコンプライアンスの機能を統合してクラウドセキュリティの脅威に対応するプラットフォームを指す。

ビジネスの全体最適を俯瞰してアーキテクチャを描くエンジニア組織

ー戦略の実行を担うエンジニア組織について、どのような展望を描いていますか?

(金)技術力を磨く一方で、単なる技術集団に留まらず、中長期的な視座でビジネスを捉え、最適なシステムを常時構築できるようなエンジニア組織を目指しています。このようなビジネスをアーキテクトできるエンジニア組織を目指す上で、NPではエンジニア部門を総称して「ビジネスアーキテクト」と名付けています。私は過去に、事業の拡大に伴い巨大化していく組織が、部分最適に陥り受動的な意思決定をせざるを得ないようになっていく例を見てきました。そういった状況が続くと、部分最適なアーキテクチャによって技術的負債が積み重なり、将来的にエンジニアが負債の返済作業に一杯一杯になってしまいます。私は、エンジニアが社会に必要とされるシステムの開発にコミットできる環境をつくりたいと考えています。

(山下)ビジネスをアーキテクトできるエンジニア組織を目指すこと自体は、前CTOの鈴木がIT部門を管掌していた時から系譜を継いでいる想いでもあり、NPがこだわりたいポイントですね。エンジニアがキャリアを歩む中で、事業やサービスの仕組み作りなどに興味がある方もいれば、技術力を磨きたい方もいると思います。どちらに比重を傾けるかは個人の自由だと思っていますが、一方で事業に全く興味がない人とは、サービス全体最適なアーキテクチャを作る上で、真にWin-Winにはなれないかもしれないとも思う。そこは当社としてはこだわりたいところだと考えています。

個々人の自己実現が尊重されモチベーション高く活動ができるから、事業成長にコミットできる

ー理想のエンジニア組織をつくるにあたって、どのような取り組みをされていますか?

(金)次の3つを実践しています。
①ビジネス視点と技術力どちらも培われる、人材育成とチーム運営
②個人の経験値を高めるための、ボトムアップ式の風土
③個人の知識をアップデートするための勉強会や交流会、および資格取得や書籍補助

ービジネス視点と技術力どちらも培われる環境では、どのような働き方が可能ですか?

(金)NPのエンジニアは、各事業ごとに編成されるチームと、各技術ごとに編成されるチームを兼任しています。これによって、事業ごとに編成されるチームの中では、経営企画と肩を並べて中長期を見据えた事業展開に基づくシステムアーキテクチャを思考できるし、技術ごとに編成されるチームの中で、事業横断で最適なシステムアーキテクチャのあり方を模索することもできます。
私は2023年にNPへ中途入社しましたが、これまで経験してきたエンジニア組織の多くは、事業に紐づくチームと技術に紐づくチーム、どちらか一方を採用しているケースが多かったように思います。理由は簡単で、両チームを共存させてビジネス感度の高いエンジニアを育成するのは時間的コストがかかる点で非効率だからだと考えています。一方で、どちらか一方の観点しかないと、徐々に全体最適なアーキテクチャから乖離してしまうため、誰かテックリーダーがトップダウン的にチューニングを仕掛けに行かないといけない。エンジニア個々人がビジネス面と技術面、双方の感度を高く持って能動的にシステムアーキテクチャを思考できる環境は、特定のリーダーに依存しない盤石な体制であるという点で当社の強みだと感じています。

(山下)この組織構造はエンジニアが自身のキャリアをデザインできるきっかけにも繋がっていて、それによってエンジニアの意志が尊重され、事業推進に係るモチベーションの糧になっている側面もありますね。
企業によっては開発効率のために、エンジニアは一度担当した配属された技術領域の専門性を磨いていくロールしか推奨されていないケースもままあるとが多いように感じています。ところがNPでは全体最適を考える人材を育てる過程で、ビジネス寄りにもなれるし特定の技術を磨く道にも進めるし、自分である程度のロールチェンジが可能になっています。NPという会社も、個人の意志が尊重されることで、会社へのコミットメント意欲が上がるなら良しとしている風土の会社です。

ーボトムアップ式の風土では、どのような経験が得られますか?

(金)これはエンジニア職に限らず、ティール型組織を運営するNP全体に言えることですが、所属部門や肩書き、年次によって挑戦が制限されることがないので、自ら企画を起こし、推進していく環境が備わっています。各社、自主性を尊重するようなエンジニアの組織展望を抱いているようにも感じられますが、他社を経験した上でNPへジョインすると、その実現性の高さに驚くと思います。私がそうだったように。

(山下)エンジニアのパフォーマンスを高めるためにも、モチベーションが維持できる環境は大事だと考えています。トップダウン式の組織と比較すると合意形成のコストこそかかりますが、メンバー個々人が業務の意義を理解した上で志高くプロジェクトを進められると、良いアウトプットが出てくると感じています。

ー個人の知識を底上げするための取り組みには、どのようなものがありますか?

(山下)一般的な福利厚生として、自身のスキルアップのための資格取得や外部研修参加、技術書を含む書籍購入に係る費用補助制度などは完備されています。

(金)加えて、社内エンジニアが月に一度、各々の得意分野の勉強会を実施する交流イベント「Devday」も実施しています。他にも、社外のエンジニアチームと合同で勉強会兼交流イベントを実施することもあります。最近だとNPがAWSを活用しているご縁で、AWS社主催のイベントで登壇オファーをいただいたり、グローバルなイベント「AWS re:invent」への参加もしました。いい組織を作るために、一定の投資をし続ける組織でありたいと考えています。

ビジネスも組織も、つぎのアタリマエを描きアーキテクトする

ー最後にこれからNPに参画される方に向けてメッセージをお願いします

(金)NPは「つぎのアタリマエをつくる」というミッションに基づき、世になかった後払い決済を作り、拡げてきました。私も自分の置かれている環境について、いつもベストな状態だとは思っておらず、次の理想を目指したいと常に考えています。理想は青天井ですが、次のステージを描くことにワクワクしていただける方、また共に志高く前進していただける方が仲間に集まっていただけると大変嬉しいです。

(山下)NPは提供価値を社会に拡げていくにあたり、次の挑戦フェーズに差し掛かっていると思います。IT投資規模の拡大、エンジニア採用の加速、膨大なデータを活かすための基盤整備など、そうした挑戦フェーズへの準備も着々と進んでいると感じており、エンジニア個々人が事業そのものを動かし、世の中にインパクトを与える機会が豊富にあると思います。これまで培ってきた経験やそこから生まれるアイデアを、所属している部門を超えて、ビジネス推進に活かしてたいという考えをお持ちの方と、一緒に挑戦を続けたいです。


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