ネットプロテクションズ(以下NP)における採用の裏側を洗いざらいお話していく連載企画、「シリーズ:飾らぬ採用」。
第2弾のテーマは、グループディスカッション(以下GD)/エントリーシート(以下ES)についてです。

NPのGD/ESではどんなお題が出されるのか、そこから何を見極めようとしているのか。
18年度新卒採用リーダーで、現行のGD/ESの設計基準を作成した河西に、見極めポイントや設計意図を語ってもらいました。

※18年度以降NPにおいては、見極めたい能力がどちらも同じであるGDとESを併用して選考を行なってきました。新型コロナウイルスの影響で、22年度の新卒採用においてはESのみの選考が中心となりますが、お題設計で意識していることや見極めたい能力については例年と変わりません。

設計意図を公開するのは、より本質的な選考のため

河西遼:2013年4月、NPに新卒入社。ビジネスアーキテクトグループ 兼 人事総務グループ シニアHRパートナー 兼 CreditTech推進室 リーダー。 これまで「NP後払いair」の立ち上げリーダー、2018年新卒採用WGリーダー、人事制度「Natura」の立ち上げなどを経験。現在は与信機能開発のチームリーダー、新規事業開発プロジェクトリーダーなどを担当。

今回GD/ESで出すお題の公開に踏み切るのは、出題意図や見極めたい能力について、皆さんに予めお伝えしたほうが良いと考えたからです。

NPではGD/ESで見極めたい能力を明確に絞り、その能力が表出しやすいような議論になるように設計をしています。なので他社さんの選考や「就活対策講座」などでGDをある程度経験してきた方にとっては、「慣れているパターンとは違うテーマだ」と感じるかもしれません。そんな中、無闇に「こういうところを評価されているんじゃないか」と推測をされてしまうと、本来見たかった能力が見られないままGD/ESが終わってしまう可能性が出てくる。そういったLose-Loseな事態を避けるために、お題の設計意図や見極めたい能力を事前にお伝えした上で選考に臨んでいただこうと考えました。

NPの選考を受けようとしている、あるいは受けようか検討している方には是非読んでいただきたい内容です。同時に、これはあくまでNPにおける選考基準についてのお話であり、「GD/ESとは、こういう能力を見極める選考である」という一般化したお話ではないことも念頭に置きながら読んでいただければなと思います。

「複雑なことをどれだけ緻密に整理して考えられるか」を見極めたい

NPが求める人材要件

NPのGD/ESで見極めたい能力は、新卒採用の要件で言うと「思考力」、中でも特に「概念的思考力」です。「獲得した情報を、適切に構造化できる力」と記載していますが、要するに複雑なことをどれだけ緻密に整理して考えられるかですね。

「本質的思考力」は、「本質的に考えようとする」という「姿勢」の側面が強いです。なので1対1でじっくり話すことができる面接の方が、見極めやすいと考えています。「観点の幅」に関しても知識量に依存することが多いので、決められたお題について考えるというGD/ESにおいてはあまり見極めるポイントではないという意識があります。したがって「思考力」の中でも「概念的思考力」が、業務において重要な力でありながら一番変わりにくいため、GD/ESの段階で見極めようという結論になりました。

本質的な議論が繰り広げられるように、設計において工夫している三つのポイント

複雑なことをどれだけ緻密に整理して考えられるか。この能力を見極めるためには、多くの論点が複雑に絡み合っているようなお題を出し、その論点を一つひとつ紐解いていくような議論の流れに誘導する必要があります。そのために意識しているポイントは、具体的には三つです。恣意的に議論の範囲を狭められないようにすること、「目的に照らした論理構造の深掘り」以外の論点に時間を使わなくて済むようにすること、それから就活経験や大学の専攻などといった知識・経験の差ができるだけ出ないようにすること。ここでは、18年度新卒採用の際に出題した「日本における終身雇用の是非について主張せよ」を例に出しながらお話を進めますね。

まず一つ目、「恣意的に議論の範囲を狭める」とは、勝手な「定義づけ」などによって考えるべき観点を極端に少なくし、簡単に結論が出せるようにしてしまうということです。例えば終身雇用の是非に関して、「幸福度の総和を最大化すること」を「GDPを上げること」と狭く定義してしまえば考える観点は少なくて済むようになります。

けれども実際には、「幸福度の総和を最大化すること」と「GDPを上げること」は必ずしも同義ではないはずです。まずはそもそも、「幸福度」とは何によって測られるものなのか。衣食住の安定?それとも自己実現まで視野に入れなければ幸福度を測ることはできない?それから「総和」をどのように捉えるのかという問題もあります。上位数パーセントが大富豪の格差社会でも、総和は高まるかもしれない。一方で全国民の標準値を少しずつ上げるという選択をとっても、総和としては1億人以上分上げることができます。

これは、「どの選択をするのが正解なのか」というお話ではありません。大切なのは、あらゆる観点から多くの可能性を検討できるかどうかということです。それを表出させるために、予めお題の注釈として「目的」や「定義」を記載し、勝手な定義づけから議論が始まらないように工夫をしています。さらに補足として留意事項で「できるだけ多くの観点から考えた上で議論をしてください」と明記し、議論の流れを誘導しています。

二つ目の「目的に照らした論理構造の深掘り」以外の論点に時間を使わなくて済むようにすることに関しても、概念的思考力を見極めるためには大切なことです。例えばブレスト(ブレインストーミング)でとにかくアイディアを出すことは、論理構造の深掘りとは異なる価値発揮の仕方。概念的思考力の見極めにはつながりません。そこで最終的に提案する手段を予め「是か非」の二択に限定し、ブレストの余地がなくなるように設計をしています。

また「タイムキーパーします!」といった形式的な役割を担うことで協調性を示すようなケースも、「論理構造の深掘り」以外の価値発揮にあたります。お決まりの進め方や役割分担といったことを「就活テクニック」として聞いたことがある方も少なくないかと思いますが、そうした「テクニック」を使うことで評価が上がると思われてしまうと、本質的な議論が深まらなくなってしまう。そこでGD開始前の説明で予め「概念的思考力を見ています」とお伝えし、評価ポイントへの憶測を産まないようにしています。

知識・経験の差に関しては、先ほど「観点の幅」で少し触れたとおりです。「知っているから確からしい考えができる、逆に言うと知らないから不確かで浅い考えしかできない」といったことは避けたいと考えています。テーマを選ぶ際には、「多くの人が同等によく知っている、もしくは同等にほぼ知らないであろう題材であること」を意識するようにしています。

具体的な内容は毎年変えるようにしているが、お題設計の意図や緻密さはここ数年ほとんど変わっていない。

見極めたい能力を緻密に定義していても、一歩間違えばその能力が表出されないままGDが終わってしまうんですよね。議論の流れや考えるべき観点の数に関して、NP側で意図したとおりになるよう、留意事項まで細かく設定をしてコントロールをしています。

緻密で汎用性の高い仕組みを作り、創造的な領域に割く時間を増やす

ここまで「概念的思考力を見極める」ことにこだわるのは、NPが「考えて仕組みを作る」会社だからです。これは事業戦略上という意味合い以上に、「次世代リーダーの育成」を会社の存在意義レベルで大切にしているからでしょうね。

次世代リーダー、すなわち社会のあり方を考え、創り出していく存在。「つぎのアタリマエをつくる」をミッションとして掲げているNPは、そうした人材を輩出できるような環境でありたいと考えています。そのためには一人ひとりが創造的な領域に十分な時間を割けるようにすること、裏を返すと事業運営に必要なルーティンは極力仕組み化することが重要です。そうした背景からNPでは「緻密に思考して、より汎用性の高い仕組みを作り出そう」という方針で事業を推進しています。

「緻密に思考する」という力を形成するのは、「考えることが好きかどうか」といった素質や、学生時代までの経験といった側面が大部分なんですよね。小手先の選考対策や入社後の研修という短期間で、付け焼き刃的に伸ばせるものではないんです。なので「緻密な思考」を苦手とする人が入社してしまうと、「できないのに求められ続ける」というお互いにとって不幸な状態に陥りやすい。そういった事態を防ぐためにも、選考過程で丁寧な見極めをしています。

変な憶測や邪念を持たず、楽しみながら取り組んでほしい

このようにお話をすると「概念的思考力は伸ばすことができない」と言っているように聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。選考においてはどうしても「その時点での能力」で見極めをしてしまうのですが、確実に伸ばすことができる力ではあります。どうしたら伸ばすことができるのか。ありきたりな回答ですが、自分の頭で常に考え続けることが大切なんでしょうね。あらゆることに対して自分なりに解釈、構造化をして汎用性の高い理解をしていく。そうしたことを自分の頭を使ってやり続けていると、次第に考えたこと同士がマップのように頭の中で結び付けられていく。概念的思考力を伸ばすというのは、そのマップを一つずつ緻密に作り上げていくことだと思います。

これには時間も根気も必要なので、マップを作り上げるプロセスを楽しめるかどうか、つまり「考えること自体が好きかどうか」は重要なのかもしれませんね。ただし、今まであまり「自分の頭で考える」ということをしてこなかった人が、すぐに「自分は考えることが好きではない」という判断をしてしまうのは、少しもったいないことのように思います。最初は考えたこと自体の回数も少ないし、それらをどのようにつないだらマップになっていくのかの要領も、往々にしてわからないものです。そのような状態では、「自分なりに解釈、構造化をして汎用性の高い理解をしていく」ということの面白さを味わうのは難しい。それでも「考えたい」という気持ちを捨てずに試行錯誤していれば、きっと徐々にマップ作りの要領がつかめてきます。なので少しでも「概念的思考力を高めてみたい」という気持ちがあるのであれば、「自分なりに考える」ということに取り組み続けてほしいなと、考えることが好きな私としては思っています。

設計意図や見極めたい能力に関して細かくお話をしてきましたが、要するに「出された問いに対して変な憶測や邪念を持たずに、素直に貪欲に考えてほしい」というのが最終的なメッセージです。今年度はESのみの選考が中心となっていますが、このメッセージはどのような形態であれNPの選考全般において言えることですね。NPのGD/ESは、緻密に考えることが好きな人にとって楽しみながら取り組むことができるような設計になっています。身につけた「就活テクニック」は一旦脇に置いて、ワクワクしながら考えていただけたらなと思います。

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