ビジネスの世界と、学問の世界。両者は遠く離れた世界であるとイメージしている学生の方も、少なくないのではないでしょうか。

しかし、理系出身(理工学部)である2016年新卒入社の澤田智希は、「学問における『研究』は、イノベーションを起こすプロセスと似ている」と言います。

今回ご紹介するのは、そんな彼が立ち上げた「理系院生採用」についてです。「理系院生採用」ではどのような背景から、どのような人物を求めているのか。イノベーションと研究は、どのように似ているのか。自身の経験も踏まえた上で、考えやメッセージを詳細に語ってくれました。

「原理原則を見つけ出すような学問領域」が好きな人を求めたい

まず初めに断っておかなければならないのは、「理系」「院生」というのはただわかりやすくするためのラベリングにすぎないということです。つまり、正確に言うと「理系かどうか」「院生かどうか」が重要なのではありません。「原理原則を見つけ出すような学問領域」が好きな人。できる限り本質を追究し、シンプルで美しい法則性を見つけようとすることが好きな人。「理系院生採用」として求めたいのは、こうした性質を持っている人です。

例えば異なるサービスにおけるお客様の購買行動、あるいは規模も業種もまったく異なる会社がそれぞれ抱えている課題。これらは一見すると、ランダムで無関係な事がら同士のように思えるかもしれません。しかしあるときは具体的に、あるときは俯瞰的に、またあるときは別の観点を加えて。物事をあらゆる角度から膨大に観察をし続けると、一見無関係に見えるような事がら同士の中にも、共通した規則性やエッセンスを見つけられるときがあります。そしてその「共通した規則性やエッセンス」、つまり「本質」にたどり着くことができれば、既存の方法論や枠組みだけで考えたときには見えてこないような、格段に良いやり方がひらめいたりするんです。

では「一見無関係に見えるような事がら」を目の前にした際に、「共通した法則があるはずだ」と信じて探し続けられるかどうか。見つからないこともあるのですが、とにかく信じて探し続ける。こうした行為はまさにアカデミックな、中でも理学や自然科学、数学といった法則性を追究するような領域における「研究」に限りなく近いんですよね。

繰り返すようですが、重要なのは実際の専攻や研究領域ではありません。あくまで好きかどうか、好んでできるような適性を持っているかどうかを重視したいと考えています。

「汎用性の高い仕組み」を独自で考えて築き上げる会社

NPにおいて、なぜ「原理原則を見つけ出そうとする人」を必要としているのか。その理由は大きく2つあります。

1つは、扱っている「決済」というサービスが「プラットフォームビジネス」である、言い換えると「土台を提供するビジネス」であることです。より多くの取引において使われるほど、1つの取引あたりにかかる土台の提供コストを下げられる。裏を返せばできるだけ個別対応を避け、より多くの取引において使えるような「汎用性の高い仕組み」を作ることが肝要となるのです。

決済サービス提供企業は、より多様なユーザーやショップに対応できるように、汎用性の高い仕組み作りが求められる

加えてNPでは、この「汎用性の高い仕組み」を、他社の模倣ではなく独自で考えて生み出すことを大切にしています。これが、NPにおいて「原理原則を見つけ出そうとする人」を必要とする2つ目の理由ですね。「すでに誰かが考えたシステムを、そのまま転用しよう」という発想ではなく、「理想的なあり方」を自分達でゼロから追究して形にしていく。それによって独自のポジションを築いていく、さらには自分達が考える「理想的なあり方」を世の中に提唱していく。よく言われている言葉を使うと「イノベーションを起こす」ということです。

自分達で「理想的なあり方」を追究して、「汎用性の高い仕組み」を築いていく。その過程において必要な心構えは、いわゆる「ビジネス」的な、「目の前のお客さんに価値を提供しよう」ではないんですよね。上手くいくかどうか保証がない中で、細かい検証を重ねていく。そしてその中から「今はこれが通説になっているけれど、本当にそれで正しいんだっけ」「俯瞰してみるとこんな傾向あるけど、この傾向から抜け出したら強いのでは?」と問いを立て、検証を進めていく。独自の仕組みを作るためには、こうした研究でおなじみのプロセスが必要になってくるのです。

「時間をかけられるかどうか」という趣味嗜好の領域

「汎用的な仕組み作り」に最も必要なものは、おそらくスキルではありません。ある程度の思考力を持ち合わせていれば誰でも、時間をかければ法則を見つけることができると思っています。問題は「成果が保証されていない答えのない問題に、自分の時間をかけ続けられるかどうか」です。

例えば「データ分析」。数万件のデータであれば、生のデータを1個ずつ時間かけて眺めていると語りかけてくるものがあるんです。しかし多くの人は、すぐにその数万件を集計して平均や中央値といった単純化された情報から気づきを得ようとします。理由は簡単、数万件のデータを1つずつ見るのはものすごく大変だからです。しかし「集計」の過程で、多くの要素が削ぎ落とされてしまう。そして多くの場合、その削ぎ落とされた要素にこそ「本質」にたどり着けるようなヒントが詰まっているんです。

アカデミックな研究に携わっている人にとって、このお話には少なからず共感できる部分があるんじゃないでしょうか。実験データを分析しても何も見えてこない、やり方を変えてみてもさっぱり見えてこない。困り果てながらひたすら同じデータを眺め続ける。そんなことを数ヶ月やってみると、急に何かが見えてきたりする。こうした経験は、研究をしていれば多くの方が持っているものかなと思っています。

NPで「汎用的な仕組み作り」をする際にも、似たような考え方が必要になります。眺める対象が「データ」とは限りませんが、具体的な情報や出来事を注意深く観察することはとても大切です。一方で「少し考えればすぐに成果を出せるような仕事」も世の中にはたくさんあります。そんな中で、答えが出るかもわからないようなところに時間をかけられるかどうか。これはもう、趣味嗜好の領域なんでしょうね。まだまだ知らない世界があるかもしれないから、とことん調べていきたい。理由は、ただ単に楽しそうだから。こうしたモチベーションでついつい突き詰めて考えてしまうような人にとっては、「汎用的な仕組み作り」はとても魅力のあるお仕事だと思っています。

研究テーマに関わらず「研究そのもの」の経験が糧になる

これまでお話してきた「原理原則を見つけ出そうとする人」には、もちろんNPに入社して活躍していただきたいという思いはあります。ただ個人的にはそれ以上に、「イノベーションを起こす人材」として理系院生がもっと世の中で活躍してほしいなと思っています。

特に博士課程にてしっかりと研究をされてきた方に対しては、「研究という経験を通して、イノベーションに必要な資質を身につけられているんだよ」と声を大にしてお伝えしたいですね。つまり「みなさんのすごいところは〇〇というテーマを研究していたことではない。むしろ、悩みながらも研究をやりぬいたことそのものがすごいことなんだ」ということです。「大学で勉強したことは役に立たない」と就活などで耳にすることも多いかもしれませんが、決してそんなことはない。確かに、研究テーマや勉強した内容がそのまま活きるケースは少ないのかもしれません。それでも、誰もやったことがない未知の領域に足を踏み入れ、模索しながら情報収集をする。こうした経験を通して培った体系的な力は、新しいモノやサービス、概念を生み出すにあたって大いに役に立ちます。私自身は博士課程に進まなかったのですが、それでも学部時代に泣きながら研究をしたことが血肉となって、NPで成果を出せていると感じています。

一方で院生の方々って、様々な選択肢に触れたり、自身の特性をどのように活かすのかを考えたりする機会には、おそらくあまり恵まれていないんですよね。先輩がコンサルに行っているから、あるいは大学で大手企業から推薦が来たからといった理由で、他の選択肢を知らないまま自身の進む道を決めてしまう。それは非常にもったいないことだなと思います。

ぜひみなさんにはNPの社員とはもちろん、他社さん含めていろいろな人ともお話をしてもらいたいです。そして自身の性質や培ってきた力をどのように活かしていくのか、じっくり考えてほしいなと思っています。私個人としても、みなさんとお話できることを楽しみにしています。何かを深く追究した人には、どこか独特の世界観があるんですよね。その世界観に触れることがとても好きなので、「就活」や「採用担当者」といった枠組みを取り払って、皆さんの研究や論文、あるいは別領域で深く追究したことのお話をたくさんお聞きしたいなと思っています。

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