LIFULL社に聞くミッション実現のためのオフィスづくり。「働きやすさ」より大切なもの。

執筆者: 坂根扶美
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LIFULL社に聞くミッション実現のためのオフィスづくり。「働きやすさ」より大切なもの。

執筆者: 坂根扶美

ThinkAboutを運営するネットプロテクションズは、会社づくりにおいて、人や仕組みと共に、人が働くオフィス空間も重要な要素だと考えています。2018年にはオフィス移転を検討しており、オフィス移転プロジェクトのメンバーでもある坂根が、独自のコンセプトでオフィス移転をした株式会社LIFULL(ライフル)に伺い、お話を伺いました。
※株式会社LIFULLは、日本最大級の不動産情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフル・ホームズ)」等の住生活情報サービスを提供する会社です。

“自分の能力をもっと発揮したい”と思える環境

LIFULLは、2017年4月に本社を東京・半蔵門に移転しました。新オフィスは「ENGAWA(縁側)」というコンセプトのもと、新鮮な出会いと自由な発想を育むつながりの受発信地として設計されています。築50年のオフィスビルを一棟まるごとリノベーションし、社内外の人たちが積極的に触れ合える仕組みや仕掛けがあります。

1階には社外の人も利用できる社員食堂兼カフェが、2階にはさまざまなビジネスパーソンのためのシェアオフィスが併設されています。カフェやシェアオフィスでは、社内外の人によるイベントが連日開催されています。

ビルの1階に社員食堂兼カフェが併設されている。
ビルの1階に社員食堂兼カフェが併設されている。
一般の方も利用できる。
一般の方も利用できる。
コワーキングスペース
コワーキングスペース

執務スペースも、社員同士のコミュニケーションを活性化させるための様々な工夫があります。営業職を中心に「フリーアドレス」を導入したり、本社以外のオフィスと映像でつないだりしています。他にも、全フロアの中心である5階にだけ会議室を設けることで、社員が定期的に移動する機会を保っています。一方で、一人で集中する時のために「集中ブース」も用意されています。

一部フリーアドレスを導入した執務室の風景
一部フリーアドレスを導入した執務室の風景
1人で集中するための「集中ブース」
1人で集中するための「集中ブース」

このオフィスを通して目指す理想の会社像について、オフィス移転プロジェクトメンバーの安藤智彦さん、糸井崇さんにお話を伺いました。

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新しいサービスを生み続ける環境づくり

ーー本日はよろしくお願いします。本当に素敵なオフィスですね。こちらのオフィスは「人とのつながり」を重視しているとお伺いしましたが、どういう経緯でその考えにたどり着いたのでしょうか。

その話は、オフィス移転の話題がまだ出ていなかった2014年に遡ります。当時、マネージメント層向けの社内研修の一環で「仕事に好影響を与える理想のオフィス環境を考える」というテーマについて検討していました。その中で、オフィスに関わることで、大きく三つの課題を感じました。

一つ目は、社内のコミュニケーションが希薄化していたことです。創業時は人とのつながりが非常に濃い企業でしたが、規模が大きくなるにつれて(当時社員は500名以上)、つながりが薄くなっているような感覚がありました。
二つ目は、社外の人とのつながりが少なかったことです。営業職以外は社外の方と直接話す機会はあまり多くありませんし、社員の性格的にも内弁慶というか、社内にばかり目が向いている人が多い印象でした。
三つ目は、会社の考え方や活動を広報する機会が少なかったことです。社外とのつながりが少ない話とも重なりますが、自分たちの新しいサービスのことや、どんな想いで取り組んでいるかなど、外部の方に知っていただく機会が少ないと感じていました。

そこで、それらの課題を解決するために、「縁側」をモチーフにした空間を作ろうと提案したのです。縁側は、家の内部と外部が交わる日本家屋独特の空間です。そういった空間をオフィスに作ることで、社員一人ひとりが外の新しい情報に接する機会が増え、新たなアイデア創出とイノベーションを促進できるのではないかと考えました。また、それにより我々のミッション達成スピードが加速することをイメージしていました。

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私たちはミッションとして、世界中の人たちを幸せにするため、「あらゆる人々の暮らしや人生を満たすサービスをつくり続けること」を掲げており、新しいサービスを生み出すためには「人が直接集まる場の力」が重要だと考えています。もちろん、働き方の多様化によって、直接の会話が不要な仕事もあります。しかし、共通の時間を過ごして濃いコミュニケーションがなければ、新しいものが生まれる化学反応は起きづらいのも事実。テーマが決まっていない曖昧な会話の中からこそ、新しいアイディアは生まれると思うのです。また、その場に多様な人がいればいるほど、化学反応が生まれやすいと感じています。

そもそも、サービスやプロダクトというのは、作り手が一方的に作るものではありませんよね。色々な手法があると思いますが、客観的な調査だけでは良いものが生まれるとは思いません。顧客との対話、使い手と一緒になって作ることが大切です。そう考えると、新しいことを創発するための会話には内も外も関係なく、会社という単位すら外して考えた方がいいと思います。

 

とにかく面白そう!と思ってもらう仕掛け

ーー「ENGAWA」というコンセプトは、単純に働きやすさを求めたものでも、目の前の課題を解決するだけのものでなく、会社のミッション達成を加速するためのものなのですね。当初はオフィスの一部に空間を設ける予定が、オフィス移転の中心コンセプトとなり、オフィス移転のプロジェクトに発展したと伺いました。コンセプトを具現化していく過程や、社内に浸透させる上で、大変だったことや意識したことはあるのでしょうか。

オフィス移転が正式に決まったのが2016年6月で、実際の移転が2017年4月。十分な時間がないことが一番大変でした。意思決定できるメンバーでチームを作り、コンセプトの精査や具体的な内装に落とし込む作業はコンサルティング会社やデザイン会社と一緒に行いました。

1階のカフェスペースと2階のシェアオフィスと上層階の執務スペース、それぞれコンセプト毎に別のデザイン会社にお願いしたので、関係各社との調整はかなり大変でした。ただ、上流のコンセプトがしっかりと固まっていたので、具体化する中で認識がずれることはほとんどありませんでした。

具体的なことを決めるときは、それぞれの機能やファシリティに対して投資対効果を試算して、採用可否を行いました。しかし、その中には投資対効果を試算しにくいものもたくさんありました。例えば、どのような椅子にするかは非常に悩みました。椅子の質を高めることが、どれだけの成果を生むかは数字で測れません。1000人分の椅子となるとかなりの費用になるので、判断に迷う場面もありましたが、働く人にとっては大きな問題です。そういう局面では、「いい椅子になったら、みんな一生懸命頑張ってより成果を出します!」といった感じで押し切り、働く人のことを中心に決めていきました。施策による成果をより多くできるなら、投資する価値は十分にあると判断できますから。

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また、社員に浸透させる上では「とにかく面白そうだから早く新オフィスを使いたい!」と思ってもらうことを心がけました。新オフィスには、社内のコミュニケーションを促進したいとか、毎日でも社外の人と交流するイベントが開催されてほしいとか、プロジェクトチームとしての狙いはありましたが、コンセプトを小難しく話しても社員には伝わりません。それよりも楽しさを伝えて、自発的に使い方を考えてもらうことが大切だと考えたのです。月に1度の進捗報告の場では堅い話はほとんどせず、「トイレの数が2倍になります!」「カフェがあってイベントができます!」など、分かりやすいメッセージを伝え続けました。

「働きやすい」ではなく「働きたい」オフィス

ーー説明して理解してもらうのではなく、「楽しそう」という感覚を通して当事者意識を生んだのですね。実際にオフィスを移転してから4カ月程経ちますが、狙い通りの効果は出ていると思いますか?

社内の雰囲気は想像以上に変わりました。働いているメンバーは変わっていないのに、社内に「ENGAWA」というストーリーが生まれたことで、社内外で積極的なコミュニケーションが生まれているように感じます。例えば、2階のイベントスペースで当社のデザイナーと他社のデザイナーがいっしょにイベントを開催したり、外部の方が企画したイベントに当社の社員が参加する姿も多く見られるようになりました。

ただ、移転が完了しても、オフィスは完成ではありません。現在、アイデアをすぐに形にできるメイカースペース「LIFULL Fab」を建設中です。ここではShopbotや3Dプリンター、レーザーカッターなどデジタルファブリケーション機材を導入し、社内外のクリエイターによるものづくりを支援していく計画です。

また、オフィスの中には余白のスペースをあえて残しています。今後は、社員参加型で余白のスペースの使い方を考えます。ある意味では、永遠に未完成のオフィス。社内の人を巻き込み、さらに働きたくなるオフィスにしていきます。

ただし、目指してるのは「働きやすい」オフィスではありません。「働きたい」「会社にきたい」といったワクワク感が生まれる場所にしたいんです。

ワクワク感を生むためには、いい意味でのプレッシャーも大事だと思います。プレッシャーとストレスは違うと考えています。ストレスは受け身な姿勢から起こるもので、プレッシャーはより良いもの突き詰めるために出てくる主体的な心情。そういう気持ちが湧く環境を作りたいんです。

LIFULLには、メンバーが主体的に動く仕組みは整っていて、会社と軸さえ合っていれば、各局面での判断は安心してメンバーに任せられます。任せられるからこそ、メンバーのパフォーマンスを上げることが、事業の成果にもダイレクトにつながる。社員が会社に来るのが楽しみで仕方ない状況を作って、メンバーそれぞれが最大限の力を発揮できれば、より大きな個人の成長や事業の成果につながるのです。

これからも、「自分の能力をもっと発揮したい」「早く会社に行きたい」と思えるようなオフィスを、社員みんなで作れたらと思います。

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インタビューを終えて

「働きやすい会社」という受け身なものではなく「働きたい会社」を作るというのはとても素敵な考え方だと思いました。また、単純にワークスペースとして環境を整えるのでははなくて、会社のミッションやビジョンを達成するために、オフィス環境も整えていらっしゃる点が印象的でした。個人がしっかりとしたマインドセットを持ち、それを生かす会社の仕組みがあり、さらに個人の気持ちを加速させるオフィス環境があれば、会社はどんどん前に進みそうですね。とても勉強になりました。LIFULLのみなさん、ありがとうございました!

執筆者:坂根扶美
研究の道を志して大学院に進学するも、学生時代に立ち上げた「新妻カフェ」の企画運営経験から、
自分のアイディアを形にすること、人を熱狂させること、そしてその対価としてお金をいただくことの面白さを感じ、
「これってビジネスというやつでは!?おもしろーい!」と思い、民間就職の道へ。
ビジネスを楽しみつつも、自分らしく、飾らず、真っ直ぐ生きていける場所を探し求めた末、運命的にネットプロテクションズと出会い、2013年に入社。
入社後は法人営業、WEB企画、新卒採用・研修と幅広い業務に従事。
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