100%誰でも伸ばせる教育を目指す。個別指導塾STORYの挑戦

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100%誰でも伸ばせる教育を目指す。個別指導塾STORYの挑戦

ThinkAboutでは、次のアタリマエを作ることを目指し活動する方々にフォーカスをして、読者のみなさんと一緒にあるべき社会を考えています。

今回は、教育業界における次のアタリマエを目指して挑戦する、株式会社STORYの村中毎悟克(むらなかまさかつ)さんにお話を伺いました。

STORYは一人一人に徹底的に向き合う個別指導塾を運営しています。

学力向上はもちろんのこと、「生きるための汎用的な力」の向上を実現。その背景には、様々な研究や、何百人の指導から導かれた、教育理論があります。

村中さんが感じる、教育業界への課題とは。
目指すべき100%の教育が実現できる社会とは。

お話を伺いました。

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村中毎悟克

大学在学中より大手進学塾「浜学園」にて講師を務め、最難関クラスの灘コース・甲陽学院コースを担当。大学卒業後、株式会社リクルートエージェント (現リクルートキャリア)に入社。神戸支社にて営業リーダーを務める。一部保護者の強い要望を受け、週末には家庭教師として指導を続ける。リクルートを退社後、プロ家庭教師として独立。業界屈指の評判を築いたのち、STORYを開塾。テクニック・解法・各志望校の過去問を研究し続けることは勿論、生徒の性格・特性に注目した独自の指導法を確立。
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100%の医療が求められるように、教育でも100%を目指す

-早速ですが、村中さんが教育業界で目指していることをお伺いできますでしょうか。

私たちが目指しているのは、「誰でも発達できる教育」の実現です。それも、単なる学力の向上を目的としておらず、生きる上で重要な汎用的能力を伸ばす「スタンスビルディング」と、自分に合ったキャリア選択をするための「ストーリウィービング」の二つに力を入れたいと考えています。

私は大学時代から10年ほど教育業界で働いていますが、本当の意味で誰でも発達できる教育を見たことがありません。私自身、プロ家庭教師として一定の評価を得ていましたが、完璧ではありませんでした。20人くらい生徒がいると、何名かはうまくいかないこともあります。

でも、人の発達には何かしらの論理があるはずです。その論理をしっかりと解析して、再現性をもたせることができれば、100%誰でも伸ばせる教育を実現できます。

しかし、教育業界には言い訳が多く、100%の教育を目指している人はほとんどいないと感じます。教育の結果が出なくても「教育は誰にでも響くものではない」「子どものスタンスに左右される」と、誰かのせいにしてしまうのです。でも、医療で考えたらどうでしょうか。失敗した時に、患者さんのせいにはしませんよね。教育は、今や医療と同じくらいの重要度を持つもの。例え現在100%のモノを提供できないとしても、100%を目指して改善を続けるのが本来のスタンスだと思います。

他にやる人がいないなら、自分がやる。そう思って、教育業界で活動しています。

自分に合ったキャリアを選び、壁にぶつかっても歩み続けるための力

-100%の教育を目指しているということですが、具体的にはどのような教育を行っているのでしょうか。

今力を入れているのは、スタンスビルディングです。具体的には、個別学習指導塾にて、汎用的能力が身につく指導を行っています。学力向上は当然として、それ以外に生きていく上で必要不可欠な能力を身につけることを目的としています。

私たちは汎用的な能力を15に分解していますが、その中で一番重要だと考えているのが「自己信頼能力」です。自己信頼能力というのは、例えば、何かの壁にぶつかった時に「自分でもできる」と思える力です。できると思えば、改善に目が向き主体的に動くことができますし、失敗しても諦めずに何度も挑戦できます。長い人生、誰しもたくさんの壁に直面するものなので、自己信頼能力が強ければ強いほど生きやすいと思うんですよね。

様々な研究やデータを駆使して、自己信頼能力に限らず、汎用的な能力を誰でも身につけられる教育プログラムを実現しています。現状は、一人の生徒の状況を分析するために50時間近く費やし、その上で、研究から明らかになっている方法や、これまで実践してきた中で見つけた法則を用いて、生徒が確実に発達するような指導を行っています。

-データを駆使して再現性を持たせているのですね。もう一つ力を入れようとしている「ストーリーウィービング」もご説明いただけますか?

簡単に言えば、自分のモチベーションの源泉を理解して、自分に合ったキャリア選択をできる力を育てよう、ということです。新卒の3割の人が3年以内に退職すると言われているように、多くの人は自分に合った会社を選べていません。自分のことも社会のことも分からないから、会社をどうやって選べばいいのかも分からない。まずは、自分の原動力が何かを知ってもらいます。

同時に、決めた後、新しい気づきがあった時にキャリアを選び直す「キャリアドラフト」の考えの重要性も伝えています。決めたことに縛られ過ぎると、選択肢を狭めてしまう可能性があります。例えば、若い時に「お茶が好きだからお茶の営業しかやらない」と決めて関係ないことを一切しなくなると、可能性が狭まってしまいますよね。

仮決めすることと幅を広げることのバランスは、非常に難しいと思います。方向性を決めることも大事ですが、若い時は、決めてからも幅を広げ続けることが大切。理想は、自分の原動力に沿って得意なことを活かせる道を選択しつつ、新たな気づきや社会の動向を捉えて、柔軟にキャリアを変更することだと思います。

ただし、適切なキャリア選択をできたとしても、しんどいことは必ずあります。壁にぶつかった時、自己信頼能力が低いと、選んだ道が本人に合っているにもかかわらず、選択が間違っていたと感じてしまうことがあります。適切な選択ができても、自己信頼能力がないと幸せに生きられない。そのため、まずはスタンスビルディングに力を入れ、開発段階のストーリーウィービングは大学生インターンのみに提供しています。

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教育業界を底上げしたい

-適切な選択をする力と選択した道で困難を乗り換える力、どちらも大切ということですね。そもそも、村中さんはなぜ教育に関心を持っているのでしょうか。

教育に関心がある理由は、いくつかあります。

一つは、私自身、情熱を持って取り組めるものがなくて、苦しい時期を過ごした経験があることです。大学入学後、母の商売がうまくいかず中退することになり、フリーターをしていた時期があります。その頃は、前に進んでいる感覚がなくてしんどかった。それぞれの環境で一生懸命やれば認められますが、やりたいことをやってる感覚も、自分の可能性を全部使えてる実感もなくて、鬱屈感がありました。そういう経験があるので、自分らしいキャリアを歩める人を増やしたいと考えています。

もう一つ大きな出来事として、人に働きかけることで人を変えられた経験があります。私の母は、事業を畳んだ後、生きがいを失って精神的に病んでしまいました。そんな母に対して働きかけ、立ち直ってもらえたことが心に強く残っています。それは教育に関わる前の出来事でしたが、僕にとって、初めて人を変えられた経験。そこに喜びを感じたのだと思います。

その後、教育に直接的に関わり始めたきっかけは、NPO法人「ドットジェイピー」を立ち上げた今村岳司(いまむらたけし)さんが議員演説をしているのをたまたま聞いたことでした。

当時の僕は、働く大人に対して良いイメージがなく、自分がどうやって生きていくのかもイメージできずにいました。そんな僕にとって、今村さんの姿は衝撃的でした。今村さんが西宮市議を務めていた時期で、「自分の人生は、西宮に住む50万人のために使う」と話していたことに感銘を受けたんです。

自分のために生きるのではなく、何かを背負っている。その姿を見て、自分も何かを背負いながら生きたいと思っていることに気がつきました。打ち込むべき事柄こそ見つからなかったものの、自分がありたい姿が見つかった瞬間でした。

今村さんが過去に働いていたのが、浜学園でした。同じ場所で働けば、今村さんのように鍛えられるのではないか。そんな安易な考えで浜学園に飛び込んだことが、教育に関わり始めるきっかけでした。

その後、教育業界に身を投じる中で、大きなやりがいを感じると同時に、課題も目に止まりました。言葉を選ばずに言えば、関わる人の人材レベルがそこまで高くないと感じてしまったのです。
私は自分に才能があるとは思いません。世の中には自分よりもはるかに優秀な人がたくさんいます。それなのに、教育に携わって2年足らずで結果を出すことができました。努力はしましたし、しんどい思いもしましたが、平凡な自分が2年足らずで結果を出せることに、疑問が湧いたんです。

一方で、100%の教育には程遠いのに、誰も100%を目指していない。誰もやらないのであれば、自分がやろう。そう考えて、教育業界で挑戦することにしたのです。

個人の成長の責任は教育にある

-誰もやらないなら、自分がやるしかないと。そんな思いで様々なことに取り組んでいるかと思いますが、今後の展望を教えてください。

今後は、AIなどを活用したEdTech領域に進出したいと考えています。人の発達を分解することもモデル化することも人力では限界なので、テクノロジーを活用しようと。日本はEdTech領域で他国に遅れを取っていますが、細かいことが得意な日本人の気質には、むしろ合っている産業だと思います。今あるノウハウをテクノロジーの力でさらに強化して、海外で勝負したいと考えています。

また、今後の展開は3つのステップで描いています。まずは「お金はかかるけど、STORYに預けたら子どもが必ず発達する」という教育モデルを作ること。その次のステップでは、その教育を無償化して多くの方に届けること。小学校の学童などで無料で提供することを検討しています。

さらにその先では、ITの領域に踏み出し「WEB上でSTORYにアクセスすれば、誰でも発達できる」という状態にしたいと考えています。例えば、海外の田舎で生まれて、満足な教育を受けられないような環境にいても、STORYにアクセスすると発達が促されて未来が開ける。そういう仕組みづくりを目指しています。

教育のゴールは、「個人が、自分の人生を幸せに導ける状態にすること」だと思います。幸せになれるかどうかを個人の能力に委ねるのではなく、社会が歩み寄るべきだという考え方もあるとは思います。しかし、教育を会社の研修と置き換えて考えると、研修期間を終えても現場で力を発揮できなかった時に、全てを現場の歩み寄りに任せるわけにはいかないと思うんです。研修を改善してより精度を高くするように、教育も改善するスタンスを忘れてはいけない。

今やっていることを見直して、改善し続ける人や組織が、教育業界にあふれる。それが、教育業界の次のアタリマエではないかと思います。

執筆者:ThinkAbout編集部
ThinkAboutを運営するネットプロテクションズの社員によって構成される編集部です。
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