オフライン・オンラインを駆使した新しい環境問題へのアプローチ

オフライン・オンラインを駆使した新しい環境問題へのアプローチ

時代に逆行した無料交換マーケットから、環境保護についてのサイトマップやアプリまで。そうした問題に関心の高い若年層も意識しつつ、美意識も盛り込んでアプローチするイタリアの環境保護活動には、一般の人の関心を引き付ける要素が詰まっている。

Words Miki Tanaka Photos Stefano Triulzi

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ヨーロッパにおける環境問題はEUが主導して対策を進めており、2019年、EU理事会で使い捨てプラスチック製品の流通を21年までに禁止する法案が採決されたことで、最近では身近なところから人々の関心が高まっている。しかも最近では、スウェーデン人の16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの登場の影響もあってか、そうした流れを牽引しているのがミレニアル世代をはじめとする若い世代であるというのも実に興味深い。

イタリアの主要産業であるファッションやデザイン業界では、“グリーン”や“サステナビリティ”に取り組むブランドが加速度的に増え、最近のイタリアは北欧に次ぐ勢いで環境問題に積極的だ。ブランドのイメージアップやトレンド追随という思惑はさておき、現実問題として、気候変動による(と思われる)異常な悪天候のせいで、美しき水の都ヴェネチアが水没の危機にあるというのだから、イタリア国民は自分事にならざるをえないという事情もあるのだろう。

“都会の資源”を見直す無料マーケットやお洒落な再生品ブランド

いまほど環境対策の話題がホットになる前から「Giacimenti Urbani(ジャチメンティ・ウルバーニ)」という環境団体は、リサイクル、プラスティックフリー、ごみの軽量化や分別など、さまざまな環境保護のための運動を行ってきた。これを主宰するのがジャーナリストのドナテッラ・パヴァンさん。もともと環境問題にまつわる執筆活動を続けてきたが、「記事を書いているだけでは環境問題は解決できない」、と2013年に同団体を立ち上げた。ちなみに、ジャチメンティ・ウルバーニとはイタリア語で「都会の鉱床」という意味で、要するに街中に埋もれている資源=リサイクル品を活用しよう意思を暗喩している。

ジャチメンティ・ウルバーニ」を主宰するDonatella Pavan(ドナテッラ・パヴァン)さん。1960年パヴィア生まれ。若いころから環境問題に興味をもち、ジャーナリストとしてイタリアの有名紙誌『Dレプッブリカ」『IOドンナ」『エル・デコ」やオンラインマガジン『イル・ファット・コティディアーノ」などに、主に環境をテーマとした記事を寄稿。2013年より「ジャチメンティ・ウルバーニ」を主宰。上記同団体主催のイベントに関してのスケジュールや場所はサイトを参照。

同団体の多彩な活動のなかでも、不定期に行われているもののひとつが、「Spazio Tuttogratis(スパッツィオ・トゥットグラティス=イタリア語で『全品無料スペース』)」というプロジェクトだ。これはその名のとおり、まだ使える状態なら種類・数を問わず皆が会場に不要品を持ち寄って、それを必要とする人たちが最高5個まで持ち帰れる“無料マーケット”である。パヴァンさんは言う。「何も持ってこなくても必要なモノをもらって帰ってもいいし、逆に不要品を提供するだけで何も持っていかない人もいます。事前予約や入場料は要りません。ここに来るのは、恵まれない人たちだけではなく、コレクターやマニアなどもいますし、特にお金に困っているわけでなくても、自分が必要としているモノを見つけて喜んでもらっていく人もいますよ」。得をする人はいても、損する人は誰もいない。資本主義の流れに逆行する、実にユニークなマーケットなのだ。

何でも無料でお持ち帰り可能な「スパッツィオ・トゥット・グラティス」。

そしてもうひとつ、同団体が行っている活動で注目されているのが、「Mercato Circolare(メルカート・チルコラーレ=循環マーケット)」という、リサイクル素材や、生分解可能な素材でつくられているものだけを扱うマーケットだ。そのカテゴリーは、洋服やアクセサリー、本や照明など広範囲な分野に及んでおり、回を追うごとに参加ブランドも増えている。

リサイクル素材などを使ったブランドだけが参加。製品はどれもお洒落。

その際、同時開催されて好評なのが、主に子どもをメインにしたリサイクル素材を使って作品をつくるワークショップと、「レスタート(再スタート)・パーティー」という、故障したり使わなくなった電化製品を修理したり、作品としてほかのものにつくり変えるサービスだ。とはいえ、パヴァンさんいわく、「実は『レスタート・パーティー』については、協力してくれる技術者が少ないことや、すでに製品が製造中止になっていて修理のための部品が手にはいらないという問題を抱えています。残念ながら、修繕するより新しいモノを買わせる仕組みになっているのが、イタリアの電化製品業界の現状です」。

これはまさに日本も同様。修理してもう一度使おうという意識は、イタリア以下かもしれない。イタリアには少なくとも、洋服や靴のお直しをする店や家具などを修繕する職人がたくさんいる。それに目をつけ、同団体ではリペアの店に始まり、リサイクルショップ、不要品の寄付を受け付ける団体、リサイクル素材を使った商品を扱う店、量り売り(=容器の減少)ができる店舗など、環境保護に役立つスポットのガイドマップをオンライン上で展開しているのだ。

電化製品の修理を行うサービス「レスタート・パーティー」。

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