建築家はあなた自身。家づくりに新風を巻き起こす若き起業家の挑戦

建築家はあなた自身。家づくりに新風を巻き起こす若き起業家の挑戦

家づくりの常識が覆されようとしている。秋吉浩気氏が率いるVUILDが開発したのは、ユーザー自らが設計し、ローコストで理想の住まいを実現できるプラットフォーム。そこに至る経緯と理念について、同社の事業を共同開発するデザインファームBIOTOPEの佐宗邦威代表が聞いた。

Words: Kyozo Hibino Photo: Takumi Ota

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段階的にインフラをつくってきた

佐宗 秋吉くんと初めてお会いしたのは2016年。まだVUILDの創業前で、研究論文の話を聞かせてもらったんですよね。まずは、秋吉くんが何を研究してきて、それをVUILDでどう実現しようとしているのか、を教えてもらえますか?

秋吉 大学では建築の意匠設計を専攻していました。2008年にリーマン・ショック、2011年には東日本大震災があり、大規模・中央集約型モデルの限界を目の当たりにした学生時代でした。そこから、より自律分散型の建築やコミュニティをつくれないかなと考えるようになったんです。

当時はちょうど、世界的に広まりつつあった「ファブラボ(多様な工作機器を備えた市民開放型の工房)」が日本にも入ってきたタイミング。市民のものづくりの能力を高めることでコミュニティを形成していくという考え方に共感しました。その影響もあり、個々人がPC感覚でファブリケーション機器をもつ「パーソナル・ファブリケーション」について学ぼうと、大学院に進みました。そのときは院生の2年間だけ、そういう研究をするつもりでいたんですけど……。

秋吉浩気/VUILD 代表取締役CEO。1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科を卒業し、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科X-DESIGN領域にてデジタルファブリケーションを専攻。2017年にVUILDを創業し、「建築の民主化」を目指す。デジタルファブリケーションやソーシャルデザインなど、モノからコトまで幅広いデザイン領域をカバーする。主な受賞歴にSDレビュー入選 (2018)、SDレビュー入選 (2019)、Under 35 Architects exhibition Gold Medal賞(2019)、グッドデザイン金賞(2020)。

佐宗 けど、そうはならなかった。

秋吉 はい。日本にもファブラボが増えていくなかで、そこがエンジニアだけのコミュニティになってしまっている、もっと日常的な実践の場にできないかなという問題意識が芽生えてきて。そのためには、市民が自分でデザインすることを容易にすると同時に、技術者や専門家の“中”だけでなく、もっと“外”の産業に対して開かれたコミュニティにしていくべきだと思ったんです。

当時、海外の方から「日本ほど森林資源が豊富で、ナチュラルな木材を手に入れられる国はない。もっと活用すべきだ」と言われたことがあって。林業を営む人たちのところにファブリケーション機器を届けることでイノベーションが起きやすいのではないか、という発想が生まれました。

VUILDを起業し、実際に林業関係者にお会いして話してみると、彼らが抱えているイシューとぼくらが提供できるソリューションが合致していることがわかってきました。木材はサプライチェーンがすごく長いこともあって、彼らが丸太を1本売っても利益は数%しか出ない。でも、自分たちで付加価値をつけてプロダクトアウトできれば、利益率を極限まで高められる可能性がある。「じゃあ、やってみましょう」というかたちで広がっていきました。

佐宗 そのファブリケーション機器というのが、個人や小規模事業者向けの製品「ShopBot」ですね。そこから先はどんな展開が?

1995年にアメリカで開発され、世界で初めて低価格で販売された木材加工専用CNCルーター「ShopBot」。コンピュータ制御により、切断や穴開けなどの精密な加工ができる。日本国内の導入拠点は70カ所以上。

秋吉 もともと想定していた通り近くに機械が無いと製作ができないという問題があったので、「EMARF」という流通サービスを始めました。デザインや部品の加工など、データを入力しさえすれば欲しかったものを安価で届けてもらえる。ShopBotで製造拠点をつなぐ生産プラットフォーム、EMARFでデザインをシェアできる流通プラットフォームと、段階的にインフラをつくってきたイメージです。

そしていま、3段階目として佐宗さんのご協力もいただきながら取り組んでいるのが、デジタル家づくりプラットフォーム「Nesting」(現在はベータ版)ですね。これは、デザインができないと製作ができないという課題への挑戦です。

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