2021年12月15日、株式会社ネットプロテクションズホールディングス(以下、NPHD)は東京証券取引所第一部に上場いたしました。

多くの企業では、経営層やバックオフィスの一部メンバーなどを中心にチームを形成し、IPO準備を推進することが一般的ではないかと思います。
NPHDにおけるIPO準備は、経営層や法務、財務といった一部のメンバーに閉じず、IPO準備に関わりたいと手を挙げた有志メンバーを中心に、全正社員に対してフルオープンなかたちで推進されました。
今回は、そんな「自律・分散・協調型組織」を掲げる企業だからこそのユニークな準備プロセスや、その中で感じたIPOや会社に対する想いについて、代表取締役柴田とIPOワーキンググループ※メンバーの長谷川に伺いました。

※ワーキンググループ(以下、WG)とは:業務リソースの20%を使って、部署業務ではなく想いのあるプロジェクトに参画できるNPHDの人事制度

IPO準備に関わるメンバーを全正社員から公募したのは、どのような背景や狙いがあったからなのでしょうか?

柴田
「後払い決済」という事業モデル上、今後のさらなる事業展開において認知度と信用度の向上は重要であり、IPOは会社にとって欠かせないプロセスだと以前から考えていました。
本格的にIPO準備を始めるにあたり、IPO-WGを設立し、IPO準備に関わることへの意思・やる気のあるメンバーを全正社員から募ることにしました。

一般的な企業では、IPO準備は限られたメンバーのみでクローズドに推進され、多くのメンバーにとってIPOは自身とあまり縁のないイベント、もしくは、上場承認された時点で初めて自社がIPOすることを知るようなことも実態としてあるのではないかと思います。
NPHDでは、会社の事業・組織に関するプロジェクトの推進にあたり、全正社員からメンバーを公募することは、今回のIPO準備に限らず通常のことです。
NPHDでは「ティール型組織」により社員の自己実現と社会発展の両立を目指すという考えのもと、あらゆる経営情報の意思決定ログをフルオープンにすることや、興味ある仕事に自ら手を挙げる、新たに創る機会があること、関係者全員で理想に向かうために議論することなどを行っています。

私自身としても、重要な業務を推進するメンバーを決めるうえで大切なことは、その領域の知識や経験が元からあるかどうかよりも、やりたいという確固たる意思を持っているかどうかだと思っています。内発的動機をもつメンバーはモチベーション高く取り組み、その領域で成長しながらプロジェクトの推進を成していくと考えています。とはいえ、経験のある人がチームに全くいないのはさすがにリスキーなので、経験がある人をメンバーに交え初期のオンボーディングや監修をすることは必要に応じてやるべきだと思っています。

IPO-WGに参画することに決めた理由、実際に取り組んだこと、当時の思いについて教えて下さい。

長谷川
将来の自分のキャリアを考えたときに、いつかコーポレートサイドでの知見や経験を得たいと思っていたタイミングでNPHDがIPOを目指すことが決まり、これは一世一代の挑戦機会となるだろうと思いWGへのジョインを決めました。
当時の私の通常業務としては、BtoCカスタマーサービスグループに所属し、主軸事業「NP後払い」の運用構築及び、チームのマネジメントを担っていたので、IR・企業財務・法務といったIPO準備の推進に必須となる知見はほとんど無いような状態でした。他のWGメンバーのうち三分の二も同様に経験がほぼ無い状態からのスタートでしたが、皆それぞれIPO準備に関わりたいという明確な意思や理由を持ったうえで参画していました。
IPO準備にあたり必要な知識は、具体業務に触れる中でキャッチアップを行い、並行してWGメンバーで書籍の輪読を行ったり自身で勉強したりすることで身につけていきました。「やりたいです!」と手を挙げたからには、知識が無いから推進できないというのは言い訳にならないと思っていたので、自分もメンバーも本腰を入れて取り組んでいましたね。

WGでの具体的な取り組みとして、初期は内部監査室や金商法に基づく法定開示、J-Sox対応の推進体制構築などのIPOに必要な機能を中心となってつくり、体制が軌道に乗ってからは、全体スケジュールの管理や審査・オファリング対応の推進、社内全体へ情報発信といった部分を担っていました。
IPOは多岐にわたるステークホルダーが存在するため、各プロセスでの推進難度がかなり高かったのですが、会社の一大イベントとして過誤があってはならないと思い、経営層や社内の必要部署に適宜情報連携を取りながら進めたり、証券会社などの外部の方々の知見を借りたりと、推進においてかなり創意工夫を凝らしました。

柴田
IPO-WGの取り組み全容を見ている中で、こんなに広範な意思決定までWGに任せなければよかったなと思ったことは一度もありませんでしたね。適宜情報連携しながら進めてくれたため、安心・信頼して任せていました。

長谷川
WGでの経験を通して、多くの企業では「誰が権限と責任をもつべきか」が問われるまでもなく大前提として定まっているのだろうなと感じました。対してNPHDでは、「特定の誰かに権限と責任が集中することが ①成果(意思決定の精度)②成長 ③幸福の最大化に本当につながるのか」という問いがありきで、WGをはじめとするさまざまな組織制度が構築されているのだなと改めて感じました。

全正社員にフルオープンにしていたIPO準備のプロセス、狙いや実際の効用は?

長谷川
IPO-WGの取り組みの一つとして、全正社員に向けて「IPO共有会」を月次で開催していました。IPO当日までのマイルストーンを開示し、月ごとの進捗やトピックを共有したうえで、社員からの質疑応答に回答するといった形式です。
狙いは、IPOにまつわる情報を全正社員にオープンにすることで、それぞれがIPOを自分事として捉えられるようになるための一機会とすること。会社にとってIPOはゴールではなく一つのプロセスに過ぎないと捉えた際に、どう会社をより良くしていきたいのかを今後も全員で考え、全員でアクションを起こしていく必要があると考えています。そのため、一部メンバーに閉じてIPO準備を進めることで、日頃の自身の業務とIPOとの接続が担保されづらかったり、いつの間にかIPOが終わっていたと感じる社員が増えてしまったりすることを避けたいと思っていました。

柴田
NPHDではIPOに限らず日々徹底した情報共有がなされており、重要度の高いプロジェクトの概要や進捗を知れる機会が担保されているという点で、社員は安心感を抱けるのではないかと思います。そういったオープンな環境だからこそ、事業や自身のチームをより良くするために必要な情報を収集し、意思決定に活かすという立ち回りもしやすいと思っています。
一方、もし自分が所属する会社に関するあらゆる情報がブラックボックスで、分からない情報が多すぎるといった状況が日常茶飯事だったら、自分で会社のことを主体的に考えて意思決定しようという気持ちはどんどん薄れていくのではないでしょうか。

長谷川
IPO共有会をすることについて、一見情報漏えいリスクが大きくなるのではと思われるかもしれませんが、「基本的にはあらゆる情報を開示する。一部内容によっては事後報告したり、抽象的な共有に閉じたりする」といった情報共有における確固たる方針は定めていました。共有する情報の機微性や取扱における留意事項点について毎度の共有会で伝えることも徹底していました。
IPO共有会には、毎回100名前後の社員が参加していました。正社員の総人数が200名前後なので、約半分もの社員が意義を感じて毎度参加していたことになります。質疑応答の時間には、新卒一年目や入社したばかりの中途社員からも、IPOへの理解を深めるための質問コメントが挙がってきていました。また、私の自部署業務においても、部署の新卒メンバーがプロジェクトの検討をするにあたり、IPOを加味した思考がなされているシーンも見かけました。
IPO共有会の実施を通して「全正社員がIPOを自分ごと化して捉えられるように」という当初の目的は達成されたのではないかと思っています。

柴田
IPOプロセスにひろく社員を巻き込んだことや、情報を全正社員にフルオープンにしたことによって、事業や組織を考える上での社員の自律性が高まった感覚があります。少し前だと、重要度の高い事業数値の検討に私自身もガッツリ入り込む必要があったのですが、権限移譲されたメンバーが誰かの指示ではなく自分自身で判断、決定していくという経験を重ねていったことで、事業数値を考えたりステークホルダーとのコミュニケーションを図ったりする上での観点・判断基準が身についていったと思っています。そういった判断の勘所を掴む社員が増えることこそ、会社全体の成長速度を上げることにも繋がっていくと考えています。

最後に、今後さらなる企業成長を目指す上で、大切にしつづけたい「組織」や「人」への思いを聞かせてください。

柴田
IPOを契機に、継続的に成果を出し社会に価値を還元していくことがよりシビアに求められるようになりますが、そのための最適な手段として、トップダウンな意思決定・権限委譲というやり方ではなく、引き続き「自律・分散・協調」の考え方に基づく組織運営を模索していきたいと思っています。

長谷川
NPHDは、はたらくメンバー同士が相互に信頼関係を築くことや、互いの可能性を信じながら事業運営ひいては企業運営を進めていきたいというスタンスを大切にしており、そうであるからこそ社員個人のモチベーション・幸福度の向上に繋がると考えている会社だと思っています。今後会社規模が大きくなっても、私自身の日常業務においては、そうしたスタンスを大切にし続けたいです。

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