2024年6月に開催される定時株主総会をもって、株式会社ネットプロテクションズホールディングス(以下、NPHD)、および株式会社ネットプロテクションズ(以下、NP)の取締役CTOを退任する予定の鈴木史朗。
CTO就任から20年間取り組んできたこと、それらを踏まえて退任に至った経緯、NPの今後の技術領域の体制について紹介します。
これまでのキャリアとCTOとしての取り組み
大学院で情報理工学を修了後、2社で研究開発の支援や金融システム開発の経験を経て、2002年にNPに入社しました。
入社後は世の中にない「後払いサービス」の立ち上げに参画し、誰もが利用できるサービスを目指した与信システムを構築。その後もサービスを軌道にのせるために、システム開発から販売管理の設計まで携わってきました。事業が拡大するにつれて重視していたことは、複雑なシステムや事象を紐解いて構造的な課題を抽出し、可視化するという「モデリング」です。事業の拡大に伴い組織も巨大化していくと、ともすれば部分最適に陥り、受動的な意思決定をせざるを得ないような「単なる技術屋」状況に陥ってしまいます。そのようなリスクを乗り越え共通認識を取り全体最適を図るためには、複雑になっているビジネス構造を可視化することが必須だと考えていたんですね。そこで「モデリング」の重要度を組織全体に理解してもらい、有機的に事業成長を加速できるような組織を目指していました。
CTOの退任を検討した背景、退任に向けた取り組み
このようにCTOとして20年間勤めてまいりましたが、「モデリング」の重要度を組織全体が理解し浸透したことをきっかけに、システム構築が進み、有機的な組織をつくることができました。このタイミングでCTOを退任し、私自身、そして技術組織ともに次のステージに進む時と考えたのです。
またNPの企業文化が浸透し機能が強化された組織において、一人が技術組織全体を統括する体制ではない方が、社員が自走し、主体的に業務に取り組むことができるのではないかと考えていました。
そこでこの意思決定してから退任に向けて3点取り組みました。
1)ビジネスアーキテクト組織を解体し、各事業部単位に再編
技術組織を各サービスやコーポレート単位に分化させました。
分化させたことで、サービス単位で事業部メンバーと共により主体的な企画や開発を行うことが可能になり、グループの人員増加に伴うコミュニケーションコストを最適化させることに繋がりました。
2)開発業務の内製化
事業ごとのフェーズに合わせて開発業務を一部内製化するために、システムに関わる人材の採用や成長支援を進めました。
結果、知識やナレッジが社内に蓄積されるようになり、企画・開発スピードが加速しました。
3)CTO統括体制の見直し
今後のさらなる事業拡大や組織人員の増員を見据え、CTO一役に集約させていた役割を分化させました。
技術面と組織面を統括する役割として、IT企業7社でのエンジニア経験に加え、CTOや新規事業に関わる組織の立ち上げ経験を持つ 金 炯才を、VPoE(Vice President of Engineer:技術部門のマネジメント責任者)として招聘しました。システムに高度な技術を導入するだけでなく、組織横断のコミュニケーションの量と質を向上させつつ、品質高くスピーディーな開発の推進が実現可能になりました。
また経営面については、過去にNPの技術組織のマネジメント責任者として、主力サービスの開発およびエンジニア主導の開発体制構築等を担っていた経験があり、現在コーポレートを管掌している執行役員(※)の山下 貴史がCIO(Chief Information Officer:情報統括責任者)として技術組織の経営領域も同時に担うことで、品質の高いマネジメントが可能になりました。
※ 今月開催予定の定時株主総会にて取締役に選任予定
上記取り組みを進めたことで、技術組織として盤石な土台を作ることができました。分化させた各チームがそれぞれ個別に明確な意思や目的を持って機能を深化させていく一方で、全体を統括するマネジメントも高品質に行なわれていく。そのような組織が実現することで、企画・開発における品質・スピードともにより一層向上し、各サービスの規模拡大・発展に貢献し続けられると期待しています。
NPの技術組織の発展と私のこれから
今後の組織は、個々人がリーダーとしてより成長できる環境にもなると考えています。リーダー人財を輩出することは、技術組織に限らずNP全体において目指していることです。今回チームの自立が促進され各チームにおけるマネジメントの難易度が下がったことで、技術組織におけるリーダー人財がより多く、より早期に立ち上がると期待しています。そして願わくは、技術組織におけるリーダーの活躍に触発されて、NP全体としてリーダー人財を輩出できればと考えています。
私自身の今後としては、技術顧問(アーキテクトアドバイザー)として、開発現場により近い場所でNPに関わっていきたいと考えています。事業の多角化、技術組織の人員増員に伴い、徐々にCTOと現場層との距離が遠ざかっていることは、もとより課題に感じていました。そこでこれまで私が培ってきたナレッジやノウハウを若手層をはじめとした組織全体に提供し、各メンバーのスキルや経験を底上げしていきたいです。
さらに、NP以外のビジネスについても研究を進め、できるだけ多くの事業成長を技術的な側面から支えていくことに携わっていきたいです。