2020年1月に「次世代育成パートナーシップ」の締結を発表した、今治.夢スポーツとネットプロテクションズ。自社の従業員だけでなく、大学生や高校生、中学生に向けても課題発見、解決型のワークショップを開催して、次世代教育・育成に積極的に取り組んでいます。

このパートナーシップの締結よりも先に、今治.夢スポーツとネットプロテクションズは次世代育成への取り組みを独自に進めており、そこには驚くほど通じ合う哲学があったといいます。

世代を超えて、働くうえで必要な「自分の好きなことを突き詰める」ことについて、農林水産省を経て今治.夢スポーツに飛び込んだ黒川浩太郎さんと、3回の転職を経てネットプロテクションズで働く中堀那由太さんにお話を伺いました。

今治.夢スポーツ 黒川浩太郎

東京大学法学部卒業後、「生命を支える『食』と安心して暮らせる『環境』を未来の子どもたちに継承していく」という使命に共感し、2017年に農林水産省に入省。法令・国会関係業務に従事。 SNSのニュースフィードで株式会社今治.夢スポーツの求人に出会い、「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。」という理念に共感して2019年に同社へ転職。パートナーシップの拡充と畑作業に尽力している。

ネットプロテクションズ 中堀那由太

中央大学文学部卒業。総合商社と2社のPR会社を経て2014年ネットプロテクションズに参画。市場開発やオウンドメディア編集長、新卒採用ブランディングなどを経て、現在はコーポレート全体のPR推進を担当。FC今治とのパートナーシップ企画において中心的役割を担当している。

「面白そう」の感覚を大切に入社した現職

― まず、中堀さんは新卒では大手の総合商社、それから小さなPR会社を経て同業のPR会社へ移られていますよね。そして3回の転職を経て現在いらっしゃるネットプロテクションズへ。どのような経緯があったのでしょうか?

中堀:もともと学生時代の体験からコミュニケーションに興味をもち、PR職を志望していました。新卒では大手の総合商社に入社することになったのですが、やはりPRの仕事をしたいという想いは変わらなかったのでベンチャーのPR会社へ転職しました。その会社では日々ハードワークしていましたが、よりレベルの高いPRスキルを身に付けたいと思い、別の会社へ移ることになりました。

次のPR会社では、PRコンサルティングのみならず新規事業の立ち上げを経験し、キャリアとして幅が広がる一方で、クライアントである事業会社の仔細な事情や、事業を動かすリアルな感情の理解が難しいなとも感じていました。施策が成功した喜びも、失敗したときの絶望もコンサルタントの立場ではクライアントほどに実感することはできません。PRという道を極めていくにあたって、クライアントサイドのリアルな感情や構造がわからないと二流で終わってしまうと危機感が生まれていました。様々なサービスやブランドに関われることは刺激的で楽しかったんですが。

― そしてネットプロテクションズを志望したのはなぜですか?

中堀:根が飽き性なもので(笑)、どこか1社で働くなら、よっぽど共感度が高くないと自分は続かないだろうなと考えていました。そして、ネットプロテクションズはサービスもさることながら、面接が面白かったんです。

面接でしたことと言えば、何をしてきたかなんて実績とかを聞くのではなく、サッカーの話をはじめとした趣味の話や生い立ちを一時間半くらい。雑談のような時間でしたが、そこで「価値観として近いので是非来て欲しい」と言ってもらったんです。そしてその次に社長と面接だったんですが、前の面接がそんなんだったので何を聞かれるんだろうと思っていたら、社長も「いま考えてる事業はね」という話をいきなり始めてしまう。

最初の面接でパーソナルな話を一次面接でしたときに、能力云々よりもこいつなら大丈夫そうだなと判断されて、いきなり社長へと進めてくれたわけです。その「楽しそう、やってくれそう」と自分を判断した感覚に乗っかってみたら面白そうだなと思ってネットプロテクションズに入ることにしました。

最初はマーケティングをやろうと思っていたんですが、営業や会員向けサービス、オウンドメディアの編集長など、やってみてくれと言われたことに全力で取り組んで、5年目くらいからようやくPRの仕事をすることになり、3年くらい経ちました。

― さて、黒川さんは東京大学法学部を卒業して新卒で農林水産省へと進みます。その時にはもう自分の進みたい方向が決まっていたのでしょうか?

黒川:個人の間や地域の間にどうしようもなく発生している格差を是正して、誰でも安心して暮らせる生活を作る、ということに興味をもっていました。高校生の頃からですね。そういうことは国がやる仕事だと思っていたので、省庁で働くことは方向性として固まっていました。そして、大学の授業で環境倫理をとってみて、持続可能な生産と消費の関係を考えてみたいと思い、より具体的に自分の関心がわかってきました。

思い返せば、通っていた幼稚園が自然の循環の中での生活を大事にするところだったり、妹が幼少期にお米も食べられないくらいのアレルギー持ちだったり。自然と触れ合う楽しさや、食は大切だという意識が自分のなかで育まれていたのかもしれません。

農林水産省のビジョン・ステートメントというものがあって、それは「生命を支える『食』と安心して暮らせる『環境』を未来の子どもたちに継承していくことを使命とし」という言葉で始まるんです。それはまさに自分が考えたいテーマと合致していたので、その言葉に惹かれて農林水産省に入ってみました。

― 世の中をもっとよくするんだ、と高い理想を掲げて社会に飛び出した。しかし2年後には今治.夢スポーツへと転職しています。何があったのでしょう?

黒川:最初の2年でやっていた仕事は、省の中枢と担当課をつなぐ仕事でした。物事を回していく力は身についたと思っています。そして、もっともっと自分の立場が上がっていけば、この力を使って自分の政策分野での課題を解決するために、制度を変えたり補助事業を作り望ましい行動を民間に促したりすることができ、よりやりがいを感じられる未来があったかもしれないとは思います。

しかし、そういう将来が待っているかどうかへの不確かさも感じていました。私の関心テーマは、持続可能な農業や持続可能な地域社会だったんですが、農水省の重要テーマは輸出競争力強化でした。私自身の関心、テーマに携わることができる部署に裁量のある役職で配属され、かつ、上司や政局などの時流に恵まれる可能性は低いと思っていました。

― 省の方針は時の与党や大臣によっても変わりますよね。

黒川:最初の2年間で判断するのは時期尚早とはいえ、不確かな将来のために「いま」を犠牲にしている感覚に耐えられない気持ちでした。そうやってモヤモヤしているところに、SNSのニュースフィードに今治.夢スポーツの人材募集の投稿がたまたま流れてきて、えいやっとアプライのボタンを押してから考えるうちに、働く場所を変える結論に至りました。

中堀:今治.夢スポーツの、どの辺りが面白そうだと感じたんですか?

黒川:もともと高校までサッカーをやっていたので、サッカーを通じて、という切り口が魅力だったことがひとつ。それから、今治.夢スポーツの理念に「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。」とあり、それがまさに自分が農水省に入った動機とかなり近かったのが大きかったですね。

切り口が「主に農業」ということから、「主にサッカー」ということに変わっただけで、非常に似ている。遺伝子にスイッチを入れ、自然と人との共生に気づくきっかけを提供する野外体験教育もしていて、そこも大きな共感ポイントでした。

そして、入ってみたら「里山」をコンセプトとする新スタジアム建設にも関わらせてもらえて。自然と人の共生を感じられる場所にあるスタジアム、あるいは人々が物の豊かさより心の豊かさが大切だと気づき、次世代のことに思いを馳せる空間にすると。そこでは農的な事業も展開できそうです。

中堀:新スタジアムのコンセプトなどは、入る前に聞かされていたんですか?

黒川:実はあまりよく理解していなくて、新スタジアムの構想があるんだなと。サッカーのJ2リーグのホームスタジアムに求められる10000人~15000人規模のスタジアムが必要ということで、スマートスタジアムみたいなことも考えていると聞いていました。

自分のビジョンと会社のビジョン。その一致を見極める

中堀:私は業務のなかで採用にも関わっていて、おもに学生への説明や面接をしたりするんですが、会社のビジョンやミッションってどの会社もいいことを言うじゃないですか。黒川さんは今治とか農水省のミッションを見て、どのへんを判断軸にして見極めているんですか?

黒川:役所の場合は、ビジョン・ステートメントそのものが判断軸でした。面接で話した先輩方は魅力的な方々でしたが、目指す社会や関心テーマがあまりにも多様すぎるとは感じていました。そうはいうものの、国家公務員は高校以来憧れてきた職業でしたし、新卒以外に入る道を知らなかったので、一度飛び込んでみようと。

今治.夢スポーツの場合、会長の岡田はメディアの露出が多いので、複数のweb記事を漁ってみたら、いつでもどこでも根本的には同じことを語り続けていることが分かりました。環境教育や野外体験教育を通じて、次世代に持続可能な社会を残すための取組を、この会社で本気で実践したいんだということが、公式HPだけではなく、様々なインタビュー記事や面接を通じて伝わってきました。

― 黒川さんから、中堀さんが環境を変えてきたこととか、PRという職種を突き詰めようとしてきたことについて、聞いてみたいことはありますか?

黒川:最近、人に自分が聞かれて答えに窮してしまった問いがあるんですが、「お前は何を武器に生きていくんだ」というもので。私は役所から今治.夢スポーツに来て、便利屋としてはそこそこ役に立っていると思っているんです。

役所への補助金申請やJリーグへの書類提出といったある程度自分でも計算が立っていた業務に加え、、パートナーシップを通じて社会をよくするために経営者の方とお話しして共感していただくような仕事は、思ったより苦手意識はなく今後伸ばしていける手応えがあります。ただ、あれもこれもやっている中で、これぞってものを聞かれると、答えに困ってしまいます。農業も、自身が生産者として究めていくのかというと、そのイメージはありませんし。中堀さんは、PRという軸を心に持ちながら仕事や環境をどんどん変えていますが、専門性=自分ならでは武器とか、いやいや色々取り組んできたジェネラルな部分が強みなんだとか……。そのあたりはどう考えていらっしゃいますか?

中堀:それは昔から考えていたことなんですが、自分の場合は専門性が武器だとはあまり思っていないんです。商社、PR会社、そしてネットプロテクションズも含めて、これまでには営業をやったり企画をしたり、メディアをやったりいろいろなことに取り組んできました。そこからトータルで生まれるジェネラル感が武器なんだろうとは思います。

でも、この武器を生かしてどうこうしようということはあまり考えていなくて、やりたいなあと思うこととか、会社にとって必要と思うこと、場所を見つけて働いていけたらいいと思っているんです。

重要なのは、自分の持ち味が必要とされる場所にいること

中堀:専門性を身に着けて損はないと思うんですけど、その専門性もいつまで武器になり得るかわからないですし。ひとつのことを極めるようなキャリアではなかった。言ってしまえば好きなものがコロコロ変わるタイプです。でも営業とPRとメディアの3つをやっていた人間はうちの会社にはいないし、それは自分の武器だとは思っていますが、じゃあこれからもPRで飯をくっていきたいとは今は思ってもいなくて。

ネットプロテクションズという会社はけっこう面白い会社だなと思っています。社員の想いをベースに新しい制度や事業が生まれてきています。トップダウンとかボトムアップとかではなく、想いを持った人間が動いて、それをフラットにみんなが捉えて面白そうなら力を貸しながらその動きが大きくなっていく。生まれてくるもののなかで面白そうなところへいき、そこに必要な能力は当然勉強して身に着けていくなかで、またやれることや自分の強みが増えていくのかもしれません。

自分が経験してきたもの、培ってきたものを組み合わせて、自分なりの解を出せるということは、それは私に限らずみなさんがそうだと思います。大事なのは、そういうものが必要とされる場所にいること、そう考えたらあまり悩まなくなりました。

黒川:なるほど、自分もあまり悩みすぎなくてもいいのかなと思い始めました(笑)。ありがとうございます。

ー ネットプロテクションズという会社はみなさんが主体的に自分のしたいことを発信していて、面白そうなことがどんどん起きる。FC今治の場合はホーム戦があって定期的に人が集まる。そういう刺激が多い場所に身をおいて、自分が好きになれそうなものを見つける。自分をその環境においてみるというやり方は、中堀さんと黒川さん、お二人の性にあっているというよりは、一般的な働き方として、ひとつの正解のようにも感じます。

中堀:自分はこうだと固執しているとあまり幅が広がらないですよね。自分が環境を変えてわかったメリットとして、これまで知らなかった世界がいっぱいあって、自分であればこれまで選択しなかったであろうものにも携わり、そこで楽しみと出会えたことがあります。

さらにいえば、土台の経験を積むことで見える景色が変わり、そして選択肢が増えていきました。今いる環境に何かしらの共感ポイントがあれば、そこに好き、やりたい以外の周辺のものも絶対にあって、そこに携わることによって「やりたい」「好き」がどんどん増えていき、それを軸に別の選択が可能になる。

ひとつひとつの選択が最終意思決定ということよりも、ことキャリアということでは、どんどん生涯を通じて広げ続けるものなのかなって思います。

黒川:とりあえず飛び込んでみるというやり方が一般的にいいんじゃないかということは、たぶんそうだろうと私も思っています。いまいる環境に違和感を少しでももっていて、違う場所から呼ばれているみたいな感覚があって、自分の大事にしているコアと一致する部分があれば飛び込んでみたらいいんじゃないかな、と。

そして飛び込んでみたらその周辺に楽しそうなことや学びが見つかるという中堀さんの言葉も、本当にその通りだなと思います。最初から完全に自分のやりたいことと合致する確信がなくても、めぐり合わせに身を任せてみるのもありなのでは、と自分の経験からも思います。

今治.夢スポーツに関しては、「次世代」、「心の豊かさ」、「持続可能性」ということでも自分の感覚にそんなに外れていないという感じがあったので、行ってみてどんなことがあるのかなという考えでした。

― お二人は、いま自分が目指したいものと勤める組織の思いが共通しているなかでお仕事をされていると思いますが、それが合致しているからパワーが出る、アイデアが生まれるというポジティブな側面をどう感じていますか? 

中堀:PR・コミュニケーションが機能することで、世の中に価値を提供したい会社と、その価値を求める人が繋がることができる。私は、そんな情報伝達がうまくいく社会だったらいいなと思っていてそれに貢献できるのはPRだし、この仕事が好きでいるんです。もちろん世の中には素晴らしい価値を提供している会社は数多あると思いますが、個人的に現在ネットプロテクションズという会社が一番興味深くて、この会社の生み出す価値をどんどん伝えたいなと思っています。法人なんですが「ネットプロテクションズさん」と呼びたくなるような有機生命体のような感覚があって、ネットプロテクションズさんがこれから何をするのかが楽しみで仕方がないんです。

それはなぜかと考えると、ネットプロテクションズのミッションやビジョンが好きで共感できるし、そんなミッションやビジョンから出てくるような事業やサービスだったらほぼ100%共感できる自信があるからです。だから、この会社を上のステージに押し上げるためにできることがあればなんでもしたいなと思っています。ちょっと宣伝っぽくなってしまいましたが、これは本音です(笑)。

自分が好きな組織にいることで、生まれる力がある

中堀:ちなみにFC今治さんとのパートナーシップ企画に関してですが、私もサッカーをやっていたので、個人レベルで興味があるという理由で「そんな面白いことが動いているなら僕も関わりたい!ということで企画に関わっています。

でもこれも大事だと思っていて、会社から言われて動く人よりも、自分から飛び込んでいった人のほうが良いアウトプットが出せる。FC今治のファン・サポーターの人にもネットプロテクションズという企業を受け入れてもらうには、とか、次世代育成として提案できる文脈を考えたりすることには、想いをもった人間のほうがいいと思いますし。個人的にJリーグは大好きでよく観ているので、ファン・サポーターの方に受け入れてもらえるような企画をどんどん仕掛けていきたいですね。

黒川:自分が好きなことに能動的に関わるということは自分も凄く大事にしています。いま、パートナーシップ、新スタジアム、経営企画の3つに所属しているのですが、頼まれてもいないのに野外体験教育の部署に半常駐して助成金申請などを勝手に手伝っています(笑)。

野外体験教育は、会社のみならず私個人にとっても大事にしたい事業なんです。そこでは、次世代に対して、災害時に生きるサバイバル体験、昔の生業・文化を知ることによる今の暮らしの相対化、厳しい自然と向き合い適応することで得られる人間本来の能力の開花といった機会を与える営みが行われています。

そういったことに日々向き合っているインストラクターたちと話していると、凄く学びや気付きが多いです。彼らに事務作業をさせるのはもったいないので、だったら私がやりますよ、という気持ちです。

ただ、会社からアサインされている仕事ではないので、本来の業務は減らさずにやっているつもりですよ。これが、思いの合致から生まれる推進力なんだと思います。

― 働く環境は違えど、非常に共感のポイントが多いお二人だけに、いくらでも話は膨らんでしまうのですが、そろそろお時間となってしまいました。今日のお話のご感想をいただけますか。

黒川:転職により環境を変えること、好きを仕事にすることというテーマだったとは思うんですけど、明確に好きなことを見つけたり作ったりする必要はないかもしれないと思いました。古語でいう「ゆかし」の感覚を大切にしたらいいんじゃないかなあと。なんとなく心が惹かれる、そっちに行ってみたいな、という感覚があれば、それには無理して蓋をせず、ふらふらと行ってみるのが、よく生きるためのコツかもしれません。よく生きるなんて25歳が何を言ってるんだといういうツッコミは甘んじて受け入れます(笑)。

中堀:やるべきものが目の前にあり、それに向き合い続けていると、いずれ機会は手繰り寄せられるんでしょうね。「自分がやりたいこと、大切にしていることはなんだろう」という内省は時折行いつつも、いざ「これは自分がやりたい!」と思って手を挙げたときに周囲が自分に任せてくれるような信頼を積み重ねるうえでも、目の前のことにきちんと向き合い続けることの重要性を感じました。

パートナーシップの取り組みとしては、2020シーズンはコロナ禍でなにもできなかったので、可能なら2021シーズンはリアルな場やオンラインも含めて、いろいろなことができたらいいなと思っています。2020年は、収束したらこれをやろう、まだ落ち着かないからできないなという感じで、状況を待ちながらプランニングしていたことがどんどん後ろ倒しになってしまいましたが、2021年はコロナ感染対策を前提に企画、設計をしていけたらと思っています。新シーズンが楽しみです。

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